【Z BLOG】三木 俊雄:ストイックなケチ

まだ二十代だった頃、大変お世話になった先輩ミュージシャンがいた。
プレーはもちろん素晴らしいのだが、とにかく女性にモテた。確かに同性の僕から見ても実にカッコイイと思った。
彼は独身で、当時随分長く付き合っている女性がいたので、何かの話の流れで「結婚はしないのですか?」と聞いたことがあった。

「結婚?無いな。自分の人生は自分のために使いたいだろ?」

ミュージシャンの多くはこの「自分の人生は自分のために使いたい」という考えをその根底に持っているように思う。
これは人生における自己の理想を追求し、そのための向上心と純粋さを保ち続ける、というアーティスティックでストイックな面とともに、利己的で人に何かを与える、あるいは分かち合うことのできないケチな面を併せ持つ。
まさにミュージシャンにはこの様な人間が多い。そしておそらく僕もその一人だと思う。

おそらくミュージシャンに限らず、こう言う類の人は多くいる。ちょっと極端なのになると、テレビでたまに見る「人里離れた僻地での自給自足」もそんな感じがするし、広い意味では「ミニマリスト」や「断捨離」「電気を使わない生活」などもそうだろう。つまり個人の主義主張としては理解し共感できるものの、皆んながそれをやり出したら世の中は成り立たなくってしまう、というもの。
したがってそれが許されるのはごく限られた人達であり、まさにそれゆえ「アーティスティックでストイックなライフスタイル」というわけだ。
当然周りからの風当たりは強くなる。そしてそれは概ね善意によるものだ。

僕も独身が長かったので、その頃はいろいろなアドバイスを頂いた。
結婚をした人は「結婚はいいぞ」と言っていたし、離婚をして独身に戻った人は「焦らない方がいい」。
結婚したらしたで子供を持つ人は「なるべく早く子供を作れ」また「一人っ子はかわいそうだ。二人以上がいいぞ」と言う。そしてそのどれもがそれぞれ一定の説得力を持っていた。
つまり皆さん自分の選んだ、あるいは置かれた状況に幸せを感じているようだ。これはとてもいいことだと思う。ただその形態は一つではない。

なので、たとえ自分の経験から導き出されたものであっても、こういう話はあまりしないように心掛けている。ごく一部の親しい人を除いては。