Web音遊人(みゅーじん)

今月の音遊人:新妻聖子さん「セリーヌ・ディオンの歌声を聴いたとき、私がなりたいのはこれだ!と確信しました」

今月の音遊人:新妻聖子さん「あの歌声を聴いたとき、私がなりたいのはこれだ!と確信しました」

2003年、5,000倍のオーディションを突破し、ミュージカル『レ・ミゼラブル』のエポニーヌ役を射止めた新妻聖子さん。ミュージカル界に彗星のごとく現れたシンデレラ・ガールと話題になりましたが、それまでの道のりは決して平坦なものではなかったようです。歌手を目指した少女の頃から新妻さんが育んできた、プロとしての“歌うこと”への向き合い方とは?

Q1.これまでの人生の中で、一番多く聴いた曲は何ですか?

セリーヌ・ディオンの『The Power Of Love』でしょうか。彼女の歌声に宿るパワーに奮い立たせてもらっているというか、喝を入れてもらっているというか。
セリーヌ・ディオンは私にとって、曲ではなく“歌唱そのもの”を聴く数少ないアーティストなんです。父の仕事の関係でバンコクに住んでいた高校生のとき、映画『タイタニック』が大ヒットしていて、私も4~5回観に行きました。本編の前にセリーヌ・ディオンが歌う主題歌『My Heart Will Go On』のMVが流れたのですが、それを観たとき雷に打たれたような感動を覚え、気がついたら涙が出ていました。私がなりたいのはこれだ!と確信しました。
“セリーヌ様”は、私にとって永遠のアイドルです。勝手な推測ですが、彼女は類まれな資質を持って生まれながらも、努力の人だと思っているんです。数年前、ラスベガス公演を観に行きましたが、変わらないどころかパワーアップしていました。今も現役で、歌唱力も声量も衰えずに歌う。そこに、努力や気合を感じざるを得ません。
彼女は、ドレスを着ていても、よい声が出るよう仁王立ちで歌うんです。女性らしいけれど男前で、どこにも媚びていない感じを私はリスペクトしています。そんな彼女の“歌道”がもっとも色濃く出ているのが『The Power Of Love』なのかなと思います。
私も今、歌い手としてお仕事をさせていただいていますが、声に説得力のあるボーカリストになりたいですね。

Q2.新妻さんにとって「音」や「音楽」とは?

癒しですね。歌に限らず、さまざまなジャンルのコンサートやライブに行きますが、やはり音楽には癒されると単純に思います。
一方で、自分が歌うときの「音楽」の大前提は、人を喜ばせるということです。
バンコクに住んでいたころ、日本人の友達とカラオケに行って何気なく歌ったら、「聖子ちゃん、めちゃくちゃ上手いね」と褒めてくれ、とても喜んでくれたんです。私が歌うと人が喜んでくれるということを発見し、歌手になりたいと思い始めたんです。
ところが、帰国してオーディションを受けてもうまくいかない。学校で一番歌が上手いって、よく褒められていたけれど、外に出たら“ビジネス”としては通用しないことに気付いたんです。であれば、芸を磨き、人に喜んでもらわないと私の居場所はないと思いました。ミュージカルを始めてからは、それをより突き詰めて考えるようになりました。今もその気持ちは変わりません。

今月の音遊人:新妻聖子さん「セリーヌ・ディオンの歌声を聴いたとき、私がなりたいのはこれだ!と確信しました」

Q3.「音で遊ぶ人」と聞いてどんな人を想像しますか?

宣伝ではないのですが(笑)、新作『アライブ』をプロデュースしていただいた、さかいゆうさんを真っ先に思い浮かべますね。
シンガーソングライターであるさかいさんは、ピアノやキーボードと戯れ、遊びながら音を奏でていらっしゃるイメージ。本当に楽しそうに、楽器と一体化して音で遊んでいるんです。さかいさんは独学で作曲を始められたのですが、才能に恵まれていたのはもちろんのこと、さらに努力してそれを磨いてきたということも、すごく羨ましいです。
私は、3歳のときから姉と一緒にピアノを習っていました。自分からやりたいと言い出したにもかかわらず、まったく練習せずにお教室に行き、レッスンの時間になると壁によじ登って時計の針を30分進ませ、「お母さん、もうレッスン終わっちゃったみたい」という小細工をしていたほどです。11歳の時、バンコクに行くのをきっかけにピアノは辞めてしまいました。
その後、歌手を目指すにあたって、自分で作曲ができたら近道になるのではと考え、いろいろやってみましたが、ぜんぜん続かない。人は好きなことしか死に物狂いでがんばれず、私にとってそれは歌だけだったんです。
私にとってプロのスタートとなったミュージカルは、あまり遊ぶ余地が残されていない音楽です。決め事があり、確実にそれを遂行していく。でも、私の性格は、そういうほうが向いていると思います。ロジカルに物事を考え、針の穴を一つひとつ埋めるような作業が結構好きなんです。
でも……というか、だからこそ、さかいゆうさんのように、自由なグルーヴで音と自然に戯れられるミュージシャンには憧れますね。

新妻聖子[にいづま・せいこ]
2002年、TBS「王様のブランチ」でデビュー。2003年、5,000倍のオーディションを突破し、ミュージカル『レ・ミゼラブル』エポニーヌ役にて初舞台。以降、『ミス・サイゴン』キム役など、ミュージカル界屈指の歌姫として活躍中。第31回菊田一夫演劇賞、第61回文化庁芸術祭演劇部門新人賞、第7回岩谷時子賞奨励賞受賞。その豊かな表現力と、力強くかつ美しい歌声は唯一無二と評され、「今、もっとも生でその歌声が聴きたいアーティスト」として話題となり、『MUSIC FAIR』や『うたコン』などの音楽番組をはじめ、NHK大河ドラマ『真田丸』、数々のバラエティ番組でも存在感を発揮。その活躍は多岐に亘る。
新妻聖子オフィシャルサイト  http://www.seikoniizuma.com/

 

特集

實川風

今月の音遊人

今月の音遊人:實川風さん「音楽は過ぎ去る時間を特別な非日常に変えるパワーを持っていると思います」

1486views

ウィグモア・ソロイスツ・コンサート

音楽ライターの眼

変幻自在の表現力、至福のアンサンブル/ウィグモア・ソロイスツ・コンサート

736views

豊かで自然な音と響きを再現するサイレントバイオリン「YSV104」

楽器探訪 Anothertake

アコースティックの豊かで自然な音色に極限まで迫る、サイレントバイオリン™「YSV104」

11530views

大人のピアニカ

楽器のあれこれQ&A

「大人のピアニカ」の“大人”な特徴を教えて!

636views

おとなの楽器練習記

【動画公開中】注目の若手ピアニスト小林愛実がチェロのレッスンに挑戦!

9282views

オトノ仕事人

歌、芝居、踊りを音楽でひとつに束ねる司令塔/ミュージカル指揮者・音楽監督の仕事

2549views

水戸市民会館

ホール自慢を聞きましょう

茨城県最大の2,000席を有するホールを備えた、人と文化の交流拠点が誕生/水戸市民会館 グロービスホール(大ホール)

3596views

東京文化会館

こどもと楽しむMusicナビ

はじめの一歩。大人気の体験型プログラムで子どもと音楽を楽しもう/東京文化会館『ミュージック・ワークショップ』

7125views

民音音楽博物館

楽器博物館探訪

歴史的価値の高い鍵盤楽器が並ぶ「民音音楽博物館」

23301views

われら音遊人:音楽仲間の夫婦2組で結成、深い絆が奏でるハーモニー

われら音遊人

われら音遊人:音楽仲間の夫婦2組で結成、深い絆が奏でるハーモニー

6777views

山口正介さん Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

いまやサクソフォンは趣味となったが、最初は映画音楽だった

6526views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

24631views

今、注目の若き才能 ピアニスト實川風が ドラム体験レッスン!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】今、注目の若き才能 ピアニスト實川風が ドラム体験レッスン!

8348views

上野学園大学 楽器展示室」- Web音遊人

楽器博物館探訪

伝統を引き継ぐだけでなく、今も進化し続ける古楽器の世界

12462views

音楽ライターの眼

連載20[ジャズ事始め]ジャズは自分にとってなんなのかを追求した日本人・穐吉敏子の答え

2131views

JTBロイヤルロード銀座

オトノ仕事人

日本では出逢えない海外の音楽体験ツアーを楽しんでいただく/海外への音楽旅行の企画の仕事

6564views

われら音遊人 リコーダー・アンサンブル

われら音遊人

われら音遊人:お茶を楽しむ主婦仲間が 音楽を愛するリコーダー仲間に

7554views

reface

楽器探訪 Anothertake

コンパクトなボディに優れた操作性が溶け込んだデザイン

5681views

武満徹の思い「未来への窓」をコンセプトに個性的な公演を/東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル

ホール自慢を聞きましょう

武満徹の思い「未来への窓」をコンセプトに個性的な公演を/東京オペラシティ コンサートホール:タケミツ メモリアル

13584views

パイドパイパー・ダイアリー Vol.8 - Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

初心者も経験者も関係ない、みんなで音を出しているだけで楽しいんです!

5021views

引っ越しのシーズン、電子ピアノやエレクトーンの取り扱いについて

楽器のあれこれQ&A

引っ越しのシーズン、電子ピアノやエレクトーンを安心して運ぶには?

105174views

東京文化会館

こどもと楽しむMusicナビ

はじめの一歩。大人気の体験型プログラムで子どもと音楽を楽しもう/東京文化会館『ミュージック・ワークショップ』

7125views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

28812views