[Part 1.]
ミシュランに評価された最年少オーナーシェフとして知られる、元赤坂「ながずみ」の小河氏。その料理は繊細でどこまでも優しい。自らも料理人である西田氏との話は食からはじまり、旅、音へと果てしなく広がる。
(この記事は雑誌『Discover Japan』2012年2月号掲載記事です)
西田(以下N) 一番大きなくくりで言うと、小河君って僕がすごく好きなタイプの料理人。料理って、その人の人となりがすごく出るものだと思うんですけど、小河君の場合は、ごはんがすごく優しい。何度食べても飽きない。
小河(以下O) ありがとうございます。でも料理にしても、とにかく当たり前のことをやっているだけなんですよ。何事も無理なく考えたいので、素材にしても毎日築地に行って『そのとき、そこにあるから使う』という理由だけでいいんじゃないかと思っています。
わざわざ特別なものをどこかから取り寄せたりっていうのは、しないですね。だから昔の人、それこそおかんとか、おばあちゃんとか、そういう普通の人が持っていた料理の考え方っていうのと、ほぼ同じなんじゃないですかね。
N それでこれだけ繊細な味が出せるんだから、すごいことですよ。小河君と料理の出会いって、そもそも何がきっかけだったのかな。子どもの頃から料理してた?

O いや、全然。子どもの頃からプラモデルとか、ものづくり全般に全然興味なくて。あと、生まれが九州なので男が台所に立つっていう感覚自体がなかったんですね。ただ、母はとても料理をつくるのが好きな人です。僕が板前修業をはじめるときに陶芸もはじめて。ウチでお出しするうつわも母が焼いたものを使ったりしています。
N 最初は教員志望だったという話も聞いたんだけど、本当?

O それは本当ですね(笑)。最初は学校の先生になろうと思って、大学の数学科に入ったんですけど、でも、世間をまったく知らずして先生になるって、すごくまずいことじゃないですか。それで結局大学を中退して、青春18きっぷで野宿しながら旅をしたんですね。で、10月くらいに北海道にいたんですけど、さすがにもう野宿はつらい。そんなときテレビで『今日の沖縄は27℃です』みたいなニュースをやってたんですね(笑)。
N それで沖縄へ行ったわけだ。




O でも、もうおカネもないので働かなきゃいけない。そんなとき万座ビーチホテルに入ってる和食のお店に偶然雇ってもらったんです。そこには一年くらいいましたけど、はじめてやってみた料理が、とにかくおもしろくてびっくりしました。もともと数学好き、物理好きなんですけど、料理って、実はすごく数学的じゃないですか。
N 料理は科学だし、料理人も理系の人がすごく多いですよ。
O その後も引っ越し屋、洋服屋とか、色々バイトしたんですけど、どれもすごくいい勉強になりました。たとえば引っ越しの荷物を積み込んだりするのって、とにかく段取りが命でしょう。料理も段取りがものすごく大事ですし。
あとは、小さい頃から何でも疑う癖があるんですよ。どんな料理でも、その料理法は本当に正しいのか、その時代はそれでよかったかもしれないけど、今なら違うやり方があるんじゃないか、いつもそう考えちゃうんですね。マニュアルなし、じゃあ今の僕が考えよう、これが常にスタート地点。
N あと、小河君ってレシピとらないでしょう。分量も量らないし、味つけも自分の頭の中でライブで考えるだけ。それってライブアーティストっていうことだよね。
O 過去の献立を残すと「あの人にこの料理出したな」っていう記録にはなりますけど、そうすると今度は「何を出してないか」って調べ出すようになっちゃうんですよね。それじゃ、新しいものは生まれていかないと思いますよね。
N 料理は科学だけど、クリエイション(創造)でもあるからね。至って王道、でも日本料理の伝統を踏まえつつ、ものすごく崩すところは崩してる。それでいて繊細。そこがすごくおもしろいと思う。
O 極端なことを言ってしまえば、前と同じものをまたつくろうなんて、全然思ってないです。実際、素材も味も変わるわけですから。今日自分が美味しいと思う、
そのベストを日々尽くすだけです。
N さすが若きミシュランシェフ(笑)。やっぱり小河君はライブアーティストだね。このカウンターがステージなんだな。

(Part.2は2月20日公開予定です。)

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