FM音源の原理

FM音源の原理

画像:図1 低周波発振機を使った周波数の変化

図1 低周波発振機を使った周波数の変化

 FM音源とはFrequencyModulationの頭文字を取ったもので、日本語では周波数変調と呼んでいます。シンセサイザーの左端などにホイール型のコントローラーが装備されていて、これをモジュレーションホイールなどと呼びますが、FrequencyModulationのモジュレーションもこれと同じ意味です。モジュレーションホイールの場合はLFO(LoFrequencyOscillator)と呼ばれる低周波発信器の周波数を使ってモジュレーション(変調)するので、図1のように元の音の周波数がちょっと高くなったり低くなったり(ピッチが上がったり下がったり)を繰り返し、結果的にビブラートがかかったようになります。
ではLFOの周波数をもっと高い周波数にしてみるとどうなるでしょうか?
元の周波数に近い周波数の波形や、それ以上の周波数の波形でピッチを上下させると、ピッチを感じる基となる周期の中でピッチの上下が行われることになり、結果として波形が歪んでいきます。FM音源ではこれに似た考え方で波形を歪ませ、様々な音作りを可能にしています。
実際には時間変化に直線的に変化する位相の進み具合に揺らぎを与えて出力するというものなのですが、少々複雑なのでここではイメージだけにとどめます。
回転する車のタイヤを想像してみて下さい。
車の速度が一定なら当然ですがタイヤの回転も一定です。
このタイヤの左端に目印をつけて、その上下動の軌跡を図にすると丁度サイン波のような波形を描きます。
車の速度を一定に保つためにタイヤが1回転する時間は一定で無ければいけないルールを決めたとして、回転にムラがあったらどうなるでしょうか?
仮に、目印が時計の12時の位置に来るまで回転速度が速く、その後6時の位置に来るまでどんどん遅くなっていき、最後の1/4で急速に早くなって帳尻を合わせたとしましょう。その時の軌跡は、図2-bの様にサイン波とは異なる波形になります。
想像するにものすごく乗り心地の悪い車になりそうですが、進む速度は元の車と同じことになり、音で言うとピッチが同じであるのに相当します。
この回転ムラの揺らぎに使用する波形が変調する側の波形ということになり、この例ではタイヤが一回転するときに目印が描く軌跡の周波数と同じ周波数のサイン波を想定しています。

画像:図2-a

図2-a

画像:図2-b

図2-b

画像:図2-c

図2-c

画像:図3 10倍の周波数で変調した例

図3 10倍の周波数で変調した例

画像:図4 図3に時間的変化を加えた例

図4 図3に時間的変化を加えた例

画像:図5 FM音源での音作りの仕組み

図5 FM音源での音作りの仕組み

回転ムラの影響力をさらに増やすと目印の軌跡はさらに複雑な動きになり、場合によっては一回転する時間を均一に保つために逆回転もあり得ます。
すると、図2-cの様な軌跡も描くことになります。
元々のタイヤ回転による目印の軌跡が変調される側の波形で、回転ムラの制御波形(プラスだとアクセル、マイナスだとブレーキと言うよりはバックギア)が変調する側の波形と言うことになります。
話しを音に戻しますが、元の波形を別の波形で変調することで様々な波形を作り出すというのがFM音源の基本的な考え方で、変調の度合いや、変調する波形の周波数等によって複雑な変化を得ることができます。
例えば10倍の周波数で変調した場合を見てみましょう。この様にサイン波の大きな波の中に小さなひげのような成分が出来ているのが判ります。
元の周波数よりも非常に高い高域倍音成分が発生していることになり、これは金属的な音の成分になります。さらに変調する側の音量(変調の度合い)をEG(エンベロープジェネレーター)で時間的に変化させると、アタック部分は金属的で、ディケイやリリース部分は徐々に丸い音になっていくといった具合に、音に時間的変化を加えることが可能となります。
FM音源では変調される側のオペレーター(サイン波などを発生させる装置)をキャリアと呼び、変調する側のオペレーターをモジュレーターと呼んでいますが、キャリアとモジュレーターの組み合わせやそれぞれのレベルやエンベロープを調整することで、本来オペレーターが持っている波形とは大幅に異なる波形を生み出すことができる画期的な音源システムです。