コンサートレポート

コンサートレポート

シャルル・リシャール=アムラン氏が描き出す詩情あふれるショパンのコンチェルトの世界

2017年2月24日(東京芸術劇場コンサートホール)

 2015年、ワルシャワで開催された第17回ショパン国際ピアノコンクールで第2位に輝いたシャルル・リシャール=アムラン氏。包容力のある温かな音楽が高く評価され、次代を担う実力派ピアニストとして注目を集めています。2017都民芸術フェスティバルでは、ミヒャエル・バルケ氏指揮、読売日本交響楽団との協演でショパン《ピアノ協奏曲第2番》を抒情豊かに奏で、客席を埋めた2000人近い聴衆を魅了しました。

■プログラム
ウェーバー:歌劇「魔弾の射手」作品77〈序曲〉
ショパン:ピアノ協奏曲第2番へ短調 作品21
シューマン:交響曲第1番変ロ長調 作品38「春」

 コンサートの冒頭、2月21日に逝去した読売日本交響楽団の桂冠名誉指揮者のスタニスラフ・スクロヴァチェフスキ氏に哀悼の意を表して、バッハ《アリア(管弦楽組曲第3番より第2曲)》が厳かに演奏され、会場は静寂に包まれました。続いてウェーバーの歌劇《「魔弾の射手」より〈序曲〉》。そして、ステージ中央にヤマハCFXが運ばれ、大きな拍手に迎えられてシャルル・リシャール=アムラン氏が登場しました。 

 19歳のショパンが初恋の人、コンスタンツィアへの想いを込めて作曲した《ピアノ協奏曲第2番》。やるせない恋心が音楽に昇華したようなオーケストラの序奏に続き、アムラン氏は煌めくような美音を響かせて高音部から低音部に下降するフレーズを奏で、ショパンの若き日の夢、憧れ、悲しみを生き生きと描き出していきます。第2楽章のラルゲットでは、印象的な美しいテーマをみずみずしく歌い上げ、幻想的な世界を繰り広げました。第3楽章では、ポーランドの民族舞曲のリズムに乗ってヤマハCFXの色彩感に満ちた音色を飛翔させ、ドラマティックな演奏で聴衆を感動の渦に巻き込みました。
 アンコールは、バッハ《アリオーソ(チェンバロ協奏曲第5番より第2楽章)》。冒頭の《アリア》に呼応するかのように、心に沁みる清らかな音楽が会場を満たし、温かな余韻を残して前半のステージを締めくくりました。
 終演後、アムラン氏は「コンクールの後、このコンチェルトを演奏するのは38回目ですが、読売日本交響楽団の素晴らしいサウンドに刺激され、新鮮な気持ちで演奏することができました。とくに第2楽章は、オーケストラとのアンサンブルが心地よく、自由に歌うことができて幸せでした。ヤマハCFXも繊細な音色で私の音楽づくりを支えてくれました。こんなに柔らかく弱音の表現ができるピアノは、ほかにはないと思います。コンクール期間中、いつも私に寄り添ってくれたヤマハCFXは、大切な友人のように感じられます。いつもヤマハCFXを弾くのを楽しみにしています」と語ってくれました。
 コンクールから1年半、進化し続ける大器の今後の活躍が楽しみです。

 

Text by 森岡 葉  写真提供:読売日本交響楽団