インタビュー3

アーティストインタビュー

NO BORDER, KEEP GOING マリンバ奏者 SINSKE
先鋭的なサウンドを駆使するマリンバ・プレイヤー、SINSKEのニューアルバムがリリース

SINSKE
桐朋学園音楽大学、ブリュッセル王立音楽院、アントワープ音楽院の各打楽器科を首席で卒業。テヌート2000音楽コンクール(ベルギー)にて優勝、トロンプ2000国際音楽コンクール(オランダ)にて第3位、そして世界的に最も権威あるマリンバコンクール「第3回マリンバコンクール(ドイツ)」にて第2位を受賞、その後も多数のコンクールにて入賞する。世界的に著名なマリンビスト、ナンシー・ゼルツマン氏に「彼は私の非常にお気に入りの奏者である。カリスマと両立するユニークで表現力豊かな演奏。彼のイマジネーションは世界を越える」と大絶賛される。
SINSKEが感じる本能的音楽を表現するため、ヤマハは世界に1台のEMP(Electric Mallet Percussion)と呼ばれるMIDIマリンバを開発。世界初のEMP奏者としてさらなる独自の音楽表現手段を獲得。
「No Border, Keep Going」をモットーにポップス、ワールドミュージック、現代音楽など幅広いフィールドで活躍中。作詞、作曲、総合芸術プロジェクト等、マルチアーティストとして多彩な活動を繰り広げている。ベルギー在住。
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インタビュー3

-1stアルバム「INFINITY」から、1年半ぶりのニューアルバム「SELF EXPOSURE」がリリースされました。自己露出という意味ですが、タイトルに込められた想いを。
まず「INFINITY」については名刺代わりということで、マリンバっていうのは無限の可能性があるんだと、人々にマリンバのイメージを無限に広げてもらう役割を担っていました。
今回の「SELF EXPOSURE」は、自分が作りためていた曲による自己表現という部分に重きを置いて、自分の中で制作するという一面と演奏するという一面、似て非なるこの二面性を一つの作品としてしっかり昇華させたいという想いがありました。マリンバの無限の可能性の次は、自分自身のキャラクターを前面に出してみようかなと思って。プレイヤー、クリエイターの両面を一つにまとめたかった。

-Jazz界やクラブミュージック界から実に豪華なミュージシャンとコラボレーションなさっていますね。
はい。今回は様々なトップクリエイターの方とのワークによって、音楽的な可能性が開けたことが大きな収穫でした。僕自身、マリンバのサウンドがメジャーシーンの音楽を創っていらっしゃる方のフィルターを通った場合、どういう風に料理されるかにとても興味を持っていたものですから。

音楽に対する僕のコンセプトは、「難しいものを、角度を変えることでいかにわかりやすく伝えるか」なんです。もちろん難解なものにも良さはあるのですが、一般の方にはその良さが伝わりにくい。だったらちょっと角度を変えて、わかりやすい形にして良い部分を出したかった。例えばクラブミュージックって、ある種独特のフロアで展開される世界じゃないですか。でも、その曲が持つポップな部分をフォーカスすることで多くのユーザーの方にもアピールできると思うんですよ。「SELF EXPOSURE」の制作にも参加してくださったJazztronikの野崎良太さんやJ-POPも数多く手掛けてらっしゃる福富幸宏さんもそういった手法をとられています。ほかにプレイさせていただいたtokuさん、Fried prideのshihoさんも音楽への姿勢が似ているんですね。tokuさんはジャズにフィールドを置くプレイヤーなんだけれどもロックも歌う。クロスオーバーですよね。そういうボーダーを介さない活動にとても魅力を感じます。今回の収録曲は、自分がトラストしているミュージシャン達が僕のポテンシャルをどのように料理してくれるかという期待感をあおるように進んでいきます。そして後半にいくにしたがって、僕が作りたかった音楽世界のよりディープな部分に潜っていくようなテイストに。10曲目の「BLUE AFTER THE RAIN」なんかまさにそう。 そして最後には「I'LL NEVER CHANGE」というアコースティックとバンド編成によるナマのマリンバの曲を置いて、今後の活動を予感させるような、アルバムを通して一つのストーリー仕立てにしています。昨今メディアプレイヤーの発達でどうしても曲がシャッフルされることが多いのですが、僕はCDを1曲目から最後まで順番に聴いてもらえる作品づくりをしたいと思っています。だから曲並べにはかなりこだわりますよ。

-さまざまなミュージシャンから得た物は?
クラブミュージックシーンのクリエイターから得たものは、熱さですね。それと音楽的な引き出しの多さに影響を受けました。レコーディングも言葉のいらないところで作業が進む。
あと、クラブミュージックにはスティーブ・ライヒと親交のある方が多いんですが、実は僕も彼とは縁があって、3、4年前にベルギーを拠点とするコンテンポラリー・ダンスのリーディング・カンパニー、ローザスとともに、スティーブ・ライヒの「ドラミング」という曲とダンスをリアルタイムでコラボするツアーをまわったんです。その際スティーブ・ライヒ本人とも話すこともできました。ちょうど海外でアルマーニのショーの仕事をいただいて、スティーブ・ライヒの楽曲とDJをかませたりして、ファッションシーンでマリンバを演奏する機会が増えていた頃で、ミニマリズムに興味を持って、スティーブ・ライヒを聴いて倒錯感が面白いと思っていたんです。ミニマリズムってワンカラーだから一般の方には同じように聞こえてしまい、退屈でつまらないと思われがち。だから微妙なチェンジの妙をわかりやすく表現すれば良さがわかってもらえるのでは?っと。今回のアルバムでも色々コードチェンジしながらの音程の反復をたくさん使っています。

-SINSKE氏がリスペクトするアーティストは?
レモンジェリーやフランスのクラブシーンで活躍するサンジェルマンというアーティスト。サンジェルマンの「ソー・フルート」という曲がクラブ音楽に傾倒したきっかけですね。
レモンジェリーはもともとグラフィックアートをしている人で自分のアートテクチュアもされていて、DVD動画も自分で全部作ったものに音楽を乗せていて面白いですよ。
-ご自身のイマジネーションも刺激される?
今回のアルバムコンセプトを、僕は「マリンバ立方体」と呼んでいるのですが、音楽空間の立方体化を大切にしています。
もともと僕はミュージシャンとして音を構築していくタイプというよりは切り取るタイプなんですよね。ポーンと沸いたイメージを、一瞬で静止画にして切り取ってその場面を音として表現することがよくあります。また逆にオーディエンスサイドから見た映像だったりすることも・・・。そういったイメージソースを大事にしているので音楽空間の立方体、つまり拡がるシーンが大きいアーティストに心酔してしまいます。レモンジェリーには独特の空間性があるんですよ。

-今後の活動の抱負を聞かせてください。
今コンサートで大切なのはリスナーの方にクロスオーバーを促すこと。その入り口を広げるのがプレイヤーの仕事だと思うんです。僕は現代曲もクラシックもやっていますが、そういった括りを取っ払ってSINSKEのやってることだから面白そうだから観にいってみようと思わせる、僕の発信する物に魅力を感じてもらえるアーティストになっていきたい。
-良い音を出すコツはありますか?
自分の出している音がどのように相手に届いているのか、そのイマジネーションが持てないといい音は出せません。そのイマジネーションによって、楽器やマレットの選び方だって変わってくる。自分の出したい音のコンセプトをしっかり作って、マリンバを選ぶことが大切です。僕の場合、ヨーロッパではメインでヤマハの6000を使っていました。乾燥しているところで良い音が鳴るからです。日本だとツアーが多いのでトランスポータブルな5100を使うことが多いです。
プレイは、低音の響き、中音のまろやかさ、高音の倍音の高いもの、この3種類をしっかり使い分けて演奏できるようになるといい。
-最後に、狭い世界から抜け出せない、どうやって自分の世界を広げたらいいかわからない、と悩んでいる若きプレイヤーたちへアドバイスを
基本は好奇心のアンテナを張り巡らせること。常に身のまわりに研ぎ澄ましていることで、気になることやキーワードって落ちていると思います。チャンスを見つけたら怖がらずに自分の背中を自分で押す気持ちを大事にしてください。
チャンスはどこにでもころがっているはず。それを出会いと感じられるかどうかが重要です。自分のポテンシャルを探して見つけていくことが才能だと思う。それを打楽器に見いだせたなら堂々とアクティブに突き進んでください。

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安倍 圭子

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