Web音遊人(みゅーじん)

KISSが2019年12月に来日。最高最後のロックンロール・パーティーが始まる

「You wanted the best, you got the best.  The hottest band in the world, KISS!(“最高”が欲しいんだろ?“最高”を与えてやろう。世界で一番ホットなバンド、KISS!)」

ロック・ファンにはお馴染みのオープニングMCが日本のライヴ会場に鳴り響くのは、これが最後となる。2019年12月、KISSの「END OF THE ROAD WORLD TOUR」は、45年間ロックンロールで突っ走ってきた彼らの最後の日本公演だ。

「ラヴ・ガン」「ラヴィン・ユー・ベイビー」「デトロイト・ロック・シティ」「ロックン・ロール・オールナイト」など名曲の数々、壮大なステージ・セット、炎やスモーク、紙吹雪、ド派手なフェイス・ペイントやコスチューム、ジーン・シモンズの火噴き&血吐きやポール・スタンレーの胸毛など、KISSは究極のロックンロール・エンタテインメントを提供してきた。さらにはKISSコミックからKISS棺桶(パンテラのダイムバッグ・ダレルはこの棺桶に入れられて埋葬された)、5万ドルでジーン自らがファンの自宅に届けてくれるCD10枚組ボックスなど、斬新なビジネス戦略も話題を呼び、熱心なファンから絶大な支持を得ている。

そんな彼らが引退するというのだから、もはやロックの歴史における一大事である。

本国アメリカはもちろん世界中で幅広いファン層を持ち、日本でも1977年の「ヤング・ミュージック・ショー」出演や2015年のももいろクローバーZとのコラボレーションなど、時代を超えた人気を誇ってきたKISSの最後のジャパン・ツアーはロックのひとつの時代が幕を下ろす、ひとつの“事件”である。

超一級のロックンロールを楽しむというのに加えて、特別な感傷を伴うライヴになることは間違いないだろう。ファンのKISSメイクが涙で流れてしまう光景が目に浮かぶ。

KISSは2000年から2001年にかけて“引退ツアー”を行い、その後に撤回した“前科”がある。今回もやはり撤回するのでは?と疑いの目を向けるファンがいることも事実だ。だが、1949年生まれのジーンは今年で70歳、1952年生まれのポールは67歳となる。メイクとコスチュームに身を包んで大音量ハード・ロックをぶちまかすことができる時間は、そう長くは残されていない。おそらくこれがラストチャンスとなるであろうライヴ。必見!というのはかなり控えめな表現である。

さて、最後のジャパン・ツアーを終えた後、KISSはどこに向かっていくのだろうか。ツアー活動を終えてもアルバムを作り続けるロック・バンドは数多く存在するが、彼らはそうはならなさそうだ。2017年、筆者(山崎)とのインタビューで、ジーンはKISSとしてのニュー・アルバムを作ることに「興味がない」と語っている。

「ファンが金を出さずに、ファイル共有や違法ダウンロードで済ませてしまう。俺はチャリティには寄付をするが、自分の音楽を盗まれるのはイヤなんだ。俺は食べ物や服に金を出す。だから俺の音楽を聴く人には正統な対価を出してほしい」だからもうKISSの新作は出さない……というわけだ。

もうひとつ、今回の「END OF THE ROAD WORLD TOUR」は現行のKISSにとって最後のツアーとなるが、KISSというバンドは今後も存続する……?という可能性もある。

ご存じのとおり、現在のオリジナル・メンバーはジーンとポールのみ。トミー・セイヤー(ギター)とエリック・シンガー(ドラムス)は近年加入した、比較的最近のメンバーだ。たとえジーンとポールが引退しても、人員を補充してKISSとして活動を続けるという選択肢もあり得るのだ。

2015年、筆者とのインタビューで、ポールは「KISSというのは4人のメンバーよりも大きな“精神性”なんだ」と主張していた。

「オリジナル・メンバーでなくても、新しい時代にKISSの精神を継承していく人間であれば、KISSの一員たり得る。ベース・ルースが引退しても、ニューヨーク・ヤンキースの選手たちは誇りを持って、チームを未来へと繋げていくだろ?」

「KISSが100年、200年と続いていたら最高だね。俺はステージ上では“スターチャイルド”だけど、その頃には本物のスターチャイルドになって、空の上からバンドを見ているかもしれない」とポールは笑っていた。

ジーンとポールのいないKISSが、星の数ほど存在するKISSカヴァー・バンドと一線を画する正統性をどのように見せつけるのか?興味はあるものの、それはまだ未来の話だ。今はひたすら「END OF THE ROAD WORLD TOUR」に向けて、テンションを上げていきたい。

2019年12月、最高最後のロックンロール・パーティーが始まる!

■公演インフォメーション

「THE FINAL TOUR EVER KISS: END OF THE ROAD WORLD TOUR」
2019年12月8日(日)ゼビオアリーナ仙台
2019年12月11日(水)東京ドーム
2019年12月14日(土)盛岡タカヤアリーナ(盛岡市総合アリーナ)
2019年12月17日(火)京セラドーム大阪
2019年12月19日(木)ドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)
詳細はこちら

 

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:May J.さん「言葉で伝わらないことも『音』だったら素直に伝えられる」

2533views

反田恭平 - Web音遊人

音楽ライターの眼

ユニークな個性が演奏に反映し、聴き手の心をわしづかみにする反田恭平のピアニズム

4022views

P-515

楽器探訪 Anothertake

ポータブルタイプの電子ピアノ「Pシリーズ」に、リアルなタッチ感が得られる木製鍵盤を搭載したモデルが登場!

8623views

引っ越しのシーズン、電子ピアノやエレクトーンの取り扱いについて

楽器のあれこれQ&A

引っ越しのシーズン、電子ピアノやエレクトーンを安心して運ぶには?

35800views

注目の若手ピアニスト小林愛実がチェロのレッスンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】注目の若手ピアニスト小林愛実がチェロのレッスンに挑戦!

2935views

オトノ仕事人

音楽フェスのブッキングや制作をディレクションする/イベントディレクターの仕事

4904views

ホール自慢を聞きましょう

地域に愛される豊かな音楽体験の場として京葉エリアに誕生した室内楽ホール/浦安音楽ホール

1967views

東京文化会館

こどもと楽しむMusicナビ

はじめの一歩。大人気の体験型プログラムで子どもと音楽を楽しもう/東京文化会館『ミュージック・ワークショップ』

2012views

上野学園大学 楽器展示室

楽器博物館探訪

日本に一台しかない初期のピアノ、タンゲンテンフリューゲルを所有する「上野学園 楽器展示室」

9941views

われら音遊人

われら音遊人:アンサンブル仲間が集う仲よしサークル

2350views

山口正介

パイドパイパー・ダイアリー

大人の音楽レッスン、わたし、これでも10年つづけています!

3283views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

11509views

おとなの楽器練習記 レ・フレール

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ピアノデュオ『レ・フレール』がトロンボーンに挑戦!

5393views

ギター文化館

楽器博物館探訪

19世紀スペインの至宝級ギターを所蔵する「ギター文化館」

6399views

音楽ライターの眼

3大テノールを受け継ぐ情熱的な歌声を聴かせたサルヴァトーレ・リチートラを偲ぶ Vol.1

1008views

打楽器の即興演奏を楽しむドラムサークルの普及に努める/ドラムサークルファシリテーターの仕事(前編)

オトノ仕事人

一期一会の音楽を生み出すガイド役/ドラムサークルファシリテーターの仕事(前編)

7669views

われら音遊人:年齢も職業も超えた仲間が集う 結成30年のビッグバンド

われら音遊人

われら音遊人:年齢も職業も超えた仲間が集う、結成30年のビッグバンド

3056views

P-515

楽器探訪 Anothertake

ポータブルタイプの電子ピアノ「Pシリーズ」に、リアルなタッチ感が得られる木製鍵盤を搭載したモデルが登場!

8623views

ザ・シンフォニーホール

ホール自慢を聞きましょう

歴史と伝統、風格を受け継ぐクラシック音楽専用ホール/ザ・シンフォニーホール

9436views

パイドパイパー・ダイアリー Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

あれから40年、おかげさまで「音」をはずさなくなりました

1884views

乾燥が気になる季節、暖房を入れた室内でのピアノの注意点や対策

楽器のあれこれQ&A

ピアノを最適な状態に保つには?暖房を入れた室内での注意点や対策

28450views

こどもと楽しむMusicナビ

“アートなイキモノ”に触れるオーケストラ・コンサート&ワークショップ/子どもたちと芸術家の出あう街

1718views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

3289views