【Z BLOG】三木 俊雄:ハノン(その3)

前回提示した「合理的と思われる」運指の条件の1つとして、4を含む回転はそのスペースを確保するために4を必ず黒鍵としている。すなわち白鍵同士の回転を可能な限り避けており、この「可能な限り」とはすべての鍵盤が白鍵であるキーCのことである。それ以外のキーはいずれも黒鍵を含んでいるので白鍵同士の回転は不利と考えている。

前回のブログ:ハノン(その2)

しかしB♭-C, B-C♯, E♭-F, E-F♯ の4ヶ所は黒鍵を含むことで立体的なスペースを確保できる反面、水平方向の距離は白鍵の連続より遠くなるという欠点を持つ。
これをどう評価するのか、ハノンでは左手に限りキーGとDでこの白鍵の連続を有利としているようで、1-4の回転をいずれもD-Eに、黒鍵F♯は3に割り当てられている。確かに中指(3)は一番長い指なのでそこをF♯とし、その前後の白鍵E,Gを2,4に割り当てるのは合理的で、それが現れるのはキーGとDである。
しかしそうであるならば同じことが右手でも起こっても良さそうなものだ。左右の運指の対称性で見れば、キーGの左手の運指はキーFの右手のそれと同一であり、同様にキーDの左手はB♭の右手のはずであるが、そうはなっていない。

また、ハノンによる左手のキーFは唯一の黒鍵であるB♭を2に割り当てており、白鍵の連続はF-Gで1-4。僕の合理的と考える1-4に割り当てられるA-B♭はスペースも確保できる上に距離としても最短だ。こちらの方に軍配が上がると思うのだがどうだろうか。

とまぁ、こんなことばかり考えて肝心の練習の方は全然進まない。これに限らず、僕は理屈の理解出来ないことはなかなか覚えられない性分で、例えばアレンジに欠かせない Low Interval Limit (それぞれの音程はどこまで低く使用可能か)も未だに完全には覚えていない。理論的な疑問点があるからだ。しかしこれも結局は理論的な絶対値ではなく、経験則によるものなので場合によって多少の変動はある。おそらくハノンによる運指も経験則から生まれたのであろう。

しかしこの最も初歩的で基本的なスケールの運指において、僕のような仮説を唱えた人はおそらく過去に多数いただろうと想像する。
何人かピアニストにその疑問を投げかけてみるも、一様に「子供の頃に覚えたので、その合理性や法則性について考えたこともない」という答えばかりが返ってくる。中には「お前は本当にそういうの好きだね」と呆れる者もいる。
四の五の言わずに黙ってやれ、というのは十分理解できるつもりだが、この問いに明快に答えてくれる人はいないものだろうか。

【Z BLOG】三木 俊雄:ハノン(その2)

ピアノの運指について、前回の続き。
前回のブログ:ハノン

ピアノの鍵盤というのはシンプルにデザインされていて実に美しい。
隙間なく敷き詰められた白鍵と、その奥に2と3のグループが島のように浮き上がる黒鍵。そしてこの配列はすべての音域で同じである。これがサックスなどの管楽器とは異なる。つまりこの1オクターブの「地図」さえ手に入れれば世界中どこでも行けるようなものだ。
そしてよく観察するとこの鍵盤配置は人間の指の仕組みをよく考えて作られているのが分かる。

すなわち人間の指は人差し指(2)、中指(3)、薬指(4)、小指(5)の4本が手のひらの上部に付いており、そのうち小指だけがやや短い。
一方、親指(1)はこれらと違い、手のひらの下部に付いていて他のどの指より短い。
よって鍵盤に手を置いたとき親指は白鍵に割り当てられ、黒鍵を弾くのには不向きであることがわかる。
1以外の指は白鍵、黒鍵どちらにも割り当てられるが、通常5が使用されることはない。
なぜなら7音のスケールに対して指は5本しかないので当然どこかで指のポジションを替えなければならず、1が他の指の下をくぐり、あるいは他の指が1の上をまたぐ場合、5からは遠すぎるからだ。
この指くぐり、指またぎの合理的な選択こそがピアノ特有のロジックであり、これらを「回転」と呼ぶことにする。

1オクターブ7音で構成されるスケールの運指は上行の場合1-2-3-1-2-3-4-…の循環となり、下行はその逆となる。1,2,3は2回づつ使うが4は1回しか使わず、その4は必ず回転をともなう。
この際、指をまたぐ、あるいはくぐるためのスペースとして立体的な高低差がある方が有利なので、3,4、特に1との距離がある4は可能な限り黒鍵が望ましいと考えられる。

次に左右の運指だが、人間の手は1が内側、5が外側という対称性がある。その対称性を鍵盤に当てはめると、例えばキーE♭の右手の運指はキーAの左手の運指と同じになるように、左右の運指はそれぞれ調合に付く♯と♭が同数のキーが対応する。

これらの条件を総合すれば
4に割り当てられる黒鍵は♭系のキーで右手はその調号の最初に付く♭であるB♭、左手は最後に付く♭、また♯系のキーで左手は最初に付くF♯、右手は最後に付く♯となる。
キーCは白鍵だけなのでどこでも良い。
これはハノンの教える運指と右手は同じであるが左手は少し違う。具体的にはF,G,Dのキーにおいてハノンでは1-4の回転が白鍵の連続になっている。
これはどういうことなのだろう?

次回に続く。

【Z BLOG】三木 俊雄:ハノン

最近はまた遅々として進まぬピアノを練習している。

ピアノとサックスの演奏における構造上の大きな違いは3つあり、ピアノを弾くにあたっての困難さもこの3つの要素に起因する。
1つ目はもちろんサックスが単音しか出せないのに対し、ピアノは和音が出せること。
2つ目はピアノは左右両手を同時に操作する。これはサックスもそうだと思うかもしれないが、実はほとんどの場合、右手なら右手、左手なら左手を動かしているときもう片方の手は動かしていない。
そして3つ目は運指。ピアノは10本の指でそれよりはるかに多い数の鍵盤を操作するので指またぎや指くぐりによる運指の連続性が必要。サックスのキーはわずかな例外を除いてキーと指が一対一の対応をしているので運指で迷うことはあまりない。

今まで最初の2つは必要に迫られて練習し、それなりに弾けるようにはなったが3つ目の運指はやろうやろうと思いながらずっと放置していた。こういうことは特に年を取ると実に多いもので、気が付けば10年くらいすぐ経ってしまう。
たとえばパソコンのキーボードのタッチタイピングは未だに出来ない。
「ちゃんやれば一週間で出来るようになりますよ」というような話をよく聞くのだが、これがまったく出来ないままもう20年も経ってしまった。
パソコンのキーボードは小さな突起のついたキーに人差し指を置く「ホームポジション」を基準に、合理的な配列がされているという。
さて、ピアノはどうだろう。この白鍵と黒鍵の配列に疑問を呈する人は結構いたようで、より合理的な配列の鍵盤や、そのためのアタッチメントなどが考案された。しかしそれらはいずれも一般的とは言えず、やはり現行の構造と配列が普及し続けているのはそれなりの理由があるのだろう。

このピアノにおける合理的な運指というのは実に興味深い「数学的命題」である。もちろん、人それぞれ手の大きさが違うので各自のやり方にある程度の独自性があり、音列によっては「もっと良い運指を見つけた」というような話も聞く。
しかし最も基本的なメジャースケールにおいては、いわゆる「ハノン」に記されている運指が一般的である。
僕も何度かトライしてみたのだが、どうしてこの運指になるのか疑問な点が数カ所あり、それが気になってなかなか覚えられない。

今回はこのメジャースケールにおける両手の運指、そのロジックとメカニズムをピアニストでない立場から考えてみよう思う。

【Z BLOG】三木 俊雄:Play by heart

僕と一緒にTail Wind というバンドをやっているギタリストの鈴木よしひさ氏が、某巨大匿名掲示板で叩かれているというので見にいった。
まぁ例のごとく、「便所の落書き」と言われる口の悪い書き込みが続くのだが、彼の話題の後にライブにおいて譜面を見ることの是非についての議論があり、なかなか興味深く読んだ。

リハーサルじゃあるまいし、譜面を見ながら演奏するのはプロとしての意識に欠ける、という意見と、演奏のクオリティーは譜面の有無とは無関係である、という意見があるようだ。

どちらの主張も一理あると思う。

おそらくジャズという音楽がある種の尊敬を集めている理由の一つに「譜面に書かれていない音を演奏している」というのがあるだろう。
つまりそれは単なる譜面という音楽的情報の再生ではなく、そこに常人には成し得ない創造性があると。

「暗譜」のことを英語で “Play by heart” と言うが、「暗譜」で演奏することはそれにより近い状態であるように見える。つまり譜面を読んでいるうちは音楽の核心には近づけていない、ということなのだろう。

しかし実際には譜面は音楽的情報の記憶媒体であり、それを外部に持つか内部に持つかの違いにすぎないことが多い。つまり暗譜したからといって、それが魂から湧き出て来た訳ではない。それを思い出して演奏しているのだ。
特にジャズという音楽において、譜面の情報は音楽をするためのほんの一部であり、その情報を元に譜面に書かれていないより複雑なプロセスを行なう。なので簡単なものであれば覚えてしまった方が良いが、複雑なものであればそれを外部媒体とした方が頭のキャパシティーを確保する上で有利な場合が多い。
実際、演奏の精度は譜面を読みながらの方が上がるだろう。レコーディングではもちろん譜面を見る。

しかし、ことライブパフォーマンスではどうだろう?
パット・メセニー・グループが譜面を読みながら演奏していたらどうだろう。いや、彼らもCD発売前の小さなギグでは譜面を読みながらやっていた。
しかし、やはり譜面台を立てずに演奏するというのはとても見栄えの良いものだ。演者の目線が譜面に行っていないという点で、お客さんも自分が大切にされているように感じるだろうし、あらゆる意味でプロ意識の高さを感じるだろう。大学の実技試験でも譜面を読みながらの演奏は許されない。

「譜面を見ながらの演奏はプレーヤーの怠慢。そんなだからいつまでたってもジャズファンが増えないのだ」という指摘は確かに一定の説得力を持つ。耳が痛い。

とりあえず “Tail Wind”から始めてみますか?ねえ鈴木さん!

【Z BLOG】三木 俊雄:ヴィンテージ

よく「アナログレコードはデジタルCDより音が良い」「真空管のアンプはトランジスタのそれより暖かい」という話を聞く。
しかし、なぜか「真空管とブラウン管のテレビの方が今のハイビジョンより画質が良い」という話は一向に聞かない。考えてみれば不思議なものだ。

本来の意味であるワインに限らず、ウイスキーや日本酒などの酒類、あるいは「昔ながらの仕事を頑なに守る」寿司、そしてオーディオや楽器などにも見られるいわゆる「ヴィンテージ信仰」
これらは数値的には測れない、あるいは測れたとしても数値的でない別のパラメータを持つため「分かる人には分かる」という選別があり、それが自分は「分かる人」でありたいという心理を巧みについている。
そのためか、全体としてびっくりする程の値段であり、またその値段があってこそ人々はそれに価値を見出す、という意味では一種の「信者ビジネス」だ。

昔の技術による機材なりメディアがその時代のノスタルジーを呼び起こすのは理解出来るが、忘れてならないのは、アナログレコードも真空管もその時代の「最先端技術」だということ。
当時の開発者はなにも「昔ながらの温かい音」を作ろうとしていたのではない。

では、これだけ技術の進歩したはずの現代になぜ当時以上のもの、いや、せめて同じものができないのか?
これに対してよく言われるのが、「昔は職人の技術が高かった」「高価で良質な素材を使っていた」「生産性、収益性よりモノづくりへの情熱が上回っていた」「環境問題のため、使えなくなった素材がある」などだ。しかしながら、最後のものを除いて、これらはあまり説得力を持っているとは言えない。
かつての銘器と言われたものもその時代の経済性を追求する中で生まれたものであり、昔も今も趣味や道楽でモノを作っているのではないのだ。

しかし、ではなぜ今もなおこの様な「昔は良かった」という主張がアマチュアはともかく、その道のプロからも聞かれるのだろうか。
おそらく答えは単純なものだろう。つまり、それは「良い悪い」ではなく、「好き嫌い」なのだ。
いわゆるジャズ全盛期の録音はとても原音に忠実とは言えないとしても、それも含めて「好き」なのだ。

ではなぜその「好きな音」の出すことのできるモノを作らないのだろうか?
おそらくこれも答えは簡単で、「売れない」からだろう。
つまり、ヴィンテージだ何だと言っているのは全体からみれば実はごく少数の好事家で、そういう人々はどっちみち現行品には納得しないのだからそこはヴィンテージ市場に任せていれば良い。
趣味の世界はそれぞれの花園であり、その花園はそっとしておかなければならないのだ。

【Z BLOG】中山 浩佑:「レコーディング」

みなさん、いつもブログをご覧いただきありがとうございますー!!
突然ですがこのブログを見てくださってる方々はどんな音楽を普段聴いてらっしゃるのでしょうか?

今日は僕が関わってる録音や作品を公開された物を少しご紹介致します!!

まずはこちら!
少し前にエリックさんがリードトランペットで録音現場に呼んでいただき、録音に参加して来ました!!
「快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー」
http://www.tv-asahi.co.jp/lvsp/

こちらのBGMで参加しています。
是非音楽にも注目して見てくださいね!!

そして以前紹介した、BCMCのShadowにMVが完成しました!
こちらまたアルタビジョンで放送されているので是非見かけたら写メしてください!
ブラスアレンジ、演奏、出演しています。
https://youtu.be/FMdpXkKbXL0

次のBCMCの楽曲制作も始まっていますが、とても熱い内容になっています!!
公開を楽しみにしていてください!!

録音の様子がリーダーのネルソンくんのyoutubeで公開されています。
https://youtu.be/70f1Kar1oxg

そして三月にリーダーライブをします。
ライブタイトルにある「Live the Life you Love」。
今日はこれの紹介をしたいと思います。
三月は僕の誕生日です。
早くも33歳という年齢になってしまい、時の流れの早さに驚いていますが、この「Live the Life you Love」。
訳すと「自分の愛する人生を生きろ」というタイトルになっています。

これはボブマーリーの名言ですが、今のこの情報の多い世の中でとても大切な事なんじゃないかと思っています。
そして自分の節目に大好きなメンバー、スタッフ、また尊敬する人たちと自分の信じる愛する音楽を表現したいと思ってこのタイトルにしました。

是非ライブに応援しに来てください!

2018/03/30(金)
K’s Factory 2nd Live!!
「Live the Life you Love」
@目黒ブルースアレイジャパン
OPEN 18:00 START 19:30
料金:前売券 テーブル席(指定)¥4,500
Dinner Set(Mini Dinner・1Drink付/MC・SC込)¥11,500
当日券は各料金¥500UP(各税込)

ご予約はこちらから
http://www.bluesalley.co.jp/i/02live_02.html?id=Schedule-20180129175149

お電話でも受付中。
0354964381

出演メンバー
中山浩佑 Tp
山口宗真 Sax
榎本裕介 Tb
SUNAO Gt
森丘ヒロキ Pf
野崎森男 Bs
松尾啓史 Dr

– スペシャルゲスト –
Kona Rose Jackson Vo.

【Z BLOG】中山 浩佑:「新年会&ライブ情報」

みなさんこんにちは!
寒い日が続きますがいかがお過ごしでしょうか?
一月は雪が降ってめちゃ寒かったですね!

さて、そんな寒い中、トランペッターが大集合してトランペット新年会を行なって参りました!!
すっごいメンツです!!

もう名前書かなくても見たらわかるクラスの巨匠達と新年を楽しく迎えさせて頂きました!!
みなさんいい感じでトランペットークに華が咲いて、とても幸せな時間でしたよ!

最近は大きな編成の仕事も少なく、こうして沢山の先輩達とご一緒出来ることもなかなか無いので嬉しい会でした!!

そして、昨年とある事情で病院にお世話になった時期があったのですが(整形とかではない)、その時の某病院の某部長様がトランペッターで(!!!)僕のライブにも遊びに来てくださってた事があり、まさかの出逢いで仲良くして頂き、お医者さん(もちろん整形外科ではない)新年会も行なって来ました!!
とてもお世話になりました!!トランペットが大好きなのが伝わってくる本当に心地よい時間でした!
こうして元気にお酒が飲めるのも有難いですね!

歳が離れていてもこうして繋がれる。
音楽って、楽器って本当に素敵だなぁと改めて思う時間でした!!

そして!!
3/30(金)にまた僕のリーダープロジェクト。
「K’s Factory」のライブが豪華メンバーで行われます。
場所は前回と同じく目黒BluesAlley Japan。
OPEN 18:00 START 19:30。

料金:前売券 テーブル席(指定)¥4,500
Dinner Set(Mini Dinner・1Drink付/MC・SC込)¥11,500
当日券は各料金¥500UP(各税込)

です!
前回大好評頂き、チケットも数日前にSold Out致しました!!
またシークレットゲストもあるかも?!

ご予約も始まってます!

ご予約はこちら
http://www.bluesalley.co.jp/i/02live_02.html?id=Schedule-20180129175149

お電話でも受付中。
0354964381

ライブ詳細
2018/03/30(金)
K’s Factory 2nd Live!!
「Live the Life you Love」
@目黒ブルースアレイジャパン
OPEN 18:00 START 19:30
料金:前売券 テーブル席(指定)¥4,500
Dinner Set(Mini Dinner・1Drink付/MC・SC込)¥11,500
当日券は各料金¥500UP(各税込)

ご予約はこちらから
http://www.bluesalley.co.jp/i/02live_02.html?id=Schedule-20180129175149

出演メンバー
中山浩佑 Tp
山口宗真 Sax
榎本裕介 Tb
SUNAO Gt
森丘ヒロキ Pf
野崎森男 Bs
松尾啓史 Dr

– スペシャルゲスト –
Kona Rose Jackson Vo.

【Z BLOG】三木 俊雄:Saudade

ブラジル音楽のキーワードに「サウダージ Saudade」というのがある。
一般には「郷愁」と訳されているが、それは必ずしも故郷を懐かしむというだけではなく、過ぎ去ったものへの思慕など、一言では表せない多くの意味を含む。僕の自作曲のタイトルにもなっている。

僕がもう20年以上やっている10人編成のアンサンブル、フロントページ・オーケストラ。
南青山の老舗ジャズクラブ「ボディー&ソウル」をホームグラウンドに偶数月の最終木曜日に出演している。
今や日本を代表する素晴らしいメンバーによるアンサンブルとソロが至近距離の生音で浴びることが出来る、ということで毎回満員御礼、実に有難いことです。

「今や日本を代表する」と言ったものの、22年前に始めた頃は皆、殆ど無名の若者ばかりだった。
因みに最初のメンバーは以下の通り。

奥村晶 tp
岡崎好朗 tp
中路英明 the
山岡潤 euph
池田篤 as
ボブ・ケンモツ ts
石井彰 p
杉本智和 b
高橋徹 de

まぁ今こうやって観ると、確かに凄いメンバーだ。当然皆すぐに忙しくなった。石井は日野さんのバンドに入ったし、杉本はプーさんこと故菊地雅章さんのバンドに。
中路はあの「オルケスタ・デラルス」がまさに世界的な人気を獲ようとしていた頃だ。
そしてその中路のトラ(代役)を勤めてくれたのが、誰あろう若き片岡雄三だった。

彼はその後レギュラーメンバーとしてバンドに欠かせない存在となった。
その彼も気がつけば今年50歳になるという。そして彼は50歳を機にソリストとしての活動に専念したい、とのことで昨年末、17年間にわたるフロントページ・オーケストラを卒業した。

しかしその感慨に浸る間も無く、次のトロンボーン奏者を何とかしなければならない。素晴らしいプレーヤーは当然ながら皆、忙しい。22年前にあれだけのメンバーが集められたのはひとえに彼らがまだ無名だったからだ。

大学の教え子である駒野逸美は何度か片岡雄三のトラとして参加してくれたことがある。
彼女は、圧倒的なパワーとテクニックを誇る片岡とはある意味正反対の「静かなる」プレーヤーだ。
しかし彼女はプロとして活動をはじめるや急激に忙しくなり過ぎ、その酷使と過労から一時期演奏の休止を余儀なくされたという経緯があり、過度な負担にならずにこのバンドに参加出来るか、ということを含めて打診してみた。

結果、彼女は素晴らしいプレーでメンバーと観客を魅了した。
客席には僕が教えている大学を今年卒業する学生、すなわち彼女の後輩達も聴きに来ていた。
彼らにとって僕は単に口うるさい先生だが、駒野は憧れの先輩だ。
うっとりとした眼差しをずっと彼女に注いでいた。

バンドはいつの間にか20年以上が経ち、大学で教えるのも今年で18年目になる。
たくさんの出会いがあり、別れがある。この季節は特にそれを感じる。
歓びと寂しさの同居する、これもひとつのサウダージだろう。

【Z BLOG】フジイ ヒロキ:「アレン・ヴィズッティは神だった」

前回記事の「ガキバラ」でも告知させていただいた、1月23日のZ EXPRESS BIG BAND(以下ZEBB)のライブは、トランペットのアレン・ヴィズッティ氏を迎えてのライブでした。

確か僕がまだ20歳くらいだったと思いますが、ジョセフ・アレッシ氏(ニューヨークフィル首席トロンボーン奏者)と二人で来日したデュオリサイタルを聴きに行った覚えがあります。

ピアノ伴奏のクラシックのコンサートだったし、当日はまだウディ・ハーマンとかチック・コリアもそれほどよく知らなかったので、アレン・ヴィズッティはクラシック奏者という認識だったように思います。

それがこうして18年の時を経て、ビッグバンドで共演させていただけるとは夢にも思いませんでした!

当日はこれまでのZEBBのライブ史上、最もお客様が入ったのではないかと思いますが、会場はプロアマ問わず、トランペット奏者、ヴィズッティマニアのような人たちで埋め尽くされていたように思いますね。中にはレコードジャケットをたくさん持ち込んで、最前列を陣取っている方もいらっしゃいました。

出演者というのは何ともVIPで、その中でもビッグバンドの2ndトロンボーンの席というのは、なかなかの特等席なんですよね。



これが僕の場所から見たヴィズッティ氏です。

時々観客になり、吹くのを忘れそうになります(笑)。

分析のようなことをするのは何ともおこがましいですが、あくまで個人的感想です。

ヴィズッティ氏は紳士的でもの静かでしたが、冷静さの中にも熱いものがあり、聴衆を魅了してしまう演奏でした。
テクニックもめちゃめちゃ凄いですが、ちゃんと音楽があると言いますか、、、

クラシックの良いところと、ジャズの良いところがミックスされ、そのバランスが絶妙で、まさにお手本のような金管楽器奏者ですね。
あんな風に吹けたら楽しいだろうな(笑)。

毎回のことですが、このようなワールドクラスの神々と共演するチャンスを作って下さっているヤマハさんに感謝です。

元々は2016年の楽器フェアのための1回限りのバンドの予定だったのですが、その後約3ヶ月ペースで年4回のライブを行うことができました。
来年度もぜひこの企画が続くことを祈っております!

ちなみに、以前のブログ「アメリカ旅行記 Las Vegas 編」(https://jp.yamaha.com/sp/blog/z_express/8795/)で紹介させていただいた、留学先のジャズ科のディレクターのDave Loab氏は、ヴィズッティ氏とイーストマン音楽学校時代の同級生だったそうです。

It’s a small world!!

【Z BLOG】三木 俊雄:音読と音楽

僕の教えている大学では、卒業にあたって論文か制作を選択できる。ほとんどの学生が制作を選択する。

学生の卒業制作に添付されたレジュメに以下のようなものがあったので抜粋してみる。

「最初のレッスンでは、クロマチックスケールを下から上まで吹いたり、メジャースケールの中で1-3 2-4 3-5 4-6というように3度の跳躍を2度ずつ上げていくものや、1-3 4-2 3-5 6-4 と同じ3度の形を下からと上からを交互に吹くという内容だった。
私はそこで二つの衝撃をうけた。一つは、大学でこんな基礎をやるのか!アドリブのとり方は教えてくれないのか。二つ目の衝撃は、私がこれをスムースにできないことだった。
今まではクラシックの曲やエチュードをさらってきた。こんなものより難しいことはたくさんやった。それなのにできない。
(中略)
今までは楽譜に書かれていた音名を信号として取り入れ、演奏してきた。音を組み立てて楽器を演奏するといったことをジャズ云々の前に改革する必要があった。
高校以前にやってきたことは音楽ではなく書いてあることをただただよむ「音読」であった。」

これは結構よくあること。
そしてそうならないようにエチュードの他にスケールを12キーで吹けるように、という課題は当然クラシックや吹奏楽でもやっている。もちろんこれはスケールの汎用性と互換性を身につけるためのもの。
しかしそれも例えば「円周率」を覚えるようにやってしまったり、というのを少なからず目にする。
その結果、極端な話「ドレミファソラシドは吹けますが、レミファソラシドレは吹けません」というようなことが起こる。
これは当の本人にとっても相当ショックなことのようだ。

技術的にも理論的にも音楽的にも極めて単純な物にもかかわらず、「今自分がどこにいるのか分からない」というような感覚になるようだ。
どんな歩き慣れた真っ直ぐの道であっても、そこを目を瞑って歩くとなると足がすくんで最初の一歩さえ中々出せない、ということは多くの吹奏楽出身者がジャズを始めるに当たって経験することだ。

読譜能力、とりわけ初見能力は譜面という外部からの視覚的命令を論理的なプロセスを飛び越して伝達させる神経回路を作ることだ。そして吹奏楽出身者の学生はこの回路の構築に長年を費やしてきた。
しかし今度はその「命令」を自らの内部に作らなければならない。そしてそれこそが音楽の核心に触れる醍醐味の一つだ。
その新たな回路の再構築ための時間として大学生活の4年間は決して長いものでは無いだろう。