
音楽室がある建て物の前で。大人数ではないけれど、のびのびとした爽やかなムードが漂う。
部員がたった49人しかいないにもかかわらず、昨年、全国大会出場を成し遂げた島根県の出雲北陵高校吹奏楽部。楽器を始めたばかりの1年生も含めて全員参加で挑んだのだから、相当の努力をしたに違いない。その苦労を顧問の原田実先生に伺った。
※この記事は、月刊誌「バンドジャーナル」2007年12月号~2009年4月号に掲載された内容を一部改定して転載しており、取材当時の内容になります。制作:音楽之友社
全員がレギュラーだから基礎は合奏でやる

指揮を振っているのは顧問の原田実先生
出雲北陵高校吹奏楽部は、8年前まで全国大会に出場していたが、その後はチャンスに恵まれなかったという。そんな中、昨年、出雲一中で指導していた原田先生が同校に赴任。わずか数ヶ月で見事念願の全国大会出場を果たした。
「まぐれですよ。誰もうちが出られるとは思っていなかった。生徒たちも、私も(笑)。そういう意味ではまったくプレッシャーはありませんでした。むしろ出雲一中のときのほうがプレッシャーはあった。前任の先生の時代に、26年間ずっと全国大会に行っていたわけですから」
しかし、人数が少ないことで、高校ならではの苦労があったと原田先生は語る。「中学校だと、きみはこの楽器、あなたはこの楽器という感じで、こちらが考えたバランスでパートを分けやすいけれど、高校は、それまで中学で吹いていた子が入ってくるから、そのままではパートの人数のバランスがとれないんです。だから、トランペットからトロンボーンに行かせたり、フルートからオーボエに行かせたりしなければいけない」
もちろん全員がレギュラーなので、初めて楽器を持った生徒も、翌日からは合奏に参加するそうだ。
「僕は基本的に、基礎も合奏で見る方針なんです。朝も放課後も、3時間あれば2時間は基礎合奏。音階だったら、全員に1人ずつ吹かせる。そこで、音程やアンブシュアに対していろいろ言うわけです。本当は、個別に呼んで、他のメンバーは練習させてやるのが効率的でしょうけど、みんなが聴いていることで緊張感が生まれたり、仲間の上達具合を把握できるというプラスの面があると思う」
音程が悪い楽器は結局音色も悪くなる

昨年原田先生が赴任してから、さまざまだった楽器の種類をヤマハで統一し始めている
合奏の音づくりに関して伺うと、「何よりも、まず音程が合うことが理想ですね。プロだったら、音色を優先して音程は自分でコントロールすることが可能でしょうけれど、生徒にそれを求めても仕方がない。やはり、少しでもピッチが良くて、生徒たちが苦労することなく、吹きやすい楽器を選ぶことが重要です。
もちろん、音色を犠牲にするというわけではありませんよ。音色は良いに越したことはない。でも、音色は良いけれど音程に癖があるという楽器を使うと、結局、修正したときに音色まで悪くなってしまう。以前にいた学校では、古い輸入楽器ですごく苦労しました。
その点、ヤマハの楽器は、音色が明るくて好きだし、何よりも音程が良い。それから、生徒にとって吹きやすいというのが一番ですね」
原田先生は、吹奏楽は、クラリネットが上手でないと良くならないと強調する。「生徒にとっては、たぶんクラリネットは、木管楽器の中でも難しい楽器ではないかと思うんです。きれいにタンギングすることが難しく、音も開きやすい。フィンガリングによって、良く鳴る音とそうでない箇所の差があります」
今、同校のクラリネットセクションは全員ヤマハで統一している。
「ヤマハのクラリネットは、個体差が少なく抜けが良いので、音域によって生じるムラをなくす苦労が少なくなりました。
僕らが安心できる楽器を持たせるということは、生徒たちにプレッシャーをかけずに済むんですよ。吹けない部分があったときに、楽器のせいなのか生徒のせいなのかわからないと、本当は楽器が原因なのに、生徒を責めてしまうこともある。そうなると、生徒は苦労するばかりで面白くなくなってしまうので、やはり、こちらも信用のおける楽器を使ってもらいたい。楽器の音程や抜けが良いとなれば、僕が聴衆の立場になってアドバイスすることができる。『この音は鳴らないんです』というお家の事情が音楽に現われてはダメですからね」
最後に、バンドを短期間で上手くする秘訣を聞いてみた。
「そんなのありません。時間をかけるしかないですよ。近道はない。もしあったら教えてください(笑)」


クラリネットパートに聞きました!
「セクションリーダーの仕事は、練習のときにみんなが吹けているかチェックすること。旋律を吹くことが多いので、ピッチはいつも気にして吹いています。でも、ヤマハを使うようになってから、みんなの音程が合わせやすくなりました」、「イデアルは、抵抗感が強すぎず、立ち上がりが良くて、大きい音も小さい音も吹きやすい。普通は鳴らしにくいスロートノートも、鳴らしやすいので楽。ベルが他の楽器と違っているところも気にいっています」、「私はすごく音色を気にするので、この楽器のまろやかで芯がある音色が気に入っています。目標にしている音は、N響の横川さんやベルリンフィルのフックスさんの音で、そんな音をイメージしてロングトーンをしています」
出雲北陵高等学校
出雲大社で有名な島根県の出雲平野にあり、再来年に創立100 周年を迎える歴史のある私立学校。最初は女子高校としてスタートしたが、1983 年に男女共学の出雲北陵高等学校になった。吹奏楽部は、かつて出雲一中を全国に知らしめた片寄哲夫先生の指導により全国大会に何度も出場したが、昨年、やはり出雲一中で指導していた原田実先生が顧問に就任し、再び全国大会出場を果たし、いま注目されている。








