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牛田智大さん コンクールは経験と実績を積むことができますし、自分を見つめ直すことにもなります。 この記事は2019年2月20日に掲載しております。

牛田智大が2018年秋の第10回浜松国際ピアノコンクールで第2位入賞に輝いた。彼にとって、ジュニアコンクール以後、初の国際コンクール参加となる。コンクールを受けようと思ったきっかけ、各ラウンドのプログラム構成からそれぞれの作品について、さらに今後の抱負まで、多岐にわたる話を聞くことができた。

Profile

pianist 牛田智大
© Ariga Terasawa

pianist
牛田智大
2018年に開催された第10回浜松国際ピアノコンクールにて第2位、併せてワルシャワ市長賞、聴衆賞を受賞。

1999年福島県いわき市生まれ。父親の転勤に伴い生後すぐ上海に移りピアノを始める。
2005年(5歳)、第2回上海市琴童幼儿鋼琴電視大賽年中の部第1位受賞。
2008年~2012年(8歳~12歳)、ショパン国際ピアノコンクールin ASIAにおいて5年連続第1位受賞。2012年(12歳)、第16回浜松国際ピアノアカデミー・コンクールにおいて最年少1位受賞。同年、日本人ピアニストとして最年少(12歳)でユニバーサル・ミュージックよりCDデビュー。「想い出」(2012年)、「献呈~リスト&ショパン名曲集」(2013年)、「トロイメライ~ロマンティック・ピアノ名曲集」(2014年)、「愛の喜び」(2015年/レコード芸術特選盤)、「展覧会の絵」(2016年/レコード芸術特選盤)と続き、2019年3月には最新CD「ショパン:バラード第1番、24の前奏曲」をリリース。
※上記は2019年2月20日に掲載した情報です。

ショパンをコンクールで弾くのはリスクを伴う

 牛田智大は、第1次予選はリストの「超絶技巧練習曲第1番」より「前奏曲」からスタートしている。そしてプロコフィエフのピアノ・ソナタ第7番へと続けた。
「今回、プロコフィエフとラフマニノフのピアノ・ソナタは絶対に演奏したいと考えていました。第1次予選の最初の曲は、やはりインパクトの強さが必要です。リストのこの作品は衝撃的な印象が強く、そのすぐあとに演奏するプロコフィエフのピアノ・ソナタ第7番の調性も考慮し、導入として適していると考えました。第2次予選では佐々木冬彦氏の作曲による新曲《SACRIFICE》と名付けられた悲劇的な内容をもつ意味深い作品が課題となっていましたので、プログラムを組み立てるのにかなり時間をかけました。この新曲は、コンクールの3カ月ほど前に楽譜が届きました。音はそう多くないのですが、深い意味合いを理解して弾かないと間がもたないため、7分間をどんな風に表現するかという面でかなり苦心しました。作曲者の意図するところが記してあり、4つのテーマが掲げられた曲です。変奏曲形式で、特に後半のパッサカリアのテンポはこまかな表記が記されていたため、それをどうとらえて演奏するか悩みました。プログラムとしては、まずSACRIFICEを弾き、次いでショパンのバラード第1番を置き、最後にラフマニノフのピアノ・ソナタ第2番を演奏するという形にしました。ショパンは審査員も聴衆もみんなが理想とする演奏があるため、コンクールで弾くのはとてもリスクが大きく難しいのですが、新曲の雰囲気を壊さないよう、全体の流れを重視して選びました」

リストのロ短調ソナタは、いまもっとも共鳴できる曲

 牛田智大は、今回のコンクールはとても楽しかったと述懐する。12歳でCDデビューを果たし、積極的にコンサート活動を展開し、ジュニアコンクールでは数々の優勝歴を誇るものの、本格的な国際コンクールの参加は初めてとなるからだ。
「さまざまな国の実力派ピアニストの演奏に触れることができ、とても勉強になりましたし、楽しかったですね。でも、それも第2次予選までで、第3次予選から本選に進むと室内楽と協奏曲でプロの音楽家との共演になりますので、やはり緊張感が増してきました。第3次予選のモーツァルトの《ピアノ四重奏曲第1番》はあまり室内楽を演奏する機会がないため、ぼくにとってとても貴重な経験となりました。この世のものとは思えないほど純粋で美しいモーツァルトの曲を弾くことができ、うれしかったです。第3次予選ではリストの《ピアノ・ソナタ ロ短調》をぜひメインに組みたかたったため、モーツァルトとリストの間にシューベルトの《即興曲変ト長調》を入れました。これは以前、浜松アカデミーで初めて中村紘子先生にレッスンを受けた曲なんです。まだ11歳でしたので、本当に緊張して演奏したことを覚えています。中村先生からは、もっと構成を考えなさいといわれました。その思い出の曲をぜひコンクールで弾きたかったのです。この後、メインとなるリストのピアノ・ソナタ ロ短調を演奏しました。いまもっとも共鳴できる作品のひとつで、この曲はピアニストにとって、とても重要な作品の一つなのではないかと思っています。確固たる構成で書かれていて、全編に深い芸術性が込められています 」

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※上記は2019年2月20日に掲載した情報です。