エレクトーンの新たな活躍の場を求めて…… THE SYMPHONIC SOLO 響きの⾰命―神⽥将のエレクトーンが創る宇宙

エレクトーンの存在は一般的に知られているにも関わらず、その進化や多岐にわたる活用の情報は狭い範囲で停滞しており、ゆえに現在においても習い事のための楽器というステレオタイプのイメージを抱く人が多いようです。そうした偏りは、むしろエレクトーンの全盛期を知っている年齢層に顕著であり、さらに深く読み解くと、文化や芸術に敏感でゆとりのある人々の目にエレクトーンが映る機会がほとんどないように感じられます。

ある層の人々は、連日のようにコンサート等のイベントに出掛け、鑑賞とともに会場での社交を楽しんでいるという実態を知り、なんとかエレクトーンにも目を向けてもらい、芸術的な鑑賞にじゅうぶん応えられ、ラグジュアリーな空間にも違和感なくマッチすることを証明しようと、今回のイベントを企画しました。

企画に際してはターゲット層の意見を参考にして、中途半端なイベントにならないよう工夫しました。行きたいと思える会場、味わいたいと思える料理や飲み物、参加すれば満足できそうというイメージ。言われてみれば当たり前のことですが、企画というのはどうしても手前味噌になりがちで、エゴを捨てて何を求められているかを最優先するというのは勇気のいるものです。

会場は料理の評判がよく歴史のある東京會舘。90分で食事を完結でき、かつ慌ただしさを感じさせないよう4皿のコースに抑えながらも、1皿ごとにインパクトのある料理を依頼。ワインのペアリングも好評でした。

今回、最も重視したのは、お客様ひとりひとりに、大切に扱われたと感じてもらうことです。ドアオープンの瞬間から奏者自身が客席に立ち、会館のスタッフたちと共にお客様をお出迎えし、終始そのまま会場内の各テーブルを何度も回りながら対話を楽しみました。演奏タイムは食事の後でしたが、ドアオープンと同時に催しは開演しており、イベントを通じてトータルな愉しみをシームレスに感じていただくという狙いは、大きく功を奏したと思います。

奏者の立場なら、演奏開始まで控室で集中を高めたいと願うものでしょうし、そのほうがよい演奏になるのかもしれませんが、お客様との交流で得たリラックス感がステージでの演奏に余裕と勢いを与えてくれました。

演奏前にお客様と対話しながら感じたのは、ふだん一流アーティストの公演を聴き慣れている人々にとって、エレクトーンは完全に射程外で無関心という現実でした。それでも演奏には誠実に耳を傾け、終演後には思いもよらないすばらしさだったと、口々に賞賛してくださったのです。

今回のイベントを成功させたことで、エレクトーンの普及にはまだまだ空白地帯があり、そこには奏者の活動の場を増やし、芸術性や技量を育む土壌が眠っていることがわかりました。これまで同様あらゆる演奏機会を等しく全力で演じながらも、ハイエンドなイベントにも積極的に取り組み、エレクトーンに対する認識を塗り替えて行きたいと思います。

著/エレクトーン奏者 神田将

エレクトーン演奏/神田将

Photo/KAITO UEDA

2026年3月19日 東京會舘

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