



音の良さそうなデータ
全体のバランスが良く、時間変化も自然。
データでこの様子なら試聴に期待。
(大橋さん:談)
多分使えないデータ
極端にバランスが悪く、時間変化も不自然。
特殊な用途でない限り使えそうに無い。
(大橋さん:談)
大橋:まあ、それはわれわれ開発サイドにも原因があったと思うんです。今までのシネマDSPに搭載されてきたゲームのプログラムは2chのアナログで入ってくるものをターゲットにしていたので、音の方向感よりも雰囲気を変えること、空間の広さや迫力に重点を置いていました。ところがマルチチャンネルのゲーム機、具体的にはXbox360のようなマルチチャンネル再生に対応した機種で、FPS(編注:ファーストパーソン・シューティングゲーム、一人称視点のシューティングゲームのこと)のような、背後から迫ってくる敵などを音の方向感でも表現しているゲームでは、ただ音場を広げたり響かせたりするのでは方向感が出にくくなってしまう。それに、せっかく敵が背後から迫ってくるのなら、それに合わせて音場を造ってあげるべきだろうと(笑)。そういうところが出発点ですね。
‥‥‥でも、ゲームの音とひとことで言っても、いろいろあるわけでしょう?
大橋:そうなんですよ。方向感だけを正確に出そうとすれば、今度は音場のほうが大人しくなってしまう。別のゲームにはあまり合わなかったりするんです。アクションゲームとひとことで言っても、シューティングもカーレースも、スポーツ物やパズルゲームもアクションなわけでしょう。たとえばシューティングとカーレースを比べると、前者はDSPレベル最小でちょうど良く、後者はDSPレベル最大でちょうど良かったりとか‥‥‥。今まではそういうことを何も考えずにゲームのプログラムを作っていたなあ、と改めて感じまして、これまでとは全く違う物を、2種類造ることにしたわけです。
‥‥‥今度のはアクションとロールプレイングというのがあるんですね。
大橋:はい。アクションは先ほども言いましたように定位感と方向感を重視したもの、そしてロールプレイングはアクションをベースにムービーシアター系の要素を入れ込みまして、映画的な効果をより重視したものになっています。実は今回、このゲーム用プログラムのために、新しいパターンの反射音データをひとつ起こしているんですよ。
‥‥‥ほう。それはなかなか贅沢ですね。
大橋:最初はムービーシアター系のもので行けないかと思ったんですが、やはり映画向けの包囲感を重視した音場なので、エフェクトを派手に掛けていくと定位がどうしても乱れてくるんです。そこでエフェクトを派手に掛けても定位が乱れない素材をいろいろと探しました。
‥‥‥具体的にはどういった関係の素材なんですか?
大橋:ムービーシアターには通常、コンサートホールとかオペラハウスの素材を使うんですが、ここでは、とある場所にあるやや小さめのコンサートホールのデータを使っています。意外と素直な伸びをしていて、加工次第では定位を崩さずに広がりが出せるんじゃないかと思ったんです。
‥‥‥そういう音場素材のストックって、膨大にあるんでしょう?
大橋:そうですね。まったく使ったことのないものもたくさんありますし、現在使っているものの元データを改めて見直すこともあります。データを眺めて、使えそうなものはないかなと。
‥‥‥それって、眺めただけでわかっちゃうんですか?
大橋:何年もデータを眺めて試聴して、を繰り返していると、反射音データを見れば大体の傾向は判断できます。 もっとも、最終的には実際に聴いてみるまでわからないところもありますよ。一見キレイに見えて実はつまらない音のものもあれば、逆にデータ上はバラついて見えるものが、意外といい感じの複雑な響きを持っていたりすることもある(笑)。まあ、全然使えそうに無いものはほとんど見ただけでわかりますけど。
‥‥‥えっ、最初からダメなデータというのもストックしているんですか?
大橋:ありますよ。音場測定では、もちろん良さそうな場所のデータも取りますが、研究用に取っているデータもありますし、全てが AV製品用という訳ではありませんから。「ダメ」といっても、用途によっては使い方次第で効果的ということもありますが。
‥‥‥へえ、そういうものなんですね(笑)。まだまだお伺いしたいことはたくさんあるのですが、シネマDSP開発の一端に触れることができて大変参考になりました。新しいシネマDSP-plusにはこれまで音場エフェクトを敬遠なさっていた方にとっても、試してみたくなるプログラムがたくさんありそうです。ぜひ一度、開発者の情熱が詰まったシネマDSP-plus搭載のヤマハDSP AVアンプで、その真価をお確かめいただければ幸いです。
