『AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展』/ イベント / 東京都

Japan/Tokyo SEP. 2018

東京都港区の複合施設「東京ミッドタウン」。その中にあるデザインの展示施設が21_21 DESIGN SIGHT(以下21_21)。ギャラリー1&2において2018年6月29日から10月14日までの期間開催されている「AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展」に、会場の音響システムとしてヤマハのスピーカー等のPA機器が導入されました。

展覧会のコンセプトやヤマハの機器導入の経緯などについて、本展のディレクターを務めた中村勇吾氏と、本展のために新曲『AUDIO ARCHITECTURE』を書き下ろした音楽家の小山田圭吾氏(Cornelius)にお話をうかがいました。


「AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展」とは?

「AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展」とは小山田圭吾氏(Cornelius)が本展のために書き下ろした新曲『AUDIO ARCHITECTURE』を、映像、アニメーション、ダンス、グラフィック、広告、イラストレーション、プログラミング、メディアデザインなど様々な領域で高い評価を得ている気鋭の作家たちがそれぞれの視点から解釈し、制作した映像作品を展示する展覧会。ディレクターには、独自の表現により、ウェブ、インターフェース、映像の分野で高く評価されている中村勇吾氏が起用されている。

会場構成は片山正通(Wonderwall)が手がけ、大きなスクリーンと8つの小部屋を造作したダイナミックな空間を演出。参加作家は稲垣哲朗、梅田宏明、大西景太、折笠良、辻川幸一郎(GLASSLOFT)×バスキュール×北千住デザイン、勅使河原一雅、水尻自子、UCNV、ユーフラテス(石川将也)+阿部舜の9組。会場ではそれぞれの映像作品が繰り返し再生され、音楽、映像、空間が一体となった世界に没入できる。

「AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展」とは?

 

音楽担当 小山田圭吾氏(Cornelius)

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展覧会ディレクター 中村勇吾氏 インタビュー

音楽を担当した小山田圭吾氏(Cornelius)(写真左)
展覧会ディレクターの中村勇吾氏(写真右)

この「AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展」は、どんなきっかけで企画されたのでしょうか

中村氏:

21_21から自由にやっていいということでお話をいただきました。展覧会って結構大変なので、どうせやるなら好きなことをやりたいと思って「音楽もデザインだ」という視点で、デザインから音楽を語る展覧会にしたいと考えました。それで最初はデザインとしての音楽を説明するようなものをイメージしていたのですが、概念が広すぎて捉えようが無いなと思い、一つの切り口で大胆に表現する方向に転換しました。

音楽を小山田さんにお願いしたのはどうしてですか

中村氏:
もともと小山田さんとは長い付き合いです。今回の空間デザインを担当されたWonderwallの片山さんの展覧会で、私が映像、音楽を小山田さんが担当して以来です。もともとCorneliusの音楽が好きだったんです。それまででも何回かミュージシャンの方と仕事をしていまして、割と自分の既に作られている楽曲を重んじる方が多かったのですが、ミュージシャンは自分の楽曲に手を加えたりなど嫌がる方も多いのですが、小山田さんはそうではなくて、デザインとしてゼロから一緒に考えてくれましたね。いい意味で正にサウンドデザイナーだと思いました。

nakamura 展覧会ディレクター 中村勇吾氏

小山田さんにおうかがいします。今回の音楽はどのように作られたのでしょうか

小山田氏:
最初に依頼を受けたとき、この「AUDIO ARCHITECTURE」というタイトルははじめからあったんですが、それだけではなかなか曲が思いつけなくて。それで勇吾さんにキーワードがほしいとお願いしました。

中村氏:
それで展覧会にまつわる言葉をバーっと出して渡しました。曲のコンセプトというより、この展覧会自体のコンセプトである「音楽、空間、時間」という観点で、関係するキーワードを対義語として並べていったという感じです。それがそのまま歌詞になっています。

小山田氏:
それをもらったら一気にイメージが湧いて、できたって感じですね。

oyamada 小山田圭吾氏(Cornelius)

この展覧会で苦労した点はありますか

中村氏:

苦労したのは、予算をどうやりくりするか(笑)と、映像と音楽の同期ですね。作業的にはネットワーク上で全部同期する仕組みにはなっていて、手動で調整する必要もあって、技術監修のルフトツークさんが一週間ぐらいかかっていて終わり頃は人相が変わっていました。でも展覧会は結構大変なのでピリピリはするんですけど、やっぱりできると嬉しい。できた時の喜びがありますね。今回、小山田さん含め映像の作家さんの作品には、口出しはせずに出たものを持ち寄るというルールで並べました。無事出来上がって安堵しています。

全くカラーが違う作家が選ばれていますね

中村氏:

音楽と同期した映像となるとモチーフ違いのサウンドシンクロ選手権になりがちなので、人選の段階でミュージックビデオの監督というより、あんまり関係ないところで独自の作家活動をしているアーティストの方々にお願いしました。映像が繰り返し流れるので、退屈を感じないか非常に心配だったんですが、どれも面白く飽きずに見ることができますね。

小山田氏:

僕は映像作品などの事前情報なしで公開の前日の内覧会で初めて見たけど、すごく楽しかったです。その後も子どもを連れて何度か来ていて、いつもほぼお客さんの気持ちで見ていますが何度見ても楽しいですね。

会場の音響システムとして、ヤマハのスピーカー、アンプ、プロセッサーをお使いいただきました。音の環境としてはいかがでしょうか

小山田氏:
21_21はコンクリート打ちっぱなしで音が反射して響き過ぎたため、壁床はパンチカーペットを使って吸音をする工夫をしています。また巨大なスクリーンを使っているので、どこの場所で見てもバランス良く音が聴ける、という環境を目指しました。最初はもっと小型のスピーカーでやってみたのですが、より音量のあるものということでヤマハのHSシリーズを採用しました。ずいぶん試行錯誤していただいて、途中でスピーカーを大きいのに変えたりして、結果的にすごくいい音の環境になったと思っています。

メイン会場天井にはスピーカーHSシリーズ・サブウーファーDXSシリーズが設置されている。この他、スピーカーVXSシリーズが導入されている。

メイン会場に設置されたパワーアンプXMV4280とマトリクスプロセッサーMTX3

広い会場に合わせて大音量でも良い音質で聴けるということでしょうか

中村氏:

そうですね。今回は展覧会でありながら『大音量で音を聴かせる』ことが大事だと思っていました。もう一方で楽器や効果音など、『音が一つ一つしっかり聞こえるクリアさ』も大事だったのですが、それが両立できたと思います。見に来てくださった方から「音響がいいね」とお褒めの言葉をいただくことも多いですよ。

読者にこの展覧会で伝えたいこと、楽しんでほしい点を教えてください

中村氏:

ステージ正面に座るのもいいですが、スクリーンの端で遠近感を感じたり、歩き回ったりもしても楽しめると思います。最近は音楽をストリーミングなどで聴く機会が増えていて、曲がふわっと流れて消費されてしまう感じがしますが、たった一曲を延々と繰り返して聴くと、スルメのように、その曲のいろんな魅力に気づくような気がします。それを自宅に帰ってもやって欲しいですね。昔のことを思い出すと、好きな曲をエアチェックして何回も聴いたりしていたじゃないですか。その頃みたいに「一曲一曲を大事に聴こうぜ」って言いたいですね。

それにしても1曲だけをテーマにした展覧会とは、思い切った企画ですよね

小山田氏:

1曲だけっていうのは、僕もすごいと思いました。でも、こういうふうに音楽が体験できる場所って世界的にもあまりないんじゃないかな。映像があって音があって、でも映画でもないしライブでもなくて。これは音楽と映像による完全に新しい体験という気がします。

中村氏:

中途半端に2、3曲よりは1曲のほうがいいじゃないですか(笑)アルバムのリリースの時ってライブをやったり、PVを作ったりするじゃないですか。そういうのとは別にこういう空間を作って音楽を体験してもらう、みたいなリリース形態があったら面白いなって思っています。実際、ここのショップで小山田さんのレコードがアナログにもかかわらず、結構売れているんですよ。

小山田氏:

ここでさんざん聴かされるからね(笑)

今日はお忙しいところ、ありがとうございました

 

 

「AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展」

http://www.2121designsight.jp/program/audio_architecture/

 

21_21 DESIGN SIGHT

http://www.2121designsight.jp

Photo:Masaya Yoshimura