【導入事例】ホテル1899東京 様 / ホテル / 東京都

Japan/Tokyo Dec. 2018

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2018年12月1日にオープンした「ホテル1899東京」は人々が集い交流する「賑わい」と、都会の喧騒を離れてくつろげる「静寂」を日本のお茶文化とともに味わえる個性豊かなブティックホテルです。このたび1階のデリ&バル、そして2階のフロント&レセプションスペースにヤマハの小型スピーカー「VXS1ML」とコンパクトサブウーファー「VXS3S」が採用されました。導入の経緯や選定理由について株式会社 龍名館 専務取締役 濱田裕章氏、BGMを担当したMood Media Japan株式会社 取締役 植木美央氏、そして空間音響デザインを手掛けたインタースペースコーポレーション 矢島裕至氏にお話をうかがいました。

photo002 (左)Mood Media Japan株式会社 取締役 シニア・ミュージックデザイナー 植木美央氏
(中央)株式会社 龍名館 専務取締役 濱田裕章氏
(右)インタースペースコーポレーション 空間音響デザイナー 矢島裕至氏

 


寛ぎの時間を彩る「1899」の音


 

・はじめに「ホテル1899東京」のコンセプトを教えてください。

濱田氏:
弊社は御茶ノ水でホテル「龍名館」を経営しておりますが、2014年に龍名館の1階でお茶をテーマとした料理を提供する「レストラン1899お茶の水」を2014年にオープンし、おかげさまでご好評を賜っております。その「1899」をブランドとして冠して「ホテル1899東京」をこのたびオープンいたします。
日本には今までシティホテルかビジネスホテルのどちらかしかありませんでしたが「ホテル1899東京」は他にはない個性を持ったホテル、いわゆる「ブティックホテル」というカテゴリーを目指しています。価格やラグジュアリーさで選ばれるのではなく、感度の高いお客様に選ばれるエッジの効いたホテルにしていきたいと思っています。

・今回音楽や音にこだわったのはどうしてですか。

濱田氏:
レストラン1899お茶の水では「お茶料理」をコンセプトとしてきましたが、「1899」をブランドとしてホテルへと展開するにあたり、しっかりとしたコンセプトを確立する必要があると考えました。お茶は日本人にとって、寛ぎの時間を彩る存在として大切にしてきた文化ですが、それをホテルで表現するにはどうあるべきか。その観点からデザイン、インテリア、サービスなどのさまざまな要素をブランディングとして組み立ていきました。そしてそこには「音楽」も必要だと考え、音楽においてもプロフェッショナルの方々に協力をお願いしました。

photo003 株式会社龍名館 専務取締役 濱田裕章氏

 


1階の「縁側」には爽やかで明るい楽曲、
2階の「庵」には静かで落ち着いた漂うようなオリジナル曲を


 

・BGMを手掛けられたMood Media Japan株式会社の植木さんにおうかがいします。どんなコンセプトでBGMを選ばれたのでしょうか。

植木氏:
ホテル内では2つの場所で音楽を使っています。1つは1階のデリ&バル、そしてもう一つは2階のフロント&レセプションスペースです。1階のデリ&バルのコンセプトは「縁側」。明るくオープンな環境で人が集い、お茶を飲みながら自然と話が弾むような空間です。そして2階に上がるとそこは宿泊者だけのスペース。あたかも「庵」のような、静かで落ちついた空間です。それらをキーワードにしながら曲を選んでいきました。
1階はお茶を使った料理提供する場所で女性のお客様が多く見込まれるので、さっぱりとしたお茶の味わい、そしてお茶を自然に格好良くたしなむ方々のイメージに合うような、爽やかで明るくキレの良い音色の楽曲を厳選しました。2階については、茶室や日本庭園に見られるような儚く未完ゆえの深遠さを感じさせる、定まった拍や構成のない流動的でミニマルな音楽を漂わせて、宿泊のお客様ひとりひとりの心に響くような空間にしたいと思い、オリジナルの楽曲をエンジニアで作曲家の塚田耕司さんに依頼して制作しました。楽曲としては春夏秋冬の朝と夜、合計8曲を制作しています。

・ホテルのためにオリジナルのBGMを作曲するのは珍しいのではないでしょうか。

植木氏:
ホテルの案件で音楽を制作させていただいたというのは私としても初めてでした。日本庭園の岩に当たる水の音のように、拍や拍子が定まらないような空間的で、漂うように音が流れていくような音楽がいいと思ったので、既成の楽曲では難しく、オリジナル曲を制作しました。

photo004 1階のデリ&バル

photo005 Mood Media Japan株式会社 取締役
シニア・ミュージックデザイナー 植木美央氏

 


上質なデザインとピュアな音質がホテル1899東京の空気感を表現


 

・音響デザインを担当された矢島さんにおうかがいします。1階と2階の両方のスペースでヤマハのスピーカーをご採用いただきましたが、選定された理由をお聞かせください。

矢島氏:
このホテルではヤマハの小型BGMスピーカー「VXS1ML」とコンパクトサブウーファー「VXS3S」を採用しました。ヤマハを選んだ理由は、まずデザインです。ホテルの内装の意匠に力を入れているのに、そこにデザイン的に不似合いなスピーカーをぶら下げることは極力避けたいと思いました。ヤマハのスピーカーはデザインが上品で、しかも控えめな存在感なので内装のイメージによく調和しています。またヤマハの大きな特長であるピュアな音質が、お茶をイメージした清涼な空気感を表現するのにもあっていると考えました。

・1階のデリ&バルと2階のフロントでは、それぞれどのような音響設計をされたのでしょうか。

矢島氏:
各フロアのコンセプトを実現するために、いずれも特別なスピーカーセッティングを行っています。たとえば1階は「縁側」ですから、あたかも木漏れ日のような気持ちよさを音で表現するために、VXS1MLを窓のガラス側に向けて音を反射させています。それによってふんわりと包み込まれるような音を出すことができます。
いわゆる埋め込み型のシーリングスピーカーですと、真下にしか音が出せませんので、ふわりとした木漏れ日のような音響は実現できません。そこで首が振れて存在感を主張しない小さなスピーカーとサブウーファーの組み合わせを選択しました。ウーファーが再生する低音は定位感を持ちませんし、小型スピーカーから再生される中高域はガラスで反射させているので、シーリングスピーカーより広い範囲をカバーすることができます。

photo006 (左)VXS1MLW
(右)天井に設置されたサブウーファーVXS3SW

photo007 インタースペースコーポレーション 空間サウンドデザイナー 矢島裕至氏

 

・フロント&レセプションスペースの2階ではどんな音響設計をされているのでしょうか。

矢島氏:
フロアの象徴である庵のようなカウンターを音の中心としました。天井の間接照明が入っているスリットがありますが、スリットの内側の庵の四隅にあたる部分にVXS1MLをスリットの内側に向けてセットしています。そうすることで光と同様に音も拡散して空間全体に降り注ぎます。それによって音に包み込まれるような感覚が味わえます。

・このフロアではサブウーファーが床に近い部分に設置されているのはなぜですか。

矢島氏:
天井にサブウーファーがあって常に上から重低音が聴こえてくる環境は、カウンター内で長時間の業務を行うホテルスタッフの方にとっては圧迫感がありストレスになってしまいます。受付の方が快適でなければ、明るい接客はできませんから、音のつながりや音質的に無理がない範囲内で、カウンター内にいる人に負担をかけない場所を探してここになりました。

photo008 (左)間接照明のスリットに向けてVXS1MLWが設置されている
(右) 2階のサブウーファーVXS3SWは床に近い壁面に埋め込まれている

 

・綿密に音環境がデザインされたホテル1899東京ですが、実際に仕上がってみて感想はいかがでしょうか。

濱田氏:
植木さん、矢島さんのご尽力で音楽・音響について、当ホテルらしい個性を持った空間を作り出すことができたと思っています。特に2階に関しては他にはないオリジナリティ、ユニークさがあると思いますのでお客様をお迎えするのが楽しみです。

植木氏:
1階と2階ではガラリと音も雰囲気が違いますが共通して大切なことは、お茶の清らかさ、そして温かみ、ではないでしょうか。お茶と共に過ごすゆるやかな時間を音からも感じていただける空間に仕上がったと思っています。

矢島氏:
濱田専務と何度かブレインストーミングする中で方向性が明確化していき、その結果シャープにブランドイメージが表現できる音響システムが実現できたと思っています。実際にホテルが稼動したところで、さらに調整を行いながら音を育てていきたいと思っています。

 


本日はご多忙の中、ありがとうございました。


 

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ホテル1899東京
1899.jp/hotels/tokyo/ja/
Mood Media Japan株式会社
https://moodmedia.jp

製品情報 VXS1ML
VXS S model