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尾崎 未空 さん(Ozaki Misora) 新たなレパートリーに挑戦し、ピアニストとして成長したい。 この記事は2017年1月12日に掲載しております。

第40回ピティナ・ピアノコンペティションで特級グランプリに輝いた尾崎未空さんは、2014年のルービンシュタイン国際ピアノコンクールで最年少セミファイナリストとして注目を集めるなど、10代の頃から優れた才能を認められてきたフレッシュなピアニスト。昭和音楽大学演奏家コース3年に在籍する尾崎さんに、ピアノへの想いや夢を語っていただいた。

Profile

pianist 尾崎 未空

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尾崎 未空
01 年「第 25 回ピティナ・ピアノコンペティション」A2級全国決勝大会優秀賞、07 年第 8 回ショパン国際ピアノコンクール in ASIA」アジア大会奨励賞、08 年「第 9 回ショパン国際ピアノコンクール in ASIA」小学 5・6 年生部門アジア大会銀賞。「第 11 回エトリンゲン国際青少年ピアノコンクール」(ドイツ)A カテゴリー第 5 位。09 年「 第 10 回ショパン国際ピアノコンクール in ASIA」中学生部門アジア大会金賞、「14 回浜松国際ピアノアカデミーコンクール」第 3 位及びモスト・プロミシング・アーティスト受賞。10 年 「第 34 回ピティナ・ピアノコンペティション」Jr.G 級金賞、「いしかわミュージックアカデミー」(ピアノ)IMA 音楽賞受賞、11 年「 第 2 回 e-Piano ジュニア・コンクール」(アメリカ)第4位、「第 5 回福田靖子賞選考会」 優秀賞受賞、12 年「 第 13 回ショパン国際ピアノコンクール in ASIA」 コンチェルト C 部門アジア大会銀賞、第 9 回バリス・ドヴァリョーナス国際青少年ピアノ&ヴァイオリンコンクール」(リトアニア)C 部門入賞。「第 8 回モスクワ・ショパン国際青少年コンクール」(ロシア)第 3 位、及び、最優秀小品演奏特別賞受賞。13 年「第14 回ショパン国際ピアノコンクール in ASIA」プロフェッショナル部門アジア大会金賞。14 年「第14 回ルービンシュタイン国際ピアノコンクール」(イスラエル)セミファイナリスト。16 年、「第20回浜松国際ピアノアカデミーコンクール」第 3 位。「第 40 回ピティナ・ピアノコンペティション」特級グランプリ、文部科学大臣賞。09 年めぐろパーシモンホールにてリサイタル、10 年水戸・佐川文庫にてリサイタルを開催。これまでにリトアニア国立交響楽団、ミネソタ管弦楽団、ポーランド・クラクフ室内管弦楽団、ポ-ランド・シレジア管弦楽団、東京交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団等と共演する。
現在、昭和音楽大学ピアノ演奏家コース、同附属ピアノアートアカデミー在籍。江口文子氏に師事。
※上記は2017年1月12日に掲載した情報です。

新たなレパートリーに挑戦し、ピアニストとして成長したい

 第40回ピティナ・ピアノコンペティションで特級グランプリに輝いた尾崎未空さんは、2014年のルービンシュタイン国際ピアノコンクールで最年少セミファイナリストとして注目を集めるなど、10代の頃から優れた才能を認められてきたフレッシュなピアニスト。昭和音楽大学演奏家コース3年に在籍する尾崎さんに、ピアノへの想いや夢を語っていただいた。

 7歳年上の兄、尾崎有飛さんも第31回ピティナ・ピアノコンペティションで特級グランプリに輝き、ハノーファー音楽演劇メディア大学で研鑽を積んだ俊英ピアニスト。生まれたときから兄のピアノを聴いて育ち、ごく自然にピアノに親しみ、のびやかに才能を開花させてきた。

「小さい頃は、毎晩兄が練習しているピアノの音を子守歌のように聴きながら眠りについていました。ピアノを習い始めたのは4歳のとき。小学5年生から昭和音楽大学附属ピアノアートアカデミーで江口文子先生に師事するようになりました。兄も江口先生に師事していたので、“あなたのことは赤ちゃんの頃から知っているのよ”とよく言われます。小さいころから兄が先生に、“今日は僕の代わりに未空をよろしくお願いします”とレッスンの時間を譲ってくれていました。ピアニストになりたいと思ったのは、小学6年生のときにオーケストラとサン=サーンスの《ピアノ協奏曲第2番》を演奏して、あぁ、ステージで演奏するって素敵だな、幸せだなと思ったことがきっかけです」

 中学・高校時代は千葉県の自宅から川崎の昭和音楽大学附属ピアノアートアカデミーまで片道2時間以上かけて通った。

「江口先生は作品に対して豊かなイメージを持つことが大切だとおっしゃって、ユーモアをまじえていろいろなお話をしてくださいます。レッスンは厳しいですが、いつも温かく見守られていると感じます。10年以上師事していますが、振り返ってみると、そのときに私が一番必要としている栄養を与えてゆっくり育てていてくださるのだなと感謝しています。普通高校に通いながら主に週末にレッスンしていただくという生活でしたが、ピアノと学校がまったく別の世界だったのがよかったと思っています。学校ではさまざまな夢を持つ友だちと親しくなり、文化祭や体育祭にも楽しい思い出がたくさんあります。高校時代の友だちは私をずっと応援してくれていて、今でもよくコンサートを聴きに来てくれます」

 昭和音楽大学演奏家コースに進み、本格的にピアニストへの道を歩み始めた。

「大学に入って戸惑ったのは、音楽だけという生活の中でどのようにピアノに集中したらいいかということでした。高校生のときと違い自由な時間も増えたぶん、限られた時間の中というのではなく1日中たくさん弾いていられるのですが、かえって難しいと思うときもあり、自分の時間をすべて自分で管理することに慣れるまでに少し時間が必要でした。今はコンサートに出かけたり、本を読んだり映画を観たり、ご飯を作ったりしてリフレッシュしながら練習しています。とくに料理は、頭の違うところを働かせるようで、コンクールが迫って気持ちがあせっているときのよい気分転換になっています。また時間のあるときはできるだけ演奏会に足を運ぶように心がけています。ピアノだけでなく他の楽器のリサイタルなどにも行ってみると、どんな演奏が自分が好きなのか考える機会にもなりますし楽しいです」


 海外のコンクールにも小さい頃から挑戦し、さまざまな経験を積みながら豊かに成長している。

「中学1年のときに参加したドイツのエトリンゲン国際青少年ピアノコンクールが、初めて参加した海外のコンクールでした。張り詰めた雰囲気はなく、温かくフレンドリーで、演奏が終わった後にたくさんの方が話しかけてくださって驚きました。クラシック音楽が生活の中に息づいているのですね。会場にも歴史と伝統が感じられ、天井に美しい絵画が描かれていたり……、建物や空気が違うので、ピアノの響きも日本で弾いているときとはまったく違い、響きのグラデーションを楽しみながら演奏しました。一昨年のルービンシュタイン国際ピアノコンクールにはたくさんの思い出があります。聴衆の方たちが研ぎ澄まされた感覚を持っていて、集中して聴いてくださっているのを肌で感じまた。会場のあったテルアビブは地中海に面した美しい街でしたが、イスラエルという国の歴史や周りの国との関係を考えると、いろいろ考えさせられることもありました。クララ・ハスキル国際ピアノコンクールは、スイスのレマン湖畔のヴェヴェイという街で開催され、ケーブルカーに乗って山の斜面にあるお宅にホームステイしたのですが、雄大な自然の中でリラックスして過ごすことができました。一人暮らしの高齢のホストマザーの方が美味しいご飯を作ってくださったり、ドライヴに連れて行ってくださったり、とても楽しかったです。セミファイナルの室内楽の課題で、プロの演奏家とヴァイオリン・ソナタを演奏したのも素晴らしい経験でした」

 国際コンクールなどで弾いたヤマハCFXには厚い信頼を寄せている。

「小さい頃、ミネアポリスで開催されたe-Pianoジュニア・コンクールに参加したときは、ヤマハディスクラビアを搭載したCFXで演奏しましたが、ホールの響きに合っていて、とても気持ちよく演奏ができました。低音から高音まで柔らかく美しい響きで、“応えてくれる楽器”という印象を持っています」

 ピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリ獲得で、今後ますますコンサートの機会が増えそうだ。新たなレパートリーに挑戦し、ピアニストとしての幅を広げていきたいと目を輝かせて語る。

「今回のコンクールで、ヘンデル《シャコンヌ》、プロコフィエフ《ピアノ協奏曲第3番》など新しい作品に取り組み、自分自身の違った面が見えてきました。今まではショパンやリストをたくさん弾いてきたのですが、バッハ、ヘンデル、スカルラッティなどのバロック作品、プロコフィエフ、ラフマニノフなどのロシア作品にも興味が広がっています。少しずつ掘り下げて、自分の好きな曲の魅力を多くの方に紹介できるようなピアニストになりたいです」

Textby 森岡 葉

※上記は2017年1月12日に掲載した情報です。