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務川慧悟の「音楽な日々」〜パリ留学ダイアリー

第81回日本音楽コンクール第1位、エピナル国際ピアノコンクール第2位など
輝かしい成績を誇る新進気鋭のピアニスト、務川慧悟が留学中のパリから様々な出来事や想いを綴ります

(毎月1日、15日頃更新。※更新日は、都合により前後する場合がございます。)
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pianist 務川 慧悟

pianist 務川 慧悟
1993年愛知県出身。3歳よりヤマハ音楽教室にて学び、ヤマハマスタークラスピアノ演奏研究コース修了。東京藝術大学2年在学中の2014年、パリ国立高等音楽院に審査員満場一致で合格し渡仏。現在、同音楽院にて研鑽を積む。
2008年第62回全日本学生音楽コンクール中学校の部全国大会第1位、併せて野村賞、井口愛子賞、音楽奨励賞受賞。2010年第14回松方ホール音楽賞(第1位)を最年少受賞。2012年第81回日本音楽コンクール第1位、併せて野村賞、井口賞、河合賞受賞。2014年東京藝大学内において、アリアドネ・ムジカ賞受賞。第3回秋吉台音楽コンクール室内楽部門第1位。2015年第25回エピナル国際ピアノコンクール(フランス)第2位。 これまでに、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、セントラル愛知交響楽団、練馬交響楽団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、藝大フィルハーモニア、NHK名古屋青少年交響楽団、フランスにてロレーヌ国立管弦楽団と共演のほか、室内楽では、NHK交響楽団首席奏者と共演。全国各地でソロリサイタルを開催の他、室内楽などの演奏活動も積極的に行っている。
2012.2013.2014年度ヤマハ音楽振興会音楽支援奨学生。
2015年度公益財団法人ロームミュージックファンデーション奨学生。
現在、フランク・ブラレイ、上田晴子、テオドール・パラスキヴェスコ、青柳晋、横山幸雄の各氏に師事。


※上記は2016年1月5日に掲載した情報です。

No.10おうち2つ

2016.07.26更新

 旅をしない音楽家は不幸だ、と、モーツァルトは言ったそうだ。おお、では、幸福になるためには、旅だ、旅だ!!
 という事で(?)、比較的時間に余裕のあった6月に、パリ近郊の幾つかの場所へ観光に出かけてきました。その中から、忘れることのできない強い印象を受けた2つの場所を紹介します。

 ラヴェルの生家と、ラヴェルの最後の家。そのどちらも、パリからは比較的手軽に行くことができます。今、最も好きな作曲家の一人がラヴェルである僕にとって、この2つの場所に行けたことは幸せでした。

 バスク地方。すなわち、フランス・スペイン両国にまたがるその地域圏には、フランス文化ともスペイン文化とも異なる独特の文化を持ちながら、バスク語を用い暮らしているバスク人たちが住んでおり(今ではそのバスク語を話せる人はほとんどいなくなってしまったのですが)、そんな中に、ラヴェルの故郷「サン・ジャン・ド・リュズ」という町はあります。青い青い大西洋を眼前に広げた、明るい明るい町なのですが、その地に降り立った瞬間に、僕の頭の中で「ボレロ」や「ラ・ヴァルス」、「スペイン狂詩曲」などの作品が自動的に再生された、というのは少し嘘になりますが笑、でも、確実にラヴェルの片鱗を感じることはできたくらいには、そこは美しい所だったのでした。
 とは言っても、ラヴェル自身は、0歳のうちにパリへ移り住み、バスクで過ごした記憶は無いそうですが…それでもラヴェルは、自分にバスク民の血が流れていること(ラヴェルの母はバスク人でした)に誇りを持っていたそうです。幼年期を過ごしたバスクの影響は、もしかしたらラヴェルの潜在意識の中に、微かに残っているのかもしれない、なんて想像しつつ、バスク的色気と言ってもいいであろう独特な雰囲気を持ったラヴェルの曲たちを脳内再生しながらこの静かな町をぼーっと散歩していると、嬉しくなったりするのでした。

 続いて、ラヴェル最後の家。
 パリを離れること車で1時間ほど、これまたバスクとは違った美しさと可愛らしさを持った小さな町の中にある、小さな家、しかも、身長が低かったラヴェルに合わせて、天井も低く、とびらもコンパクトに作ってあるという、"普通以上に小さな家"、そこに、晩年のラヴェルは住んでいました。そしてそれぞれの部屋の、なんとおしゃれで、可愛らしく、整理整頓されていること!
 案内して下さった方によると、ラヴェルは非常に几帳面でありマメな性格で、収集癖もあったとのこと。本棚の大量の本は隙間なくキレイに並び、食器棚の食器の並び方1つ取ってもバランスが取れ整頓されていて、そして1番嬉しく思ったのは、ラヴェルが日本の陶器を収集していたこと。食器棚に丁寧に並べられた和製茶のみ、急須、お皿、を見て、あぁ日本の陶器っていいなぁ…って、そんな感想をラヴェルの家で抱くことになるとは思ってもみませんでした。笑
 それはさておき、ラヴェル晩年の作品の、無駄な音が1つも無い完成度の高さ。それはラヴェルのこのような性格から来ているのかもしれない、と実感することができました。

 ラヴェルの作品を弾いていると、僕はいつも、理論的な妥協の無さと、妖艶な魅力という、ある意味異なる2つの魅力を感じます。
 完璧主義性と、民族的とも言える独特な色気。2つの面を、2つのラヴェルの家から、それぞれに感じ取ることができたのでした。

 ところで、こうして、町のこと、家のこと、風景について、沢山綴っているのに、写真を一枚も載せていないのはなぜ?と思われた方もいらっしゃると思います。
 なぜなら!!先日、iPhoneを思いっっっきり落っっっことしてしまい、もともと半分調子が悪かったのですが、ついに大破してしまったのです。そして、旅行時に張り切ってiPhoneで撮りまくった写真たちは、全て消えてしまったのです笑。

 沢山あった、素晴らしい写真たちをお見せできずすみません…最後に、先日名古屋で行いました、内匠慧くんとの二台ピアノのコンサートの写真を載せて、終わりとしたいと思います!笑

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pianist 務川 慧悟

pianist 務川 慧悟
1993年愛知県出身。3歳よりヤマハ音楽教室にて学び、ヤマハマスタークラスピアノ演奏研究コース修了。東京藝術大学2年在学中の2014年、パリ国立高等音楽院に審査員満場一致で合格し渡仏。現在、同音楽院にて研鑽を積む。
2008年第62回全日本学生音楽コンクール中学校の部全国大会第1位、併せて野村賞、井口愛子賞、音楽奨励賞受賞。2010年第14回松方ホール音楽賞(第1位)を最年少受賞。2012年第81回日本音楽コンクール第1位、併せて野村賞、井口賞、河合賞受賞。2014年東京藝大学内において、アリアドネ・ムジカ賞受賞。第3回秋吉台音楽コンクール室内楽部門第1位。2015年第25回エピナル国際ピアノコンクール(フランス)第2位。 これまでに、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、セントラル愛知交響楽団、練馬交響楽団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、藝大フィルハーモニア、NHK名古屋青少年交響楽団、フランスにてロレーヌ国立管弦楽団と共演のほか、室内楽では、NHK交響楽団首席奏者と共演。全国各地でソロリサイタルを開催の他、室内楽などの演奏活動も積極的に行っている。
2012.2013.2014年度ヤマハ音楽振興会音楽支援奨学生。
2015年度公益財団法人ロームミュージックファンデーション奨学生。
現在、フランク・ブラレイ、上田晴子、テオドール・パラスキヴェスコ、青柳晋、横山幸雄の各氏に師事。
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※上記は2016年1月5日に掲載した情報です。

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