大阪桐蔭高校吹奏楽部
大阪桐蔭高校 吹奏楽部
2005年の創部以来、「全日本吹奏楽コンクール」「全日本マーチングコンテスト」「日本管楽合奏コンテスト」など全国レベルの大会で毎年優秀な成績をおさめ日本の吹奏楽ファンにその名を広く知られるバンドの一つ。年間80回以上の外部公演や各種メディアへの出演など意欲的な活動を行っており、近年はYouTubeへの投稿にも力を入れている。2020年7月に投稿した動画は、約760万回再生を記録、同年に投稿された吹奏楽演奏動画の中で最多の再生回数を獲得している。(2021年11月25日現在)

練習がつらいのではなく、思うように演奏できないことがつらい
- ――普段どれくらい練習しているか教えてください。
- ● コロナ禍の前は、平日は授業が終わってから3~4時間、土曜日は午後から、日曜日は朝からずっと練習していました。コロナ禍になってからは、練習時間が短縮され、全員一緒ではなく、チームに分かれて合奏したりしています。
- ――練習は厳しいですか?
- ● 練習内容やスケジュールが厳しいときはしんどいですが、音楽が好きなので苦にならないです。大阪桐蔭高校の吹奏楽部は、部員たちで考えて練習を組んだりでき、生徒の自主性に任されている部分が大きいです。部員の仲もすごく良いので、練習は楽しいです。
- ――くじけそうになることはありますか?
- ● 技術的に難しかったり、テンポが速くなったりすると、できないことが出てきてくじけそうになります。そういうときは、できるまで何度も繰り返し練習します。
また、自分がイメージする理想の音が出せないとき、思うように演奏できないときも同様です。周りと音が合わないときは逃げ出したくなります。練習で少し音がズレたりすると、もっとがんばらなきゃと思います。やっぱり、楽器の演奏はこつこつ練習することで上手くなるものだと思います。
- ――くじけそうになっても、がんばって練習できるのはなぜですか?
- ● 本番で演奏を披露して、お客さまから拍手をいただく達成感のためです。うまく演奏できて聴いてくださる人が喜んでくれて、たくさんの拍手をいただくと、がんばってよかったなという気持ちになります。

コロナ禍で演奏を披露する場が激減……だからこそ、皆で合奏できる喜びを実感
- ――コロナ禍で大変だったことはありますか?
- ● コロナ禍で演奏会ができなかったり、大会も減ったりして、練習する目標を見失いそうになりました。自粛期間に自宅で練習するとき、周りが住宅街で大きな音を出せず、思うように練習できなかったのもつらかったです。吹奏楽は個々のソロもありますが、全員で音を合わせるものなので、グループや個別で練習すると、全員で合わせたときにズレができてしまうのもしんどいなと思いました。
● 練習時間が限られたことです。緊急事態宣言で学校が休みになったとき、自宅で、一人で練習しなければならないときはモチベーションが下がって大変でした。はやく皆で合奏したいと思いました。
- ――全員で合奏して、音が合った瞬間は嬉しいですよね。
- ● コロナ禍で合奏の人数が制限されたので、体育館などの大きい場所で、全員で合奏できたときはやっぱり楽しいなと思いました。大阪桐蔭高校の吹奏楽部は大所帯で、皆で音を合わせるのが難しいので、パッと合ったときは快感で、気持ちがいいです。
- ――コロナ禍において、音楽はどんな存在でしたか?
- ● 演奏会ができず、披露する場も持てませんでしたが、自分たちで音楽をつくり上げていく時間はいつも以上に持てたと思います。改めて音楽は偉大で、大切なものだと感じ、自分たちでよりよい音楽をつくっていこうという意識が高まりました。また、先生方が YouTubeに演奏動画を上げるという活動の場をつくってくださったので、コロナ禍ならではの音楽の楽しさもあったと思います。

仲間を思い、助け合い、力を合わせることが吹奏楽の醍醐味
- ――やはり、大会の前は緊張しますか?
- ● 私は緊張しやすいので、2週間くらい前から、本番を想像しただけで気分が悪くなるほどです。吹奏楽は一人が少しでも違うことを吹くと全員に影響するので、その場合は自分も悔しいし、皆にも迷惑をかけてしまうことがいちばん嫌です。
● ときどき先生から部員を指導する機会をもらっているのですが、全体の仕上がりを見て、これで本番に間に合うのかという緊張感を持ったとき、指揮棒を持つ手が震えることがあります。本番前に皆が緊張しているときは、普段よりちょっと明るく、元気に、声かけするようにしています。私の武器は明るさなので、部員の緊張はできるだけ和らげてあげたいなと思います。
- ――緊張をどうやって乗り越えますか?
- ● 練習のときから本番を想定して、100%の力を出すようにしています。皆の前で演奏して、緊張する場をつくったりもします。あと、練習でうまく吹けないところは本番で成功するはずがないので、完璧に吹けるまで練習します。
また、友だち、仲間に相談することを大切にしています。自分は一人ではなく、皆で助け合っているんだと実感できると乗り越えられると思います。
- ――大阪桐蔭高校の吹奏楽部は高校野球の応援でも知られていますが、音楽で人を力づけていると実感することはありますか?
- ● 音楽で野球部の力になれるのはもちろん、スタンドにいる人たち全員で応援しようという空気をつくれるのはすごいことだと思います。音楽は皆で楽しめて、笑顔になれるもので、人と人とを結びつけてひとつにする力があると思います。
また、野球部の子たちと交流すると、吹奏楽部に応援してもらえると嬉しいという声をたくさんもらうので、応援の力は大きいのだなと思います。私たちも嬉しいですし、やりがいを感じます。

やればやるほど発見があり、楽しさが広がるのが音楽
- ――音楽をはじめたきっかけを教えてください。
- ● 小学生のとき日野皓正さんのコンサートを見て衝撃を受け、中学校で吹奏楽部に入ることを決意しました。ただ、トランペットは吹奏楽の花形の楽器で人気だったので、トロンボーン担当になりました。以来、6年間続けています。ずっと音楽は聴くためにあるものだと思っていましたが、演奏する側に回ってみるとさまざまな発見があり、音楽を通して多くの人と交流できることが嬉しいです。
● 中学校に入って吹奏楽部を見学して、トロンボーンが格好いいなと思って入部しました。もともと音楽にそれほど興味はなく、「スライドの動きが格好いいな」と形から入ったのですが、追求していくと、メロディーを力強く吹けたり、ハーモニーをきれいに鳴らせたり、素敵な音楽をつくれる楽器です。いつも「こんなふうに音楽をつくるんだ」という新しい発見があります。」
- ――音楽をやめたいと思ったことはありますか?
- ● うまく吹けないところがあったり、コロナ禍で練習の機会が減ったりしたときは、やめたいと思ったこともあります。でも、音楽がなければ今の自分はなかったと思うし、コロナ禍で不安になっている人、傷ついている人に自分たちは音楽を届ける力があることに気づいたので、やりたい気持ちのほうが大きいです。
● つらくても、音楽をやめたいと思ったことはないです。大阪桐蔭高校の吹奏楽部にいると、自分の成長を感じられる場面が多々あり、そのたびに、自分はここにいて良かったんだと感じます。
- ――今まで生きてきて、最高だった瞬間はありますか?
- ● 演奏会で大勢の方から拍手をいただいたときと、部員の皆と練習していて笑顔になれたときです。
● 実は、まだないです。大会や演奏会のステージから見る客席の景色が自分にとって大きな意味を持つので、もっと充実した景色が見たいなと思います。お客さま全員が心の底から笑顔になり、スタンディングオベーションしてくれる景色を見てみたいです。
● 2020年の定期演奏会の最後の曲が『銀河鉄道999』でしたが、部員皆でペンライトを振り、お客さまもスマホや携帯のライトを振り、会場が一体になれたことが自分にとっての最高の瞬間でした。
- ――反対に、いちばんつらかったことはなんですか?
- ● コロナ禍で本番も減り、大会もなくなり無観客になってしまったことです。本来ならば、お客さまがたくさん入ったホールで演奏するのが醍醐味で、私たちもお客さまに音楽を届けたいという気持ちが強いので、多くの方に演奏を聴いてもらう機会が減ったことが一番つらかったです。
● うまく演奏できなかったときです。難しいパートで、思い通りに吹けなかったときはすごくつらかったです。
全ての人を勇気づけ、笑顔にし、幸せな気分にする音楽の力
- ――この世に音楽がなかったら、どういう人生を送っていたと思いますか?
- ● 大阪桐蔭高校の吹奏楽部に入ることもなく、全く違う人生を歩んでいたと思います。普段の生活から音楽がなくなったら、街にも音楽がなく誰かと音楽を共有することもできないので、すごく暗い世界になると思います。
- ――音楽以外にやりたいことはありますか?
- ● 音楽以外にやりたいことはないです。いつも音楽のことばかり考えています。私は、音楽を演奏する側にも聴く側にも回れているので、音楽の楽しさを知っていると自負しています。音楽の楽しさにどっぷり浸かっています。
- ――この先、思い描く未来はどんなものですか?
- ● 数えきれないほどの演奏会を、仲間と一緒にやるのが夢です。夢が現実になったらいいなと思います。
- ――「音楽の力」とはなんでしょう。感じることはありますか?
- ● 人を元気づけたり、笑顔にしたり、感動させたり、音楽にはほかのものにはない大きな力があると思います。音楽に興味のない人でも、流れてくる音楽に笑顔になったり、楽しい気分になったりするので、音楽には全ての人を幸せにする力があると思います。
● いつも音楽の力を感じています。音楽は、色々な人と人をつなぎ、演奏する側も楽しめる最強のツールだと思います。
● 音楽の力とは、たくさんの人を勇気づけることだと思います。私も、そのために音楽を届けていきたいです。
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