【Z BLOG】三木 俊雄:カセットテープとYouTube その1

最近はカセットテープが見直されているという。
音声を記録する媒体には、その当時は未来永劫に存在するかと思ったのがいつの間にか消えてしまったというものがある。そういえば一時はあれほど使っていたMD(ミニディスク)はどこに行ったのだろう。

その中ではカセットテープはかなり息が長く、僕も学生の頃はよく使っていた。というか、当時はそれが録音の可能なほぼ唯一のメディアだった。今はすべて処分してしまったが、持っていたカセットテープはゆうに数百本を超えるだろう。
それでもって何を録音していたかというと、ほぼすべて友達から借りたレコードか(当時はなぜかこれを「ダビング」と呼んでいた)、ライブの隠し録りとそのコピーだ。そもそも家庭にあるステレオセットにおけるカセットデッキの役割とはレコードをコピーすることだったのではないだろうか。

もちろんどちらも厳密に言えば、いや厳密に言わなくとも違法。
若い頃の悪行自慢をするつもりはないが、つまり僕はおびただしい数の違法行為を重ねていたことになる。
確かにその行為によって本来売れるはずだったレコードの売り上げの一部は損なわれたに違いない。

しかし、結果としてそれをはるかに上回る枚数のレコードやCDを買い、はるかに上回る回数のライブやコンサートに通うことになった。
そしてもし、あのおびただしい数のカセットテープがなければ僕はミュージシャンになってはいなかっただろう。
僕を含めた多くのミュージシャンは、プレーヤーが世に出ることを想定、あるいは同意していない「海賊盤」や同業者仲間から回ってきた「隠し録り」からほとばしり出る音の生々しさに固唾を飲んで耳を傾けた経験があるのではないだろうか。

コストをかけて作り出され、売り出された音楽をタダでコピーする、あるいは演奏を無断で録音することが法律的にも道義的にも常識的にも間違っていることは理解している。
しかし、自分も散々やってきたことを声高に糾弾する気にどうもなれないのは何とも複雑な気持ちだ。

(続く)