CBFシリーズ

CBFシリーズ

奥村 幸正 (商品開発部打楽器設計課)

1975年入社。コンサートバスドラムCBシリーズやマーチングドラムの開発・設計を担当。DCIやコンサート専門家への対応もおこなう。
現在は、ドラム全般の木材開発や要素開発、ドラムセットやティンパニ等のヘッド研究、マーチングドラム・コンサートドラムの開発支援に携わる。
※所属部署および部署名は取材当時のものです。

仙波 康之 (マーケティング部B&O営業課)

1989年入社。2001年まで打楽器設計課に所属し、音板打楽器全般の設計・開発に携わる。
2001年から06年までドイツ・アトリエフランクフルトに駐在。コンサート打楽器全般におけるアーティストリレーション、および欧州各国のマーケティングサポート、新商品開発サポート等をおこなう。
2006年よりマーケティング部に所属し、打楽器の販売に関するグローバルな販売促進策の考案やアーティストリレーション業務を担当。
※所属部署および部署名は取材当時のものです。

この楽器を開発することになったきっかけを教えてください。

奥村)
もう10年以上前になるかと思いますが、当時ドイツ・ベルリンで打楽器奏者としてご活躍されていたプレイヤーの方に、打楽器の開発でお世話になっていました。そのときはティンパニの開発がメインだったのですが、コンサートバスドラムについてもぜひ新しい開発を進めるべきだということになりました。ある時、そのプレイヤーの方がエキストラとして所属されていたベルリン・ラジオ・シンフォニー(ベルリン放送交響楽団)が来日して演奏会をする機会があり、そのときに「本物のバスドラムの音を聴きにきなさい」と言われて、当時担当をしていた私と関係者がホールにお邪魔したのです。
そこに、ハームスというメーカーのコンサートバスドラムが置いてありました。これに似たものをつくってほしい、というのがそのプレイヤーの方からの要望でした。実際に音を聴かせてもらったら、今まで聞いたバスドラムの音とはまったく違う音色だったのです。非常に衝撃的でびっくりしました。このときの音は今でもはっきりと覚えていますね。バーンと叩いたときに花が散っていくようなイメージで、重い、軽い、明るい、暗いといった音色の次元を越えて、音の出方が想像もつかないような音でした。それまでに聞いたバスドラムの音色は、かたまりでまとまって聴こえるものばかりだったので、散るようなイメージの音を聴いたときは本当に衝撃的でしたね。
そのバスドラムには本皮のヘッドがマウントされていて、シェルも、おそらく手作りのもので材質等はわかりませんでしたが、それまでのヤマハのものとはまったく違うものでした。スタンドも非常にシンプルなものでした。
これを手本にしてつくりなさいということで、プロのオーケストラでも充分通用するコンサートバスドラムとして最初にできたのが、この超深胴のCBFシリーズだったのです。
仙波)
当時、バスドラムは「フリーサスペンション」と言って、輪に太鼓がはまった宙吊りのタイプが一般的でした。
しかし、ベルリン・ラジオ・シンフォニー(ベルリン放送交響楽団)が所有していたバスドラムはそれとは違って、スタンドにバスドラムがしっかり固定されているタイプでした。しかも世界に10数台しか現存していないと言われていて、そのときすでにハームスはありませんでした。

楽器の特長は?

1. フープ

奥村)

なんといってもこのモデルの大きな特長はフープです。スチール製のフープを使っていまして、これはヤマハだけだと思います。初めてこのモデルに、スチール製のフープを使いました。
スチール製フープは反応の良さが特長ですね。チューニングの感触も木材のフープとは全然違うのです。スチール製フープは、少しボルトを調節しただけで反応がダイレクトにきますね。これまで木製フープを使い慣れていたプレイヤーからは、スチール製フープの反応の良さに驚いた、という声も聞かれましたね。

2. チューニングボルト

奥村)
ひとつ私が当初こだわっていたのは、細かいところですが、チューニングボルトの太さなんですよ。胴体に対してのバランスが非常に大切ですからね。私は標準タイプにしようと思っていたんですが、開発に携わってくださったプレイヤーの方が強いこだわりをお持ちで「絶対に太いものでないとだめだ」とおっしゃったんです。
このモデルにはこういった仕様でいきたい!という強いこだわりを感じました。
その方は、こうした強いこだわりを私にぶつけますが、「最終的に決めるのはあなたなんだから」とおっしゃるんですよ(笑)。
その方の一言で、彼のこだわりを汲み取って、太いチューニングボルトを採用することにしました。
ボルトの数が800Cシリーズなどに比べて多いのは、ボルトが多いほうが精度の高い安定したチューニングができるからです。フープがこれまでの木材フープとは違ってスチール製なので、剛性のあるスチールフープをしっかりと固定するには、ボルト数が多いほうがよいのではと考えたためです。このCBFシリーズに関しては、胴の材質以外は開発当初からあまり形を変えていません。

3. 胴の深さ

奥村)
サイズをどうするかを検討するのに一番時間を使いましたね。胴の深さに関しては、ハームスのバスドラムを研究したときに最もサイズが近かったのが32インチで、ヤマハでは伝統的に36インチも作っていたので、開発協力をいただいていたプレイヤーとも相談してこの2品番で行きましょうということになりました。
当時は32インチの直径で24インチの深さというのが、プロオーケストラで使用される本格的なコンサートバスドラムの常識だったんですね。その後、もう少し深くても問題はないということで直径36インチ×深さ26インチというさらに深いタイプも追加することにしました。
ヤマハではこれまでにないサイズと深さのモデルでしたので、生産するための設備をつくるのに時間がかかりましたね。
ある程度木材が太くないと材料が取れないこともあって、本格的に生産がスタートするまでは2年くらいかかりましたね。

ハームスの真似ではなく、ヤマハのオリジナルである点はどんな点ですか?

奥村)
ハームスはあくまでコンセプトを参考にしただけであって、まったく同じものをつくろうとは思いませんでした。
ハームスと違う点はたくさんありますけれども、本家のハームスとの最も大きな違いはスタンドですね。ハームスのバスドラムのスタンドはすべて金属でできていたのですが、それだと共振が大きすぎてノイズが発生してしまう。ヤマハではそれを解決するために、あえて土台に木材を使用して、ノイズを防止しています。
キャスターも、振動を邪魔するという理由でハームスはつけていませんので、同様につけない方がいいのではという意見もありましたが、やはり持ち運びの便利さを考えて必要だろうということで、ヤマハのスタンドにはキャスターをつけました。

設計者としていちばんこだわった点は?

奥村)

一番こだわったのは、本体とスタンドの固定の仕方を、形状をオリジナルにしながらもコンセプトをハームスと一緒にするというところです。ハームスのバスドラムは本体とスタンドが一体になっていましたが、ヤマハはクランプでスタンドと本体をつなげるという形でオリジナリティを生み出しました。またスタンドも少し角をつけてイメージを変えました。
今後ハームスに替わる製品としてヤマハのコンサートバスドラムが定着していったら嬉しいですね。

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