「企業の本業を通じた社会貢献」日本財団 町井則雄さんインタビュー

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「いまの日本の企業がすべきこと」

日本財団 町井則雄さんインタビュー

町井則雄氏
町井則雄氏日本財団 経営支援グループ
CSR企画推進チームリーダー
1968年生まれ。日本財団に入会。阪神・淡路大震災発生直後から被災地に入り、災害ボランティアの支援を担当。「日本財団公益コミュニティーサイト『CANPAN(カンパン)』」の企画・開発や、企業のCSR活動を一覧化したデータベースサイト「CANPANCSR プラス」の開発を行う。現在は企業が取り組むCSRをサポートするための業務を中心的に行っている。

日本の企業の原点は、明治維新にあり。今すべき「企業の原点回帰」とは?

おとまちプロジェクトも参加した、企業による"社会課題を解決する取り組み"を紹介した展覧会「未来を変えるデザイン展 -business with social innovation in 2030-」。今回おとまちでは、同展を主催した、日本財団 経営支援グループCSR企画推進チームリーダーの町井則雄さんにインタビューを敢行。町井さんや日本財団の活動のご紹介、いま日本の企業がすべきこと、そしておとまちについてお話を伺いました。
日本財団はどういった活動をされている団体なのでしょうか?
大きく2つあります。まずNPOや社会福祉法人、ボランティアへの資金的支援です。過去50年間で、約5万事業に対して支援を行ってきました。これがメイン業務です。

次に「協働」への取り組みです。環境問題に象徴されるのですが、これまで政府や当該のセクターが担ってきた社会課題の解決が、そのセクターだけでは解決できなくなって深刻化してきています。そこで、他のセクターの方々といっしょに課題解決のために事業を起こさないといけない。それが今進めている「協働」です。

産民学連携の重要性が叫ばれながらも、なかなか実現しないという現実がありました。そこでどこがハブになりやすいのか考えたときに「我々日本財団のような、どこのセクターからも中立な組織が、ハブとなれるのではないか」と、ここ10年取り組んできています。
「お金を出すのでこういうことをやっていきましょう」という提案などもされてきたのでしょうか?
はい。以前は法律で定められた業務があり、その中では基本的に申請を受け付けたものにしか支援できませんでした。しかし我々としては、課題解決のためにNPOとうに自ら働きかけていきたい。そのためには申請されたものだけに対応していても難しいので、我々が自発的に事業を作っていく活動も行なっています。
これからの社会における企業のあり方について、企業はどんな価値を提示していくべきだとお考えでしょうか?
企業が今やらなくてはいけないのは原点回帰だと思います。明治維新以降の、そもそもの日本の企業の成り立ちや、その役割をひもといていくと、日本には "海外の列強に植民地化されないために、先進国にならないといけない"という大きな課題がありました。アメリカから銀行、フランスから法制度、ドイツから電気などの近代国家として必要な要素を持ってきて、それらをすべて会社化したんです。それらが今はメガバンクになっていたり、NTTになっていたりします。いま広く知られている有名企業も、元々は社会課題を解決するために作られた会社としてスタートした企業が数多くあります。

しかし日本をはじめ世界中の先進国は、恵まれた国になりすぎて、無理やりニーズを作り出して大量消費させないと経済を回せないという状況に陥ってしまった。
もはや価値観の変化がないと、この社会は持続可能ではありません。だからこそ今ここで原点回帰しないといけない。今はそういう時期だと思います。

音楽やエンターテインメントが持つ新たな可能性、そしておとまちに期待すること

日本財団 経営支援グループCSR企画推進チームリーダーの町井則雄さんへのインタビュー後篇。町井さんとおとまちとの出会いや、新たな市場を創出することについて、そして町井さんが考えるおとまちがこれから目指していくべきものについてお話を伺いました。
町井さんがおとまちを知ったきっかけをお聞かせください。
我々日本財団は、2年前に東京ミッドタウンのデザインハブで「世界を変えるデザイン展」という、世界の貧困層の課題を解決するプロダクトを集めた展覧会を行いました。イベント自体は多くの注目を集めて成功したのですが、自分の中に大きな課題が残りました。というのも、世界中の企業からの出展があったにも関わらず、日本の企業はわずか2社しか出せなかったんです。その2社もまだBoP事業と呼べる内容ではありませんでした。日本が世界に誇るグローバル企業は1社も展示できなかったということが、日本企業の世界における役割を考えた時に非常に悔しかったのです。

そんな悔しさもあり、次の「未来を変えるデザイン展」では"日本の企業"にある程度絞って、日本の企業がやろうとしている社会課題の解決を社会に正しく理解してもらうための企画展にしようと思いました。そこで我々がリサーチした日本の企業の紹介したいプロジェクトの一つが「ヤマハ音楽の街づくりプロジェクト」でした。
町井さんはおとまちについて、これがビジネスになるという手応えを感じられたのでしょうか?
僕らもまだ明確な答えを持っているわけではないのですが、たとえば、どこの国にもある"郵政省"。なぜ郵政省が存在するのか私たちは普段意識しません。しかし、A地点からB地点まで手紙という"情報"や"物"が安価な金額で届けられるというのは、近代国家の条件のひとつなんです。つまり国の施策としてやらなくてはいけなかったことなのです。

しかし時代が進んでインフラが整備されてきたときに、「これはビジネスになる」と思った企業が現れ、国や制度と戦ってビジネスにしました。具体的にはヤマト運輸なんかがそうですね。元々は税金で行われていた公共事業が新しいビジネスになった瞬間です。

イノベーションには、こういったドラスティックな考え方が必要です。それは"マーケットをつくる"ということとニアリーイコールだと私たちは考えています。

ヤマハは楽器を作るメーカーとしての色を強く持っていますが、30年後にはもしかしたら街づくりの会社として認識されているかもしれない。たとえばアップルも昔はニッチなパソコンメーカーでしたが、今は違う。アイポッドやiPhoneによって消費者の行動様式を変えるまでにいたりました。そもそも創業者のスティーブ・ジョブズは、アップルを単なるPCメーカーだとは思っていなかった。私はおとまちというプロジェクトについてはそのようなポテンシャルを感じています。なぜなら、街づくりにはたくさんの課題があるからです。そして音楽やエンターテインメントは祖父母から孫まで3世代がつながることができる、優れたコミュニケーションツールです。そして今の若い世代は特に、イベントなどデジタル化できないリアルな「場」を強く求めています。
おとまちがこれから目指していくべきものはなんだと思われますか?
プロジェクトとして進化させていく過程で重要なのはやはりマネタイズだと思います。単なる企業の社会貢献ではなく、本業を通じた社会貢献であるべきです。単に寄付をするだけというのも一時的には良いのですが、それは持続可能ではありません。
音楽というツールを通した社会課題解決のケースを作っていただきたいです。確実にエンターテインメントという分野はこれからも伸びると思います。なぜなら社会課題の解決につながる可能性を秘めているからです。いまはまだ業界全体が商業主義的なところから抜けられていませんが、徐々にシフトしていくと思います。ですので、コストとしてではなく投資として捉え、新しいことに挑戦していってほしいです。築き上げたネットワークと、培った経験、そして磨いたブランドの3つはそう簡単に盗めません。だから必ず最初にやることには大きなメリットがあるんです。

まだ我々が気づいていないだけで、テレビという通信に広告を組み合わせて巨大なマーケットを作り上げたようなことが、街づくりでも絶対にできるはず。突き抜けることができるはずなんです。
ボイス
大きくなった企業では、成功体験の中で仕事をするのがどうしても楽なのですが、今こそ「社会課題を解決する」という原点に立ち返らないと新しい事業は起こらない、という実感が私にもあります。大変なことではありますが、最近は企業のトップの方々や、若い方々の意識は強くなっているようにも思いますし、おとまちも特に若い方からの問い合わせが増えており、非常にやりがいを感じています。
おとまち/佐藤雅樹
おとまち/佐藤雅樹
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