見えないコストまで減らすIP電話

和菓子メーカーの山葉堂の情報システム部は、
全社でIP電話の導入を行なった。
あれから約1年。情報システム部の新人である花村君は、
IP電話の導入効果をレポートとして提出するよう上司の平野部長に言われていた。
今日は、そのレビューの日である。
IP電話導入のコスト削減効果は?
企業にとってIP電話導入の最大のメリットは「通信コストの削減」である。山葉堂も、今までのようなフレームリレーではなく、ADSLやFTTHといった ブロードバンド回線でIP電話を利用しているため、大きなコスト削減が見込まれる。花村君のレビューをさっそく聞いてみよう。
花村: IP電話の導入効果についてさまざまな形で検証してみました。その前に昨年のネットワークの更改を簡単におさらいしておきたいと思います。まず、更改前はデータ通信用の回線としてフレームリレー、外線通話やインターネット接続に ISDNと専用線を導入していました。そして、昨年はブロードバンド回線の低価格化にあわせ、フレームリレーをインターネットVPNに置き換えたほか、各拠点に新たにADSLとFTTHを導入し、IP電話網を構築しました。
以前の山葉堂の通信環境は、工場や直営店で64~128kbps、本社側でも1.5Mbpsだった。しかし、ADSLやFTTHにより、既存の回線の数百 倍の帯域を今までより安く確保できた。そして、電話の通話料削減のために導入されたのが、IP電話というわけだ。現在では本社のほか、工場と5カ所の直営 店での音声通話は、すべてヤマハのRT57iやRTV700を経由してIP電話で行なわれている。また、IP電話サービスの導入により、内線だけでなく、 公衆回線への外線通話もIP化された。

通信コストが一気に30%削減!
平野: では、IP電話導入のコスト削減効果について、レビューしてくれ。
花村: はい。結論からいうと、導入する前の1年間と比べると、IP電話の導入により、月額で約8万円、年間で約96万円の通信コストが削減できました。約30%のコストカットです。
平野: 短期間にずいぶん下げられたな。どこらへんがコスト削減の大きなポイントになっているんだ?
花村: やはり、導入コストが安価だったことと、フレームリレーや専用線の撤廃、そして全国一律のIP電話の通話料金の3つが大きなポイントになると思います。
IP電話のコスト削減要因はさまざまだが、山葉堂の場合、RT57iやRT700など安価な機器でIP電話網を構築したことで、いち早く初期投資を回収できたのが大きい。また、全国一律3分8円という料金のおかげで、IP電話サービスによって取引先や顧客への通話料金が大幅にカットできたことも挙げられる。いずれにせよ、通信コストの引き下げという点では、今回のIP電話の導入は大成功といえるようだ。
使い勝手が変わらないため教育も不要
ただ、いくらコストが削減できるとはいえ、既存の電話の使い勝手を損なっては意味がない。しかし、既存のアナログ電話機をそのまま使えるヤマハのIP電話ソリューションであれば、電話を使うに当たってユーザーが覚えることは特にない。内線か、外線かを表わす「0」や「9」といったプレフィックスを押し、あとは電話番号を指定すればOKだ。

取引先の農家にIP電話を導入してみた
平野: 社内でのIP電話の評判は、なかなかいいようだな。先日は、社長に「本当にIP電話にしたのか?」と聞かれたよ。
花村: 確かに、音質や使い方は今までの電話とあまり変わらないですからね。IP電話機を新規導入するという手もあったのですが、社員に対する教育が不要な分、今までの電話を使えるようにしてよかったと思います。さらに、最近では取引先が IP電話の導入を進めています。まだまだ数は多くないですが、製品の原材料を作っている農家のお宅にADSLとRT57iを導入してもらい、本社との通話料を無料にできるようにしています。山葉堂と内線感覚で電話できるだけでなく、通話料金も下がった、ということで好評です。
平野: 花村がこの前作っていたマニュアルは、そこで使うものだったのか。いずれにせよ、面白い試みだ。
IP電話は同じサービスの導入箇所が増えれば増えるほどコストメリットも大きくなる。今後は、単なる内線電話だけでなく、こうした社外の顧客や取引先とのコミュニケーション手段としても重要度が増していくことになるだろう。
情報システムの帯域とIP電話の帯域をADSLで共有
導入も運用も順調というイメージの強い山葉堂のIP電話導入だが、ネットワーク全体を見ると問題もあった。拠点間のデータ通信とインターネット接続がISDNと専用線だったのだ。
これには理由がある。直営店でのデータ通信の用途が、POSデータの更新など低速な回線で十分だったことだ。ただ、低速でも構わないが、売り上げや受発注 などのデータ送受信であるため、重要度は高い。そのため、信頼性の高いISDNと専用線が使われていたのだ。また、今までは直営店にPCが1台しかなかっ たという理由もある。
しかし、IP電話導入の半年後にWebブラウザから在庫を確認できるシステムを構築した。そのため、直営店のISDN回線(ISDNでインターネットVPNを構築)では帯域が不足するという事態に陥った。

ISDN(カメ)から
ADSL(ウサギ)にVPNを移そう
平野: 例の在庫管理システムの応答が遅いという問題は、結局どうすることにしたのかな?
花村: はい。もともと、本社と工場を除く各拠点にはデータ通信用のISDNとIP電話用のADSLという2つの回線が入っていましたが、帯域の狭いISDNだとどうしても応答速度が遅くなります。そこで、システムインテグレータの召田さんと相談し、IP電話サービス用に設置したADSL回線で、インターネットVPNとIP電話を併用することにしました。
平野: なるほど。ただ、ISDNを使っていたのは、回線の信頼性の問題があったからだろう? あと、ADSLにIP電話とインターネットVPNを混在させて、大丈夫なのか?
花村: はい。確かに回線の信頼性は心配だったので、ISDNはヤマハの RTX1000の機能を使って、バックアップ回線として利用する予定です。あと、インターネットVPNとIP電話の同居の件ですが、こちらもルーター側の QoS機能をオンにすることで、帯域をきちんと確保できます。先日、直営店の1カ所で実験をやってみましたが、インターネットVPNとIP電話を同時に使っても、特に音質やスループットの低下は見られませんでした。
平野: ルーター設定を少し変更するだけで、利用できる帯域が増え、信頼性も向上できるというわけか。新たに機器を導入することを考えたら、見えないコスト削減といえるかもしれない。まさに「渡りに船」だな。プロジェクトはそのまま続けてくれ。
花村: はい。わかりました!
IP電話というと、とかくコストに焦点が当たりがちだが、長期間に渡って安定的に運用するためには、信頼性や通信品質に関しても気を配らなければならない。
信頼性に関しては、ヤマハのRT57iやRTX1000はISDNインターフェイスも搭載しており、特にRTX1000ではメイン回線が断絶した際に自動 的にISDNにバックアップすることができる。また、IP電話利用時の帯域を確保するQoS(Quality of Service)の機能も持っている。これらの機能を上手に活用することで、IP電話を真に「使えるもの」にすることが可能なのだ。
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