スペシャルコンテンツ 2015年ショパン国際ピアノコンクール 予備予選レポート

第17回ショパン国際ピアノコンクールのコンテスタントを選抜する予備予選が、4月13日から24日までの12日間にわたってワルシャワで開催された。5年に1度のステージを目指して熱演を繰り広げた若者たちの姿をレポートしよう。

予備予選とは?

 世界でもっとも権威のあるピアノコンクールのひとつとして知られるショパン国際ピアノコンクールは、ピアニストを目指す若者たちのあこがれの舞台。そのため、毎回応募者はきわめて多く、書類、音源、映像による事前選考がおこなわれていたが、より公平にコンテスタントを選抜しようと2005年から本大会の前に予備予選が実施されるようになった。

 2005年の第15回コンクールでは本大会直前にワルシャワで約350名の応募者全員が2つの会場に分かれて予備予選に臨んだが、練習場所の確保などさまざまな問題が生じたため、2010年の第16回から、書類・DVD審査で応募者を160名程度に絞り、4月に予備予選を開催して約80名の本大会に出場するコンテスタントを選抜することとなった。
 2010年4月にワルシャワで開催された予備予選は、353名の応募者から当初160名のリストが発表され、その後55名が追加されて215名が参加したが、審査3日目にアイスランド南部の火山が大噴火した影響でヨーロッパの空港がすべて閉鎖され、多くの参加者が航空便でワルシャワに来ることができなくなったため大混乱となった。
 5年後の今回の予備予選は、これまでの教訓を生かして周到に準備され、12日間すべての日程が順調に進行した。自然災害や事故などのトラブルがなかったことも幸いだった。今回の応募者は、前回の353名をはるかに上回る445名。書類・DVD審査で予備予選参加者160名を選ぶのは大変な作業だったという。審査委員長のカタジーナ・ポポヴァ=ズィドロンをはじめとするポーランドのピアニスト、指導者、音楽学者など8名の審査員が2週間にわたって1日8時間から10時間DVDを視聴したそうだ。日本からの応募者は最多の88名だったが、予備予選に進んだのは25名。中国は26名、韓国は24名、地元ポーランドは21名、ロシアとアメリカが11名、フランスが6名、イギリスとイタリアが5名……、アメリカやヨーロッパの参加者の中にもアジア系が多く、過半数がアジアの参加者となった。予備予選免除で10月の本大会に参加するのは、ディナーラ・クリントン(ウクライナ)、中桐望(日本)、工藤奈帆美・レイチェル(アメリカ)、エリック・ルー(アメリカ)、アンジェイ・ヴェルチンスキ(ポーランド)、ウーカシュ・クルピンスキ(ポーランド)、クシシュトフ・クスィアゼク(ポーランド)の7名。ショパン・インスティテュートが指定した主要な国際コンクール第2位までの入賞者とポーランドの国内選抜第2位までの入賞者だ。80名の枠の7名がすでに決まっているので、予備予選参加者にとって10月の本大会への出場は、狭き門だったと言えよう。

予備予選に来ていた中桐望さん(左)と

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ライター Profile

森岡 葉

森岡 葉(もりおか よう)
慶応義塾大学法学部政治学科卒業。音楽ジャーナリスト。著書に『望郷のマズルカ―激動の中国現代史を生きたピアニスト フー・ツォン』(ショパン)、『知っているようで知らないエレクトーンおもしろ雑学事典』(共著、ヤマハミュージックメディア)、訳書に『ピアニストが語る! 現代の世界的ピアニストとの対話』(焦元溥著、アルファベータブックス)、『音符ではなく、音楽を! 現代の世界的ピアニストたちとの対話 第2集』(焦元溥著、アルファベータブックス)

書籍

望郷のマズルカ―激動の中国現代史を生きたピアニストフー・ツォン
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ピアニストが語る! 現代の世界的ピアニストたちとの対話
ピアニストが語る! 現代の世界的ピアニストたちとの対話
ピアニストが語る! 音符ではなく、音楽を! 現代の世界的ピアニストたちとの対話 第二巻
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