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三浦 友理枝 さん(2018) ショパンの作品を通し、言いたいことを全部言い切ることを大切に録音に臨みました。 この記事は2018年4月18日に掲載しております。

1999年のリサイタルデビューから約20年。ソロや室内楽など、ピアニストとして多彩な活動を続けてきた三浦友理枝さんが、オール・ショパン・アルバムをリリースする。ショパンの作品に寄せる想い、またデビュー20年の今感じていることについて伺った。

Profile

pianist 三浦 友理枝

pianist
三浦 友理枝
1981年東京生まれ。3歳よりヤマハ音楽教室に入会、1993年よりヤマハマスタークラスに在籍。江口文子、ヴェラ・ゴルノスタエヴァ、浦壁信二各氏に師事。05年英国王立音楽院大学課程を首席で卒業。07年同音楽院・修士課程を首席で修了。クリストファー・エルトン氏に師事。95年「第3回ゲッティンゲン国際ショパンコンクール」第1位受賞。これを機にドイツなどでコンサート活動を開始。99年「第3回マリエンバート国際ショパンコンクール」最年少で第1位受賞。01年「第47回マリア・カナルス国際音楽コンクール」ピアノ部門第1位、および金メダル、最年少ファイナリスト賞、カルロス・セブロ特別メダル賞を受賞。06年9月には「第15回リーズ国際ピアノコンクール」にて特別賞を受賞した。02年ロンドン・ソロイスツ室内オーケストラとの共演でロンドンデビュー。04年には国際ショパン協会ウィーン本部の招きでリサイタルを行いウィーンデビュー。同年、ロンドン・ソロイスツ室内オーケストラと再共演。これまでに、東京フィルハーモニー交響楽団、読売日本交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、群馬交響楽団、千葉交響楽団、大阪フィルハーモニー交響楽団、大阪交響楽団、日本センチュリー交響楽団、京都市交響楽団、兵庫芸術文化センター管弦楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団、札幌交響楽団、広島交響楽団、九州交響楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団、山形交響楽団、シンフォニア・ヴァルソヴィア、ロンドン・ソロイスツ室内オーケストラ、カイロ交響楽団など国内外の主要オーケストラと多数共演。10年東京オペラシティ主催のリサイタルシリーズB→Cに出演、15年にはフィリアホールにおいて「ラヴェルピアノ作品全曲演奏会」を行うなど注目を浴び続けている。また「ラ・フォル・ジュルネ」、「東京・春・音楽祭」、「仙台クラシックフェスティバル」、「いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭」等の音楽祭にも数多く招かれている。室内楽の分野でも幅広く活躍しており、オランダ人ヴァイオリニスト、シモーネ・ラムスマとはエルガーのCDをリリース(NAXOS)、日本、イギリス、オランダ等でコンサート・ツアーも行った。また、09年川久保賜紀(ヴァイオリン)、遠藤真理(チェロ)とピアノ・トリオを、15年にはソリスト達で構成される木管アンサンブル「東京六人組」を結成するなど積極的な活動を展開している。「名曲リサイタル」「ベスト オブ クラシック」「クラシック倶楽部」「みんなのショパン」「きらクラ!」「ららら♪クラシック」などテレビ、ラジオの出演も数多く、10年にはFM仙台のクラシック番組で1年間パーソナリティを務めた。05年、エイベックス・クラシックスよりCDデビュー。ショパン:24のプレリュード」(2010年リリース)、「ミニアチュアーズ」(2014年リリース)は「レコード芸術」(音楽之友社)で特選盤に選ばれている。2018年5月、6枚目のソロアルバムをリリース。
2016年、第26回新日鉄住金音楽賞〈フレッシュアーティスト賞〉を受賞した。
▶三浦友理枝オフィシャルサイト
※上記は2018年4月18日に掲載した情報です。

ショパンのバラードとスケルツォ集を弾いて見えたもの

 リサイタルデビューは1999年、最年少でチェコのマリエンバート国際ショパンコンクールに優勝したことがきっかけだった。それから約20年、英国王立音楽院への留学や、2001年マリア・カナルス国際ピアノコンクールでの優勝などを経て、三浦友理枝さんはピアニストとして着実にキャリアを重ねてきた。
 この年月を振り返ると、自身の中で大きく変わったことが二つあるという。
「まず、留学してイギリスで暮らす中、自分からアピールしないと何も始まらないと気付いたことで、性格が明るくなりました。昔からの友人には、留学後は別人になったと言われたくらい(笑)。
 もう一つは、プロとして演奏活動をする中、自分の仕上がりのペースをつかめるようになったこと。昔は、忙しいスケジュールの中、準備が間に合うだろうかとヒヤヒヤすることや、もう逃げ出したい!と思うこともありましたが、今はもう、この時までにこれができていれば大丈夫だという感触がわかるようになりました」

 そんな三浦さんが、6年ぶりにソロアルバムをリリース。その曲目は、ショパンのスケルツォ全4曲とバラード全4曲というものだ。
「録音は何回も聴かれ、ずっと残ることが前提ですから、コンサートとは準備の仕方が違います。そのうえ、バラードとスケルツォ全曲をまとめて弾くという大変な内容なので、追い込みの1ヶ月間は本当に苦しかったです」
 以前からこの曲目を録音したいと考えていた彼女は、これまでにもリサイタルでその一部を取り上げながら、作品の理解を深めていたという。それでも、全4曲ずつをまとめて弾くことで、改めて見えたことも多かった。
「特にバラードは、第1番からすでにいろいろな要素が入っているものが、第4番になると、苦しみや嘆きを含み、音楽的な深みが圧倒的なものになります。ショパンの人生をたどるように第1番から弾き進めてたどり着いた第4番は、見え方がだいぶ違いました。今回、録音でもバラード第4番は絶対最後に弾きたいと思ってとっておいて、最終日に録音したのです」
 三浦さんはこの曲に、12歳のころから取り組んできたという。当時から大好きなレパートリーだというが、歳を重ねた今、どんなところに魅力を感じるのだろうか。
「その“最後にたどり着くもの”が、喜びではない、というところですね。例えば、ショパンのピアノ・ソナタ第3番が、あれだけ苦しんだあと最後は長調になって明るく終わるのに対し、バラード第4番は、まるで崖から飛び降りて終わるかのようです。一体なぜこんなに苦しいコーダを書いたのだろうと思います。でも、その暗さと絶望感に魅かれるのです。病気がちで、いつも祖国のことを案じていたショパンは、絶望感を持って生きた人だったということが伝わってきます。実はそういう曲が子供の頃から好きです。
 ただ、思いが強すぎる作品を弾いているときって、心ばかりが先行して指に伝わりきらず、コンサートだと、もっと言いたいことがあったのに表現しきれなかった……と感じることもあるんです。今回は録音なのでじっくり取り組むことができたため、全体的に少し遅めのテンポをとって、言いたいことを全部言い切ることを大切にしました」
 ステージ上での感情のコントロールについて、以前、ある名ピアニストから言われた言葉がとても印象に残っていると三浦さんはいう。
「昔、ピエール=ロラン・エマールのレッスンでラヴェルの『ラ・ヴァルス』を見てもらいました。この曲は最後、狂乱の場面に向かっていきますが、エマールさんは、“心はどんどん熱くなっても、耳はクールでいなさい”とおっしゃったのです。すごく共感して、今も本番のステージではそれを意識しています」

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三浦友理枝さんへ “5”つの質問

※上記は2018年4月18日に掲載した情報です。



ニューアルバム

ショパン:バラード&スケルツォ

ショパン:バラード&スケルツォ
■販売情報
発売日:2018年5月16日
商品番号:AVCL-25964~5
発売元:エイベックス・クラシックス
価格:3,000円(税抜)
■収録楽曲
Disc1
バラード 第1番 ト短調 作品23
バラード 第2番 ヘ長調 作品38
バラード 第3番 変イ長調 作品47
バラード 第4番 ヘ短調 作品52
Disc2
スケルツォ 第1番 ロ短調 作品20
スケルツォ 第2番 変ロ短調 作品31
スケルツォ 第3番 嬰ハ短調 作品39
スケルツォ 第4番 ホ長調 作品54
■レコーディング・データ
2018年2月19日~22日
稲城市立iプラザ

コンサート情報

三浦友理枝
ピアノ・リサイタル
日にち:2018年7月27日(金)
時間:18:30開場 19:00開演
会場:浜離宮朝日ホール(東京)
料金 :全席指定 4,500円(税込)
お問い合わせ:朝日ホール・チケットセンター 03-3267-9990
■プログラム
オールショパンプログラム
子守唄 変二調 op.57
スケルツォ 第4番 ホ長調 op.54
2つのノクターン op.55
バラード 第4番 ヘ短調 op.52
3つのマヅルカ op.59
ピアノソナタ第3番 ロ短調 op.58