スペシャルコンテンツ 2015年ショパン国際ピアノコンクール コンクールの舞台裏 ~調律師の活動レポート

コンクールのステージで繰り広げられる数々の熱演の裏で、期間中ピアノとひたすら向き合う調律師。コンクールとコンテスタントを陰から支える彼らの仕事について、これまで様々な国際コンクールの調律現場を経験してきたヤマハ株式会社の花岡昌範に話を聞いた。

国際コンクールに携わり始めたのはいつ頃?

1994年に行われた第2回の浜松国際ピアノコンクールから本格的に関わるようになりました。ですので、ショパン国際ピアノコンクールは1995年の第13回からということになります。

コンクールの現場における1日のスケジュールは?

コンクールによっては会場の退館時間が決まっていたりするので一概には言えませんが、ショパン国際ピアノコンクールの場合は毎回24時間体制でのスケジュールとなります。調律はその日の審査終了後の夜間に行うことになりますが、各ピアノメーカーに割り当てられる時間は日によって異なり、例えば今日は夜の2時から、明日は明け方4時から、と1日毎にずれたりするため休憩が取れるタイミングも変わります。複数名で対応するので一人が付きっきりという訳ではないのですが、深夜の作業が増えるためコンクール期間中は慢性的に寝不足になります。しかしそうは言っても審査中の各コンテスタントの演奏もできるだけチェックしたいので、文字通り「寝る暇がない」という状態が続きますね。

写真提供:浜松国際ピアノコンクール

これまでコンクールの現場で大変だったことや、逆に嬉しかったことは?

個々に大変だと思うことはたくさんあるのですが(笑)、1台のピアノに対してたくさんのコンテスタントができるだけ満足するような調律や調整を行う事にはいつも苦労し、熟考を要します。また、平均的に弾きやすい状態にするということはある程度可能であっても、果たしてそれだけが良いかと言うとそうではなく、コンテスタントの想像の上を行く「ハッ」とするような音、「いつも以上の表現ができるんじゃないか」と感じてもらえるような音にまで仕上げないといけないと考えています。より多くのコンテスタントにそれを感じ取ってもらうというのは、もちろん個々の好みもありますし簡単なことではありませんが…。

嬉しい事は、やはりコンテスタントの皆さんから「弾きやすかった」「いい音だった」と言ってもらえる事、そして会場から自分の調律したピアノの音色を聴いてみて、自分がイメージした通りの音が確認できた時ですね。

最後に、10月のコンクールに臨まれるコンテスタントの皆さんへ。

コンテスタントの皆さんは恐らくピアニスト人生をかける思いでこのコンクールに臨まれると思います。弊社も全精力を費やしてピアノを準備しますので、皆さんにはとにかく演奏に集中して、全力を出し切っていただきたいと思います。皆さんのご活躍を心からお祈りしております。