打楽器とは?

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打楽器とは?

打楽器はあらゆる楽器の中で最も古く、また世界中のどこにでもある普遍的な存在です。おそらく人々は草笛を吹いたり弓を弾いたりする前から、石や木片を叩いてリズムをとったりしたのでしょう。古く普遍的な楽器でありながら、「打楽器とは何か?」を定義するのは難しく、ある音楽辞典では「打つ、こする、はじく、振るなどの演奏方法で音を出す楽器の総称」と説明しています。しかしこれでは、弦を弓でこするバイオリンなども打楽器に含まれてしまいます。

楽器学の標準となっているホルンボステルとザックスによる体系的分類では、「体鳴楽器」「膜鳴楽器」に位置づけられているものがほぼ打楽器に相当します。

「体鳴楽器」とは、カスタネットやトライアングルなど塊や棒状の発音源自体が鳴り響くもの、「膜鳴楽器」とは膜の振動を胴などに共鳴させるもので、ティンパニをはじめさまざまな太鼓類がこれに相当します。とはいえ、体鳴楽器の中にも打楽器に分類されないものもあれば、サイレンやホイッスルのように分類上は「気鳴楽器」でありながらオーケストラでは打楽器奏者が担当する楽器もあります。

結局のところ、「打楽器とは何か?」という問いになるべく矛盾なく答えようとすれば、「打楽器奏者が演奏するものすべて」「打楽器として演奏されるものすべて」と言うしかない、というのが現実です。こうしたややこしさの原因は、西洋音楽の歴史の中にあります。現代の音楽用語の大半は西洋クラシック音楽を基礎としており、西洋では残念なことに長い間打楽器はあまり重要視されませんでした。

もちろん打楽器がなかったわけではありません。中世の街では教会の鐘が人々の生活を秩序づける重要な役割を果たしていました。バロック時代にはトルコからの影響を受け、ティンパニやシンバルなどが軍楽隊に採用されるようになりました。

しかしそれでも西洋音楽では打楽器はあくまで副次的な存在でしかありませんでした。18世紀から19世紀にかけてクラシックの基本レパートリーが形成され、オーケストラや室内楽の編成が確立されていく中で、打楽器は、弦楽器や管楽器そして鍵盤楽器を中心とした合奏に、アクセントを添える装飾的な役割にとどまっていました。そして合奏の標準編成から外れたものがすべて打楽器奏者に任され、「打楽器」に総称されることになってしまったのです。

ちなみに同じ頃アジアでは、既にガムランなどの高度な打楽器合奏が栄えていましたし、アフリカでもさまざまな種類の太鼓や木琴が発達して、打楽器はむしろ文化の中核的な存在でした。アメリカ大陸でも、アフリカから労働力として移住させられた人々が、特に大衆音楽の領域で打楽器を活用したさまざまな新しい音楽を展開していきました。

こうした非西洋地域での豊かな打楽器文化の中でも、とりわけアフリカ系アメリカ音楽は、20世紀に入るとジャズやさまざまなラテン音楽を生み出し、それらは世界中に流行して絶大な影響力を及ぼしました。ジャズ文化の中からは何種類もの打楽器をひとりで演奏できるドラムセットが考案され、20世紀後半のロックやフュージョンにも受け継がれて、ポピュラー音楽に不可欠の地位を占めるようになりました。中南米音楽からもボンゴやコンガ、スチールドラムなどさまざまな楽器が世界に広まっていきました。

こうした流れの中で20世紀を迎える頃から、西洋クラシック音楽もようやく打楽器に積極的に目を向けるようになりました。リムスキー・コルサコフやリヒャルト・シュトラウスはさまざまな打楽器によってオーケストラの色彩を豊かにし、ラヴェルやストラヴィンスキー、バルトークは、ガムランやジャズの影響を受けながら、打楽器を装飾的役割から解放し、合奏の要として華やかなスポットを当てました。打楽器だけによる独奏曲やアンサンブル曲も次々と生み出され、ついに打楽器が主役の座に躍り出ることになったのです。前衛音楽が流行し、作曲家たちがこぞって「新しい響き」を求めようとした1950年代から70年代には、おびただしい種類の楽器を駆使した超絶技巧的な打楽器作品がたくさん作られ、打楽器は時代の花形でさえあったのです。

そして21世紀の今、洋の東西を問わず、またポピュラー、クラシック、現代音楽といったジャンルを問わず、さまざまな音楽が交流し相互に影響を与え合う中で、打楽器はどんな音楽にも不可欠な存在となっています。さまざまな歴史や文化を背負った打楽器が、さまざまな文脈の中で用いられます。打楽器は音楽の性格やジャンルを決定づけ、音楽家の立場や思想をさえ示すと言ってよいでしょう。

ところで、多岐に渡る打楽器をどのように整理・分類するか、これもまた打楽器の定義と同じくらい難しいことです。一般には下記のようなさまざまな区分が臨機応変に適用されています。

  • 叩く楽器、振る楽器といった奏法による区分
  • 金属製、木製、皮製など発音源部分の素材による区分
  • 音程が定まっているか(有音程)、定まっていないか(無音程)の区分
  • 音板の有無による区分(音板のあるものを「鍵盤打楽器」と呼ぶこともあります)
  • 地域や民族による区分
  • マーチング用、コンサート用といった演奏形態による区分
  • 教育用、療法用といった使用目的による区分

<例>ある分類方法による打楽器の区分わけ

有音程楽器

無音程楽器

分類の多様さは、そのまま打楽器の多様さ・多彩さを示しています。今や打楽器奏者が扱う楽器の種類は無限に拡大しており、演奏家はそれらの奏法だけでなく、背後にある古今東西のあらゆる音楽文化に対する理解までも要求されています。たったひとつの打楽器の音が、音楽を左右するといっても過言ではないのです。
(「管打楽器の新しい楽器学と演奏法」より一部引用)

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