【Z BLOG】三木 俊雄:ラッパ吹きに聞け その2

ラッパ吹きとは実に不思議なものである。
中にはあまりに高い音ばかりを吹き過ぎてネジが一本飛んでしまったのではないかと思うような人もいる。
またその一方で、そのネジがなるべく飛ばないように細心の注意している者もいる。



例えば家でパート譜を曲順に並べているときに見つけたりするのだが、僕が書いたラインをカッコで閉じている事がある。
これはどういうことだろう、とリハーサルで注意深く聴いていると果たしてそこで聴こえるはずの音が聴こえてこない。
つまり、これは一つのラインを複数の楽器でユニゾンをしているため休んでも構わないと、そのプレーヤーが判断した場所ということだろう。
特に唇の消耗に気を使うリードトランペット・プレーヤーに多い。
そんなとき、その場では何もなかったように振る舞うのだが、家に帰ってからそのカッコを消しゴムで消して「恐れ入りますが是非吹いて頂きたくお願い致します」と書き添えたりもする。



しかし、これはこれでアレンジにおける一つのヒントになる。
もちろんプレーヤーにもよるが、そのラインは少なくとも彼にとってはどうしてもという必然性を感じられなかったいうわけだ。
あるいは少なくとも彼は唇の温存を優先することによってトータルなパフォーマンスを向上させると判断したのだ。
そしてこれは僕にとってとても重要なメッセージとなる。



結局、他の楽器との組み合わせ、物理的な音量とハーモニーの厚さ、そして前後のつながりと休みのバランスをもう一度考えてみて、修正を加えることが多い。
リハーサルの途中でラッパの方を振り向くと「ニヤッ」と笑っている。



一曲を通して音楽的な達成感に結びつく肉体的精神的負荷をどうデザインするかは、ボイシングの積み重ね方よりはるかに難しい。
譜面のよく読めるプレーヤーがつべこべ言わずに吹くだけなら、それこそ打ち込みだって良いだろうし、実際そういう音楽も沢山ある。
でもせっかくこんな素晴らしいプレーヤーが吹いているのだから、そこにこだわっていくものが結局は残っていくと信じている。