「”音楽の街、渋谷”の可能性」 渋谷区長・長谷部健さん対談 2015.12.24

音楽の街づくり事業  おとまち

コンテクスト

持続可能な社会資産の創造へ

  • 渋谷が目指すべき“音楽の街”の姿

「”音楽の街、渋谷”の可能性」

渋谷区長・長谷部健さん対談

「”音楽の街、渋谷”の可能性」 渋谷区長・長谷部健さん対談
渋谷ズンチャカ!の名誉応援団長を務めた、長谷部健渋谷区長(左)と、
ヤマハミュージックジャパン 事業開発部長の佐藤雅樹(当時・右)

音楽を入り口に渋谷の未来を思い描く

音楽を通した市民によるまちづくりプロジェクト「渋谷ズンチャカ!」のキーパーソンである二人が音楽のもつ力、渋谷が目指すべき“音楽の街”の姿について語る。

佐藤 :「第1回渋谷ズンチャカ!」は、おかげさまで大盛況でした。

長谷部:プレイベントに比べて規模も大きくなりましたし、今回はメイン会場の「みやした こうえん」にとどまらず、街中に飛び出したのがよかったと思います。音楽の力で街が大いに活気づきました。自由に参加できるコンテンツも充実していて、通りがかりの人もたくさん参加したようですね。渋谷は来街者が多い街ですので、開催を知らずにたまたま来た方も気軽に参加できる音楽祭というのは、渋谷にぴったりのかたちだと思います。

佐藤 :開催にあたっては、地元商店会やボランティアスタッフのみなさんの力が欠かせませんでした。

長谷部:みなさんには本当に頭が下がります。渋谷には地域のつながり、住民のつながりがないように思われるかもしれませんが、実はローカルもちゃんと強いんです。そうした地元の力があることを、とても誇らしく思います。

佐藤 :そのようにいままで気づかなかった渋谷の魅力を引き出すことは、渋谷ズンチャカ!が目指すもののひとつです。そういう意味で、渋谷にはまだまだたくさんの魅力があると思います。

長谷部:中にいると気づかないこともありますよね。特に外国人観光客の話を聞くと、いろいろなことに驚かされます。たとえばスクランブル交差点や古い建物が密集している路地、ホテル街などに対して、自分たちが思っていることとは違う評価が多いんです。ネガティブにとらえていたことが実は強みになることも多いように思います。

佐藤 :音楽をツールとして、渋谷を国内外にアピールするにあたっても、そうしたさまざまな魅力は渋谷ならではの強みになりますね。

長谷部:そうですね。僕としては、渋谷はクリエイティブシティだと思っています。常に何かが行われている、常に情報を発信している街。モラルやルールを守ることが前提ですが、何かをしたい人がしたいことをできる街。渋谷をそんな街にしたいですね。渋谷ズンチャカ!では、それが実現できたように思います。

佐藤 :実現できたのは、渋谷には世代を超えて愛される要素があるからこそだと思います。かつて音楽シーンを盛り上げた〝竹の子族〞〝シブヤ系〞世代の若者には、自分たちが文化を引っ張っていく、この街をつくっていくという気概がありました。渋谷ズンチャカ!がその想いを受け継ぐ人たちの受け皿になればいいと思っています。

長谷部:渋谷ズンチャカ!には、どんどん進化して、どんどん大きくなってほしいですね。変化を重ねて進化を続ける。それが渋谷の街のいいところでもありますから。

佐藤 :文化を創成・発信するイベントとして、文化庁が打ち出した文化プログラムに手を挙げることも視野に入れています。欧米では、エリアマネジメントにおいて、ハード面をデザインする建築家と同様に、ソフト面をデザインするクリエイターがいますが、日本ではまだ一般的ではありません。そのために街発信の文化が生まれにくいのだと思います。

長谷部:いまの話を聞いて、街の課題をクリエイティブに解決するという北欧の街の取り組みを思い出しました。ごみがいつも散乱しているごみ箱にセンサーをつけて、ごみを捨てたら面白い音が鳴るようにしたり、市民の運動不足を解消するために、階段を踏むと音楽が流れるようにしたり。粋だし、洒落ていますよね。その発想を渋谷ズンチャカ!をはじめ、渋谷の街に取り入れられたらいいですね。

佐藤 :日本初の音楽によるエリアマネジメントによって、渋谷の魅力を底上げするということですね。渋谷区の場合は、渋谷ズンチャカ!によって、すでにそのスタートを切っていると思います。

長谷部:音楽によるエリアマネジメント、つまり音楽があふれる街というのは、通りのスピーカーから常に音楽が流れているという街という意味ではなくて、日常の中に音楽が融け込む、音楽が寄り添う街ということなのだと思います。渋谷にはそうなり得る可能性があると信じています。