【Z BLOG】三木 俊雄:マイルス・デイビス コンプリート・ライブ・アット・ザ・プラグド・ニッケル その1

このアルバムは最初はVol1,2の2枚のアナログレコードアルバムとしてリリースされていた。ジャケットはなぜかIC集積回路の拡大写真。録音も少し滲んだような音だった。
収録された曲も”So What” “Walkin'” “Stella by Starlight”といった過去のアルバムに既に入っているおなじみのレパートリーだったが、その内容の素晴らしさとは裏腹に一言で言えばいかにも「玄人好みの」ジャズ・アルバムだった。
そしてそれから10年以上経ってからだろうか、そのライブの別テイクを含むコンプリート盤が何とCD7枚組として発売された。たしか1万5千円だったと思う。
今となってはちょっと考えられない値段だが、その当時の僕にとっても手の出せるのもではなかった。もちろんYouTubeもない時代。何とかしてそのCDを手に入れたいと思いつつ経済的にも苦しい日々を送っていた。

しかしそれからしばらくして、有名テレビタレントがジャズを歌うという仕事が舞い込み、ちょっとしたギャラが入った。
これはあのコンプリート・プラグド・ニッケルを買うしかないな。
当時はアマゾンはおろか、そもそもパソコンさえなかった時代。僕はディスクユニオンやタワーレコード、今はなきHMV、WAVE、あるいは石丸電気などジャズコーナーが充実していそうなCDショップに片っ端から電話をかけてみた。
しかしどこも売り切れ。もともと7枚組ということでコアなファン向けの限定生産だったためすぐに売り切れたそうだ。
中古で出回ることもわずかにあるが、現在は無いとのこと。逆にジャズ専門店でないところに問い合わせた方が可能性はあるのではないか、とのアドバイスをもらった。

そこで当時住んでいた板橋区にある「大山ハッピーロード」といういかにも庶民的な商店街のレコード屋さんを電話帳で探し電話をかけてみた。
電話口からは流行りのJ-Popが聞こえる。
「あの、そちらにはジャズとかありますでしょうか?」
「ジャズですか? まぁ、多少ある事はありますが…」
「マイルス・デイビスのコンプリート〜という7枚組のCDを探しているのですが」
「マイケル、何でしたっけ」
「いや、マイルス・デイビスです」
「調べてまいりますので少々お待ちください」
電話口からはやはり流行りのJ-Popが聞こえる。

(つづく)