ピアニスト:仲道 郁代  - 仲道郁代 30th Anniversary そして未来へ ~10年後に見える世界に思いを馳せて~ この記事は2018年2月14日に掲載しております。

2017年にデビュー30周年を迎えた仲道郁代さん。31年目から先の10年を見据えた新しい企画を立ち上げるため、2018年1月に記者会見を行った。

Profile

 冒頭の挨拶では「あっと言う間の、しかし充実した30年。演奏し続けられたことに感謝し、それが生きるエネルギーとなっています」と述べ、この30年を大まかに振り返るビデオが流された。
「ピアノやピアノ音楽を聴くことで、不安定になっている心を定位置に戻すことができると信じています。演奏していると、無になって特別な空間にいる感覚になります。それを聴き手の皆さんと共有するのが、演奏家の醍醐味。これは、デビューの頃と変わらぬ思いです。また20年前からベートーヴェンに取り組んだことで、音楽に生きるための哲学があることも知りました。こうしたことを踏まえて、今後10年の計画を立てました」

 その計画とは、それぞれ年に1回ずつ行い、2027年に完結する2つのシリーズだ。

「ひとつは、ベートーヴェンのソナタをプログラムの軸にしたもの。毎回テーマを持たせつつ、ベートーヴェンが影響を受けた作品やベートーヴェンの影響を受けた作品を組み合わせました。毎春にサントリーホールなどで開催します」
 作曲家でベートーヴェン研究でも知られた諸井誠氏とのレクチャー・コンサート・シリーズで「開眼」し、これからもベートーヴェン解釈を続けていくという。最終回の2027年はベートーヴェン没後200年であり、仲道さんの演奏活動40周年ともなる。それに組まれたショパンのピアノ・ソナタ第2番(第3楽章が「葬送行進曲」)には、特別な思いがあるという。
「20年ほど前に母が亡くなった折り、遺言によって葬儀で弾いて以来、ずっと演奏できませんでした。しかしそれを弾くことは、母の死を受け入れ、悲しみを乗り超えることになると思いました」
 このシリーズの1回目は、2018年4月30日に開催される。「パッションと理性」と題し、モーツァルトのピアノ・ソナタK.310、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第23番「熱情」Op.57、そしてブラームス:ピアノ・ソナタ第3番Op.5がプログラミングされた。仲道さんの透徹したピアニズムによって、3人の作曲家は響き合いながら、その違いもはっきりと見えてくれることだろう。

 もうひとつは、毎秋に東京文化会館小ホールなどの、インティメート(親密)な空間で行うシリーズ。
「繊細で内面的な性格をもったさまざまな作品で、私自身のピアニズムを極め、研ぎ澄まされたピアノの響きを求めていきたい。2つのシリーズが完結した時に、どこに行きついているかはわかりません。先人たちのあり方や社会を見つめていくことも含めて、10年後に到達できる世界を楽しみにしています」
 さらに2018 年3月16日(金)には「仲道郁代 ピアノ・フェスティヴァル」を開催する。上原彩子、小川典子、金子三勇士、清水和音、萩原麻未という、世代も個性も異なる実力派が参加して繰り広げる「ピアノの饗宴」だ。
「大好きなピアノを皆で盛り上げたい。6人のための曲がないので、5台のピアノでステージを回していきます。超絶技巧で火花を散らしながら、とにかくピアノの醍醐味をご披露したい」

 演奏家としての社会貢献にも意欲的に取り組んでいる仲道郁代さん。これからの10年はさらに充実した日々となるに違いない。

<仲道郁代『ピアノ・フェスティヴァル』出演者からのメッセージ動画>

Textby 堀江昭朗

仲道郁代ピアノ・リサイタル~ベートーヴェンと極めるピアノ道vol.1(全10回)
2018年4月30日(月・祝)14:00 サントリーホール
[プラグラム]
モーツァルト:ピアノ・ソナタK.310
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番「熱情」Op.57
ブラームス:ピアノ・ソナタ第3番Op.5 他
お問い合わせ:ジャパン・アーツぴあ 03-5774-3040
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上記は2018年2月14日現在の情報です。