コンサートレポート

コンサートレポート

日本とポーランドの国交樹立100周年を記念して、珠玉のショパン・プログラムを披露 ~グジェゴシュ・ニェムチュク ピアノ・リサイタル

2019年3月16日(ヤマハホール)、3月23日(ヤマハミュージック大阪店2Fサロン)

 グジェゴシュ・ニェムチュクさんは、ポーランド南部のティヒで生まれ、カトヴィツェのシマノフスキ音楽大学やニューヨークのマネス音楽大学で名教授たちの薫陶を受けた気鋭のピアニスト。
 ショパンの最高傑作、「幻想ポロネーズ」と「ピアノ・ソナタ第2番」を中心に据えたプログラムを、東京、名古屋、大阪の各地で披露しました。

 3月16日、東京・ヤマハホールのステージに爽やかな笑顔で登場したニェムチュクさんの最初の曲は「幻想ポロネーズ」。晩年のショパンの心の叫びが聴こえるような鮮烈な演奏を繰り広げ、しなやかなリズム感とエレガントな香りを感じさせる「ワルツ第6番「小犬」、第7番」の演奏を挟んで、「ピアノ・ソナタ第2番」。ミステリアスでドラマティックなこの作品を、ニェムチュクさんは、激情と詩情が交錯する独自の解釈と表現で、ダイナミックに聴かせました。

 後半は、「ノクターン第17番、第18番」でスタート。即興的な情趣にあふれる第17番、左手のチェロのような響きと右手の美しいメロディが対話する第18番を、ヤマハCFXから色彩感あふれる音色を引き出し、繊細なニュアンスに満ちた演奏を聴かせてくれました。「マズルカ作品59」の3曲では、民族舞曲のリズムに乗せて、ショパンの故郷への想いを生き生きと歌い、最後の曲は「アンダンテ・スピアナートと華麗なるポロネーズ」。精妙なタッチから生み出される変幻自在なサウンドで、ヴィルトゥオジティあふれる演奏を楽しませてくれました。

 アンコールは「エチュード作品10-1」、「ノクターン第1番」。ショパンの真髄を伝えるピアニストの演奏に客席は沸き、惜しみない拍手が送られました。

 3月23日、ヤマハミュージック大阪なんば店で行われたサロンコンサートでは、「ショパンは小さなサロンで、聴衆と心を通わせながら演奏するのが好きでした。そんな雰囲気を感じて聴いてください」とニェムチュクさんが挨拶し、ヤマハホールと同じ珠玉のショパン・プログラムを披露。アンコールは「エチュード作品10-1、作品10-12「革命」」。子どもたちの姿も多い満席の会場を、清々しい感動で包みました。

 終演後、ニェムチュクさんは「ヤマハCFXは、奏者の要求に敏感に反応する素晴らしいピアノでした。こう表現したいと思うことを、すべてかなえてくれました。これは、ショパンを演奏する際に、きわめて重要なことです。「ピアノ・ソナタ第2番」の第3楽章の中間部の天国にいるような世界を、変幻自在な弱音のグラデーションで表現することができ、とても幸せでした。音符と音符の間に音楽が息づくショパンの世界を楽しんでいたただけたのではないでしょうか」と語ってくださいました。

Text by 森岡葉