第二部 ハードウェアとソフトウェアについて

「継承しながら機能は追加する」ヤマハのネットワーク機器

TECH ASCII.jp 副編集長:大谷イビサ

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クラウドWatch 編集長:石井 一志

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「ルーターもハードウェア設計の時代」を先取りしたRTX1000

イーサアクセスVPNルーター RTX1000イーサアクセスVPNルーター RTX1000

大谷:私にとってヤマハルーターのメモリアルはRTA50iとRTX1000で、その前後で世代が違っている感じがします。ブロードバンド時代になって、ルーティング速度やVPN対応のための処理速度が重要になるはずで、RTX1000はそこをいち早くハードウェア化した国産ルーターでした。ここからはスピード競争になっていくので、ハードウェア設計がどう変わっていくのか、元々私はDOS/Vでハードウェアを追っていたので、ルーターもそういう時代になったと感慨深かったです。

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丸山:一方で、ヤマハのルーターって変わらないなあという印象を私は持っていて、新しいものを取り上げる柔軟さとかたくなさが同居している不思議さがあります。例えばRTX1200とRTX1210って、ほとんど変わらないし、パネルの配置も同じところに挿せばいいようになっています。このこだわりって何?という気がします。
たいていのメーカーは新規ユーザーをいかに獲得するかに目が行きがちですが、ヤマハは今までのユーザーを大事にしていて、それがハードウェアにも表れているのではないかと思います。10年経っても使い続けられることが大事、というこだわりを感じます。例えば追加機能が出てもファームウェアバージョンは複数提供したり、コンフィグ切り替え機能など、運用者には優しいと思います。

石井:RTX1000ではLANが3系統になったのが大きいですよね。RT105eの後は2系統でしたが、ブロードバンドになってVPNで2系統を使ってしまうので、バックアップにISDNというのではちょっと辛かった。なので3系統めでバックアップとするか、LANセグメントを2つとるか。

大谷:DMZを設定する時にも利用できますよね。

石井:メインストリームの機種でそれができるのはすごいし、売っている立場から見れば大きな注目ポイントでした。

ユーザー目線からの省エネと耐久性

石井:RT107eは省エネに作ってますね。消費電力は5W以下、それができるのがすごい。

大谷:国産ルーターの意義の一つですよね。海外のものは電源周りがどうしても弱くて、結局それが原因で使えない機器も多いです。国産ルーターが安定して動くのは、省エネで電力的な安定性が高いことが大きな理由です。

石井:RTX1210からファームウェアが2つバックアップできるようになったのも大きな変化です。壊れないと言っていても壊れるときは壊れるので、そこまで気配りがあるのもユーザー目線ですね。

RTX1000の「切れたらつなぎ替えればいい」という提案

マイナビ エンタープライズ担当副編集長:丸山 篤

丸山:RTXシリーズ発売以降、ユーザーは変わりましたか?

— RTX1000の発売を機にそれまでヤマハルーターを使ったことがなかった企業に一気に広がりまして、法人と個人が半々になりました。

大谷:「インターネットは早いけれど安定した接続ができない」と考えていた層が飛びついたのでしょうね。新しいものに一気に行くのが難しい日本人が、ISDNに片足残したままで新しいインターネットの世界に行ける、というのが、RTX1000が提供した本当の価値だったのかもしれないと、今は思います。

石井:結局ルーターのキモはソフトウェアなんじゃないかという気がしていて、ヤマハは新しい機能を加えつつ昔の機能を大事にしているのが特長ではないかと思います。

大谷:私が最初にRTA52iの記事を書いた時に、GUIやヤマハのウェブサイトのことを大変褒めていて、「ろくな翻訳もしていないような外資系ベンダーには見習っていただきたい」とか書いています。日本語できちんと使えるGUIがあって、ちゃんとした日本語で情報提供しているメーカーは当時新鮮でした。ヤマハ製品を教材に勧められたのは、「これなら私でも使える」と思ったのが大きいです。ソフトの中身よりもGUIのユーザビリティが使いやすく、記事を読者に見せてもわかりやすいと考えていました。

ビッグピクチャーを描くより、おもしろい小ネタで勝負するヤマハでいて欲しい

TECH ASCII.jp 副編集長:大谷イビサ

大谷:メディア視点でいうと、記者発表一つとっても外資系のベンダーは大きな絵を描いて「これからはこうだ!」みたいなのが多くて、我々もそれに慣れています。対して、ヤマハの製品説明は国内の市場状況、ユーザーニーズ、戦術と、商品をきっちり説明してくれます。悪く言えば地味、良く言えば堅実な会社だなと感じます。
最近はInteropでティザー商品として、まだ製品化されていないものを出したりしています。Twitterでしゃべるルーターはキャッチーでしたし、ああいうものはおもしろいです。ビッグピクチャーより小ネタをどんどん入れていくヤマハでこれからもいて欲しいと思います。 ユーザーニーズも多様化しています。掘り起こせばビッグピクチャーに乗り切れない人もたくさんいると思いますから、日本のメーカーとしてはそこを攻めるのが良いのではないでしょうか。

丸山:企業がネットワークを切り替えるタイミングというのは事業が大きくなる時なので、そのタイミングで見つけてもらえるように、継続して名前が出ていることが重要ですよね。(ヤマハの広告宣伝も)大きな予算でバンと大きなものをやるよりも、連載系で常に「ヤマハ」という名前が露出するようなものをやって欲しいと思います。
あとはもっと小さな企業向けの商品を出してもいいのではないかと思いますね。セキュリティをもう少し統合したSRT100みたいなものはどうだろうとか、考えます。今後マイナンバーが出てくると、小さい企業でもセキュリティはもっと重要になってきますから。

— いろいろと話は尽きないですが、そろそろ時間となりましたので、この辺でお開きとしたいと思います。ありがとうございました。

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