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【アーティスト対談】ピアニスト・作曲家 藤井 一興氏 × バイオリニスト 奥村 愛さん - 楽器同士が響き合うアンサンブルの魅力

この記事は2015年5日7日に掲載したものです。

みずみずしい音楽で聴衆を魅了し続けているバイオリニスト、奥村愛さん。
5月30日のリサイタルには、フランス音楽の名手、
藤井一興氏をピアニストに迎えて「一日」をテーマにした素敵なプログラムを聴かせてくれます。
かつては師弟関係だったおふたりの初共演に向けての抱負、アンサンブルの魅力などを語り合っていただきました。

以下、敬称略しております。

互いのイマジネーションを刺激し合って
スリリングなステージが生まれる

奥村:藤井先生には、学生時代、一度だけ室内楽のレッスンしていただいたことがあるのですが、長年尊敬している先生に共演していただけるなんて夢のようで、新しい自分を発見するきっかけになるのではないかと期待しています。

藤井:若い奏者の方から刺激を受けて演奏するのは、いつも楽しみです。もう15、6年前くらいになるでしょうか、室内楽のレッスンでメシアンの《世の終わりのための四重奏曲》を一緒に勉強したのですよね。クラリネット、バイオリン、チェロ、ピアノという編成の、すごく難しいけれど美しい曲を……。 

奥村:ひとつの楽章を最初から最後まで全員でユニゾンで演奏したりするので、楽器同士の音程を揃えるのが難しくて、かなり練習してレッスンに臨みました。緊張していてレッスンの細かい内容は覚えていないのですが、先生がピアノ・パートを演奏しながらメシアンの音楽を熱く語ってくださって、私たちの演奏が見違えるように変わっていったことを印象深く覚えています。

藤井:桐朋学園で長年室内楽や伴奏法を指導させていただいていますが、創始者の齋藤秀雄先生のアンサンブルを重視する教育思想が生きていて、素晴らしいなと思います。ほかの楽器と一緒に音楽をつくる喜びは、言葉では言い表せません。バイオリンから生まれる倍音、ピアノから生まれる倍音、それが溶け合って生まれる響き……、その偶然性が魅力なんです。その日のホール、その日のバイオリン、その日のピアノ、一期一会の出会いが奏者のイマジネーションを膨らませて、スリリングでクリエイティブなステージになるので、今回も楽しみですね。

「一日」をテーマに、色彩鮮やかに紡ぐ音楽

奥村:今回のプログラムは「一日」をテーマに、さわやかに目覚め、日が昇り、夕暮れから夜の喧騒へというイメージで曲目を組んでみました。

藤井:あぁ、なるほど、一日のドラマがあるんですね。エルガーの《朝の歌》で始まって……。

奥村:シュニトケの《古い様式による組曲》は、バロックか古典のような作品なので、午前中の清々しい雰囲気を表現したいと思います。

藤井:イザイの無伴奏ソナタは日が高く昇った頃でしょうか。バイオリンの4本の弦の音色がそれぞれ鮮やかに輝いて、低音から高音まで縦横無尽のテクニックを駆使する作品ですが、自身がバイオリニストだったイザイならではの色彩感、さすがだと思います。聴き惚れてしまうような作品ですよね。

奥村:難しい曲ですが、バイオリンの魅力を伝えられるよう頑張ります。《燻る煙と共に》は、加藤昌則さんが私のために書いてくださった作品です。

藤井:素敵な曲ですね。ドビュッシーの《美しき夕暮れ》も、洗練された美しい小品ですよね。そして、ピアソラの《ナイトクラブ1960》、ラヴェルのソナタの第2楽章のブルースは、まさに夜の雰囲気。ラヴェルのソナタも難しいでしょう? とくに第3楽章はテクニック的に大変だと思います。第1楽章はピアノから始まる主題をバイオリンがカノンのように追いかけて発展させ、カノンの主題とそれに絡む別の主題との熱い対話、揺れ動くようなリズムが官能的ですよね。

奥村:はい。フランス音楽の名手の藤井先生の胸を借りて精一杯演奏したいと思います。

藤井:第2楽章は黒人霊歌のようなブルースの哀しみを表現しなければいけませんね。第3楽章は無窮動の16分音符の刻みが大変で、ピアノが第1楽章の対主題の拡大形をラグタイム風に弾いたり……。私はラヴェルの作品を弾く時、真ん中のソステヌートペダルをよく使うんです。ヤマハCFXは音色も素晴らしいですが、ペダルの性能もきわめて優秀で、ソステヌートが少しもずれずにピタッと決まります。こんなピアノは初めてです。伸びてほしい音を確実にキープしてスタッカートが弾けるので、この作品では絶大な効果を発揮すると思います。紀尾井ホールは響きのよいホールなので、ヤマハCFXの多彩な音色がバイオリンとどのように響き合うか、そういう意味でも楽しみですね。

ヤマハCFXの豊かな倍音がバイオリンの音色を輝かせる

奥村:私は作曲家出身のピアニストの方に伴奏をお願いすることが多いんです。ピアノからオーケストラのような響きが聞こえてくるようです。

藤井:私は芸高、芸大で作曲を学びましたが、高校生の時にフルートの伴奏を頼まれて桐朋学園に行って齋藤秀雄先生に出会い、大学1年からは指揮科の学生のコレペティートルとして齋藤先生の教えに直に触れて衝撃を受けました。先生が少し指導しただけで、音楽が見違えるように流れるんです。神様みたいなオーラがありましたね。留学する前の若い時に、ベートーヴェンやチャイコフスキーの交響曲をそういう形で勉強したことは、一生の財産になっています。ソロを弾く場合でも、和声感やビート感ってとても大切なんです。

奥村:私は直接教えを受けた世代ではないですが、恩師や父が齋藤先生門下なので、伝統を受け継いでいけるといいなと思っています。

藤井:バイオリンの伴奏をする時は、4本の弦それぞれの色彩をキャッチして演奏することが大切だと思っています。私は一番低いG線の音をいつも意識して、それにハーモナイズする音色を考え、倍音を駆使してバイオリンの音色を輝かせたいと思っています。ヤマハCFXは倍音が豊かなので、楽しみです。クレッシェンドはもちろんですが、ディミヌエンドがきれいにできる楽器なので、バイオリンの音が伸びているところで、ピアノの音が減衰する絶妙な美しさが出せるといいですね。

奥村:練習と本番を通して成長できそうで、今からワクワクしています!

Text by 森岡 葉

お二人の共演コンサート情報はこちら 奥村愛ヴァイオリンリサイタル 2015年5月30日(土)14:00開演 紀尾井ホール 共演:藤井一興(ピアノ)

Profile

藤井 一興

藤井 一興ピアニスト・作曲家
東京芸術大学3年在学中、フランス政府給費留学生として渡仏。パリ・コンセルヴァトワールにて作曲科、ピアノ伴奏科ともに一等賞で卒業。パリ・エコール・ノルマルにてピアノ科を高等演奏家資格第一位で卒業。作曲をオリヴィエ・メシアン、ピアノをイヴォンヌ・ロリオ、マリア・クルチォ、井上二葉、ピアノ伴奏をアンリエット・ピュイグ=ロジェの各氏に師事。 1976年以降入賞した国際ピアノ・コンクールの数は10以上に及ぶ。世界各地、日本国内にてリサイタル、室内楽、コンチェルトの他、フランス国営放送局を始めとするヨーロッパ各地の放送局や日本のNHK等で多くの録音、録画など幅広い活動を行っている。CDではメシアン、イゴール・マルケヴィッチ、武満徹、フォーレ作品集などをリリースし、現在ドビュッシーのシリーズに取り組んでおり、第2弾が2015年夏にリリース予定。作曲家としても、フランス文化省から委嘱を受け、その作品が演奏会や国際フェスティバルで演奏・録音されたり、毎年自身のリサイタルで新作を発表している。その他、世界初のフォーレのピアノ全集の校訂を担当し、1~5巻(全5巻完結)を春秋社より出版している。現在、東邦音楽大学大学院大学教授、東邦音楽総合芸術研究所教授、東京芸術大学、桐朋学園大学各講師。
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奥村 愛

奥村 愛バイオリニスト
7歳までアムステルダムに在住。桐朋学園大学ソリスト・ディプロマコースで学ぶ。辰巳明子、ライナー・ホーネックの各氏に師事。第48回全日本学生音楽コンクール全国大会中学生の部第1位、第68回日本音楽コンクール第2位、他受賞多数。 これまで国内の主要オーケストラとの共演をはじめ、04年にはP.ガロワ指揮シンフォニア・フィンランディア日本ツアーへの出演など、海外オーケストラとの共演も重ねる。富士山河口湖音楽祭に毎年出演。CDは02年『愛のあいさつ』でデビュー。最新CDは2013年11月発売の「With a Smile~微笑みをそえて」(エイベックス・クラシックス)。親しみやすいプログラミングと自然体なトークによるリサイタルは各地で大好評を得ている。一児の母としての経験を生かし、自らのプロデュースによる親子向け公演を数多く手掛けている。テレビ・ラジオ等への出演も多く、多彩な活躍で注目されている。桐朋学園芸術短期大学非常勤講師。佐藤製薬のトータルスキンケアブランド「エクセルーラ」のイメージキャラクターをつとめている。
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※上記は2015年5月7日に掲載した情報です。

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