その華やかなサウンドで、毎年コンクールでも聴衆を魅了している広島の鈴峯女子中・高等学校吹奏楽部。顧問の宇根岡先生が考える選曲や音づくりの秘訣を伺った。
※この記事は、月刊誌「バンドジャーナル」2007年12月号~2009年4月号に掲載された内容を一部改定して転載しており、取材当時の内容になります。制作:音楽之友社
オーケストラ曲の編曲を上手く響かせる秘訣は?

鈴峯女子中・高等学校吹奏楽部
宇根岡 俊二先生
近年、コンクールの上位校として名を列ねている広島の鈴峯女子中・高等学校吹奏楽部。今年で創立20年になる同部も、当初、学校には管楽器は1本もなく、楽器や部員を集めるところからスタートしたという。にもかかわらず、その4年後にはもう全国大会に出場したというのだからすごい。赴任直後に同部を創設し、現在まで牽引してきた顧問の宇根岡先生の実力の程がうかがえる。
「創部から全国大会出場までの4年間は大変でした。音楽をする以前に、『休むな』『遅刻するな』など、最低限の規律を指導しなければいけなくて。もう今は、そういう心配はありませんけれど」
そんな鈴峯女子の特徴として、オーケストラの名曲を非常に多く取り上げていることが挙げられる。取材時もドビュッシーの交響詩《海》を練習していた。この曲は、初めて全国大会に出場したときの曲でもあるそうだ。
「オーケストラの名曲というのは、何十年も残っているだけあって、取り組み甲斐があるんです。生徒には、ちゃんとしたハーモニー、ちゃんとしたメロディがある曲を与えたいと思っています」
当然、オーケストラの曲を取り上げるからには、どういった編曲譜を選ぶのかという問題がある。自らも編曲を手がける宇根岡先生の考え方を聞いてみた。
「アレンジものをやるときに、弦楽器の質や表現に固執したり、ただ闇雲に模倣することには疑問を感じます。やはり、管楽器には管楽器の表現の仕方があって、それをうまく使えばいいと思う。
たとえば、エンパイア・ブラス・クインテットは、ピアノ曲やオーケストラ曲を演奏しても、違和感があまりない。彼らは、わざわざヴィヴラートを多用して弦楽器の感じを出さなくても、その楽器の表現の仕方に置き換えて演奏すれば、音楽としてちゃんと聞こえる。吹奏楽も同じじゃないかなと思うんですよ」
クラリネットが聞こえるとバンド全体の音が明るくなる


金管楽器は創部のときから全員ヤマハを使っているそうだ。同部は2003年と2006年にウィーン遠征旅行をしており、クラシック作品では独特の味わいのある演奏をする
オーケストラ曲をアレンジする際に、一番苦労するのは、ヴァイオリンの旋律をクラリネットに移し換えたときの音域の違いだと宇根岡先生は言う。
「ヴァイオリンの音域は上が広いので、そこをクラリネットでカバーするのは、E♭管などを使っても限界があります。高音が必要なだけであれば、フルートやピッコロを加えればいいのですが、ヴァイオリンの感じを出すには、クラリネット・セクションとしての統一感のある響きが必要になるので、場合によってはオクターブ下げてもいいと思う」
そのセクションの響きを求めるためには、使用する楽器が重要らしい。
「20年前は、いろんなメーカーの楽器を使っていたんですが、あるとき、全部ヤマハで揃えてみたら、びっくりするぐらいクラリネットの音のツブが揃って聞こえた。それで全部ヤマハに替えたら、その年全国大会に行くことができたんです。
クラリネットが聞こえてくると、バンド全体のサウンドが明るくなるんですよね。それと、高音域が甲高い音で耳につくこともなくなった。本当にムラなく、すべての音域がクリアに聞こえるようになりました。オーケストラの旋律を担当する場合、このことは重要です」

マーチングにも積極的で、コンテストでも優れた成績を残している。宇根岡先生は、マーチングをすることで姿勢がよくなり、身体に余計な力が入らなくなると語る
こうしてクラリネットの機種に、ヤマハのCSシリーズが選ばれる結果になった。最後に、レベルアップの秘訣を宇根岡先生に伺った。
「ただ上手に吹けたからと言って、全国に行けるものではありませんよね。プラスアルファが必要になる。半端じゃないぐらいの練習量や精神的なタフだとか。練習で完璧に吹いている子でも、2千人に見られながら演奏するのは、“一応大丈夫”というレベルではこなせません。
それと、もう1つ忘れていけないのは見た目。聴く世界ではありますが、視覚的なものをどう利用するかも重要です。審査員やお客さんは目をつぶって聴いているわけではありませんからね。姿勢はもちろんのこと、どんな演奏をしたいのかわかるようにするといいでしょう」

クラリネットパートに聞きました!
クラリネットセクションは全員ヤマハを使用している。3年生の3人に話を聞いた。「人数が多いから楽しい。楽器はヤマハのCSで去年買いました。最初から丁寧に自分で鳴らしていったので、とても吹きやすいです」、「クラリネットは小学生のときから。楽器に名前をつけて頑張っています。このヤマハはポニョ!」、「バスクラは難しい譜面が多いけれど、低音の仲間がたくさんいるので頼もしいです」
鈴峯女子中・高等学校
広島市街から世界遺産の宮島に向かった方向に、鈴峯女子中・高等学校がある。並木道などがある校内は、女子高らしさが漂う雰囲気。67年の長い歴史を持つ同校は、部活動が盛んで、体育系の多くの部が全国レベルで活躍している。吹奏楽部は今年で創部20年。当初から宇根岡先生の熱心な指導のもと、華麗なサウンドで全国大会はもちろんアンサンブルコンテストでも華やかな成績を残している。









