Web音遊人(みゅーじん)

離れていても音楽でつながっている~2020年のPMFは、修了生たちの演奏動画をWebで配信!

20世紀を代表する指揮者・作曲家、レナード・バーンスタインによって札幌に創設された国際音楽教育祭、PMF(パシフィック・ミュージック・フェスティバル)。1990年の創設以来、未来のクラシック音楽シーンを担う若手音楽家の育成に貢献するとともに、札幌に夏の訪れを告げる風物詩として多くの人々に愛されてきた。
しかし、2020年は新型コロナウィルスの影響で、30年にわたる歴史のなかで初めて中止が決定。一方で、こんな時期だからこそ生まれた取り組みもある。人々に勇気や希望を与える音楽の力を信じて立ち上げたオンライン・プロジェクトPMF Connectsだ。

PMF修了生が作成したPMF Connectsのロゴ。この修了生は、PMFの期間中いつもホワイトボードなどにユニークなイラストを描いていたので、ロゴの作成を依頼してみたところ、快諾してもらえたそう。

例年ならば、7月上旬に幕開けし、約1か月にわたって開催されるPMF。期間中は、厳しいオーディションで選抜された若いアカデミー生たちと、彼らを指導する一流の教授陣が世界中から札幌に集まる。教育の成果は、札幌を中心に開かれるさまざまな演奏会で披露。公演数は毎年40回ほどにもおよび、札幌が誇るコンサートホールKitaraや野外ステージなど多彩な会場で、オーケストラ、リサイタル、室内楽などを楽しむことができる。アカデミー生たちによる演奏だけでなく、主要オーケストラの首席奏者らで構成される教授陣の演奏を気軽に聴くことができるのもPMFならではの魅力。美しく短い札幌の夏を彩るこの音楽祭を、2020年も心待ちにしている人は多かったはずだ。

PMFの開催は中止になったけど、なにかできることはないだろうか。PMF Connectsは、組織委員会スタッフのそんな思いから生まれた。目指したのは、その名の通り、音楽でつながること──。
きっかけは、PMF教授陣のひとりであり、ベルリン・フィルのホルン奏者であるサラ・ウィリス氏が、2018年PMFの修了生と一緒にアンサンブルの動画を作成してSNSに投稿したことだった。ほかにも修了生や教授陣のアーティストたちが、演奏動画や音楽でこの状況を乗り越えようというメッセージなどを発信。そこで、世界中にいるPMF関係アーティストや修了生に声をかけて動画を寄せてもらい、配信することになった。

(画像左)遠く離れたメンバー同士の演奏動画をひとつにまとめ、アンサンブルのように。(画像右)過去のPMFの演奏動画も公開。こちらは2018年に札幌コンサートホールKitaraで収録されたもの。

配信は2020年4月20日にスタートし、投稿は日々増加中。82件、のべ147人のアーティストたちが参加している(同年6月8日現在。今後もどんどん増える予定)。これまで約30年にわたり、世界77の国と地域に3,700人を越える優秀な音楽家を輩出してきたPMFだからこそできるプロジェクトだろう。世界中にいる修了生たちはPMFでの経験を大切に思い、また離れていても音楽でつながっているということを、たとえこのような状況下になかったとしても常に感じているのだという。
動画はほとんどが数分程度で、多彩な楽器の演奏を手軽に楽しめるのはオンラインならでは。遠く離れたアーティストがアンサンブルしていたり、ひとりで何役もこなしたりするなどリモートでしか叶わない演奏もアップされている。アーティストの普段着の姿が見られるなど、奏者との距離が近く感じられるのもうれしい点。また、バーンスタインの曲や祈りを込めた曲などPMF Connectsのために選曲された演奏動画も見どころ、聴どころのひとつだ。さらに、過去のPMFの動画も配信されているので、じっくり音楽鑑賞するのもいいだろう。
「演奏だけでなく、寄せてくれたメッセージがたくさんある」。「今年のPMFがここで行われているようでうれしい」。閲覧者からはそんな声が聞かれる。
人と人とをつなぐ音楽の力をあらためて感じさせてくれる──それがPMF Connects。そして、そのすばらしい音楽を今度は生で楽しみたくなること間違いなしだ。

■PMF Connects

PMFの過去の演奏やPMF教授陣・修了生などから送られた演奏・メッセージなど、90本近くの動画が公開されている。
(2020年6月現在)
詳細はこちら

特集

今月の音遊人:諏訪内晶子さん

今月の音遊人

今月の音遊人:諏訪内晶子さん「音楽の素晴らしさは、人生が熟した時にそれを音で奏でられることです」

18732views

なぜジャズのハードルは下がらないのか?vol.8

音楽ライターの眼

なぜジャズのハードルは下がらないのか?vol.8

6368views

楽器探訪 Anothertake

ピアノならではのシンプルで美しいデザインと、最新のデジタル技術を両立

6413views

楽器のあれこれQ&A

目的別に選ぼう電子ピアノ「クラビノーバ」3シリーズ

2437views

おとなの楽器練習記:岩崎洵奈

おとなの楽器練習記

【動画公開中】将来を嘱望される実力派ピアニスト、岩崎洵奈がアルトサクソフォンに初挑戦!

11247views

オトノ仕事人

大好きな音楽を自由な発想で探求し、確かな技術を磨き続ける/ピアニストYouTuberの仕事

43634views

ホール自慢を聞きましょう

ウィーンの品格と本格派の音楽を堪能できる大阪の極上空間/いずみホール

6338views

こどもと楽しむMusicナビ

クラシックコンサートにバレエ、人形劇、演劇……好きな演目で劇場デビューする夏休み!/『日生劇場ファミリーフェスティヴァル』

6412views

上野学園大学 楽器展示室」- Web音遊人

楽器博物館探訪

伝統を引き継ぐだけでなく、今も進化し続ける古楽器の世界

12462views

5 Gravities

われら音遊人

われら音遊人:5つの個性が引き付け合い、多様な音楽性とグルーヴを生み出す

1514views

パイドパイパー・ダイアリー Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

楽器は人前で演奏してこそ、上達していくものなのだろう

7840views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

28812views

脱力系(?)リコーダーグループ栗コーダーカルテットがクラリネットの体験レッスンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】脱力系(?)リコーダーグループ栗コーダーカルテットがクラリネットの体験レッスンに挑戦!

10246views

小泉文夫記念資料室

楽器博物館探訪

世界の民族楽器を触って鳴らせる「小泉文夫記念資料室」

21623views

Deviation Street: High Times In Ladbroke Grove 1967 - 1975

音楽ライターの眼

ノッティングヒルの恋人もビックリ。オムニバス『Deviation Street』で歩む英国アンダーグラウンド音楽の“逸脱した道のり”

1006views

誰でも自由に叩けて、皆と一緒に楽しめるのがドラムサークルの良さ/ドラムサークルファシリテーターの仕事(後編)

オトノ仕事人

リズムに乗せ人々を笑顔に導く/ドラムサークルファシリテーターの仕事(後編)

6613views

われら音遊人

われら音遊人:アンサンブル仲間が集う仲よしサークル

9063views

STAGEA(ステージア)ELB-02 - Web音遊人

楽器探訪 Anothertake

スタイリッシュなボディにエレクトーンならではの魅力を凝縮!STAGEA(ステージア)「ELB-02」

13811views

荘銀タクト鶴岡

ホール自慢を聞きましょう

ステージと客席の一体感と、自然で明快な音が味わえるホール/荘銀タクト鶴岡(鶴岡市文化会館)

11041views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

贅沢な、サクソフォン初期設定講習会

5240views

初心者必見!バンドで使うシンセサイザーの選び方

楽器のあれこれQ&A

初心者必見!バンドで使うシンセサイザーの選び方

23000views

東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

こどもと楽しむMusicナビ

子ども向けだからといって音楽に妥協は一切しません!/東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

10378views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

9520views