麻倉 市場価格が10万円以下というコストパフォーマンスのよさも、かなりインパクトがありましたよね。マーケティングご担当の加藤さんとしては、予想を上回る成功だったのでは?
加藤 そうですね。昨年(2008年)11月の発売後、おかげさまで当初予定の2~3倍というペースで売れています。発売タイミングも非常に重視して、開発陣には納期に関して随分無理をしてもらいました(竹下は苦笑)。ただ、開発スタッフから上がってきた完成品の音を聴いた際、「この価格帯でこのサウンドなら絶対にいける」という密かな確信めいたものはありました。興奮して、周囲の同僚に「いいからこの音を聴いてみて!」と声を掛けた記憶があります(笑)。
麻倉 これまでの「YSP」シリーズと比べて、新しいユーザー層を開拓できたという手応えもあるでしょう。

加藤 かなりありますね。例えば『YRS-1000』の場合、約8割のお客さまがテレビと同時にご購入されています。しかも多くの方が、音質だけではなくスタイル、さらには各テレビ・レコーダーとのリンク機能などを、重要な購入動機として挙げてくださっている。売り場に関しても、従来のオーディオフロアよりむしろテレビ売り場を中心に展開しています。従って、広告・露出メディア・カタログなどのプロモーションも、洗練されたライフスタイルを想起できるビジュアルやコピーを盛り込みました。

麻倉 オーディオ機能とインテリア性の両立という「POLYPHONY」シリーズのコンセプトに、それだけ潜在ニーズがあったということだね。たしかに手っ取り早くテレビの音を良くしたい一般ユーザーにとって、設定の簡単さやリンク機能の使い勝手はきわめて重要です。今回、主要6メーカーのテレビやレコーダーに対応しているということだけど…。
加藤 はい。HDMIによるリンク機能によって、テレビのリモコンを操作するだけでラック本体のオン/オフ、音量調節、入力切り替えなどが可能です。リビングで日常的に楽しむオーディオというのは、無意識のレベルで享受できてこそ価値があると思うんですね。テレビのリモコンボタンを押せば何もしなくてもシアターラックが起動する。ボリュームを上げれば無意識にラックが呼応する。複数のリモコンを使い分けなくても基本操作ができてしまう快適性には最後までこだわりました。また今回、オプションの金具でテレビの壁寄せ設置にも対応していますが、美しいリビングにテレビを壁掛けしているように設置できることが好評です。「VESAマウントアーム規格」に準拠し、幅広い機種に対応しています。
〈壁寄せ設置〉


麻倉 テレビメーカーを選ばないというのは、ユーザーにとってはメリットが大きいですね。「主要6メーカー製に対応」と正面切って謳えるのは、テレビを手がけていないヤマハならではの強みだね。
竹下 そうかもしれませんね(笑)。実際、どのメーカーさんもきわめて密に技術協力をしてくださっていて。定期的に細かいテストも実施し、きっちりと連携性を確認しています。これについては、お客さまに確実な判断をしていただけるよう、具体的な製品名・品番まですべてチェックして ホームページ上で公開 しています。実を言いますと、ヤマハのサイト上でもこの該当ページは格別アクセス数が高いと聞いています。
麻倉 自分のテレビが対応しているのかどうか、確認したいユーザーがそれだけ多いんでしょうね。「POLYPHONY」シリーズでは、今後もさまざまなシアターラックを手がけていく予定ですか?
加藤 はい。今回の『YRS-1000』ではたまたま「YSP完全内蔵型ラック」というソリューションをご提案しましたが、優れたオーディオ機能とデザイン性を融合させるという意味では、これ以外にも無限の切り口が考えられます。むしろ重要なのは短期的なトレンドに左右されず、リビングで長く使っていただけるインテリア性をいかに追求するか。その方向性をしっかり保ちつつ、いろんなアイデアを検討していきたいと考えています。
二村 「YSP」シリーズがどちらかというとオーディオ・コンシャスなユーザー層に訴求する製品だとすれば、「POLYPHONY」シリーズは家族みんなが集まるリビングで日常的に使っていただける製品だと思います。デザイナーとしてはその原点を忘れず、広くいろんな方のライフスタイルに合うように提案していきたいですね。
竹下 オーディオメーカーである私たちヤマハの原点は、あくまでも音質です。とりわけシアターラックのようにフォルムが重要なジャンルでは、与えられた条件におけるチューニングがきわめて重要になります。「POLYPHONY」というシリーズ名に相応しく音、機能、スタイルが調和するよう、今後も高いハードルに挑み続けていくことで、「POLYPHONY」を進化させて参ります。




