チェロで現代音楽を東京フィルと共演
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1970年チャイコフスキー国際コンクールで優勝以来、常にクラシック界を牽引してきたチェロの巨匠ダーヴィド・ゲリンガス氏が、去る6月25日サントリーホール・26日東京オペラシティ・コンサートホールにて、東京フィルハーモニー交響楽団と共演。
現代作曲家エルッキ=スヴェン・トゥールの「電子チェロと管弦楽のための協奏曲」を日本初演し、 聴衆を沸かせました。ここに当日の模様とゲリンガス氏のインタビューをご紹介します。
6月25日 サントリーホール
リハーサル風景


指揮者クリスチャン・ヤルヴィ氏と打ち合わせに余念のないゲリンガス氏


ヤマハ・スタッフとぎりぎりまでエフェクターや音響チェック。
コンサート本番


曲の冒頭からグリッサンドでサイレントチェロの音が響き渡り、オーケストラの十二音技法的旋律と融合。
やがて、ロック調のリズムとも感じられる活気に満ちたサウンドをチェロが先導し、ラストは感傷的なカノンを奏でるオーケストラからチェロとコントラバスだけになり消え入るように終演。


満場の喝采を受けるゲリンガス氏
アンコール

アンコールに応え、各種エフェクターを駆使し「R.コルサコフ/熊蜂の飛行」と「カザルス/鳥の歌」をソロで披露。全く新しい音楽にオーケストラもお客様も驚愕と感嘆に場内は包まれました。
Artist Interview
聞き手:芹澤一美

──サイレントチェロとオーケストラとの共演、トゥールの作品、ともに日本初演となる演奏になりました。3楽章形式で書かれた「電子チェロと管弦楽のための協奏曲」は、多彩な曲想を持つ興味深い曲ですね。エストニア生まれの作曲家、トゥール氏はロックバンドに所属した経歴もお持ちだそうですが、この曲とはどのように出会われたのですか。
ゲリンガス(以下G氏) 1990年代に、私から作品を書いていただけるようにお願いし、でき上がったのが97年です。それ以来、すでに 40回以上演奏しています。もともとアコースティックの楽器のために書かれた作品ですが、現在のように電子楽器で演奏することによって、色彩がより豊かになると考え、作曲家へ提案しました。演奏に電子楽器を使う、つまりライブ・エレクトロニクスという演奏の形を使うという点については、ごく自然な音楽の発展の延長線上にあるものだと私は思います。

──演奏会では右足でエフェクトを操作されていましたが、はじめは作曲家のトゥール氏自身がエフェクトの操作を行ったそうですね。
G氏 ええ。最初はトゥールがホールのモニターを使って音を加えていく方法で効果を試していました。私はそれを聴いて、トゥールが何を想定しているのかがわかったので、それを演奏者がエフェクターを使ってやればいいだろうと考えたわけです。エフェクターの部分は、その時の自分の気分やホールの響きの違いなどによって毎回異なります。インプロビゼーション(即興)と考えてください。響きについては、ホールの大きさ、音響によっても違いますので、毎回、ホールの音響技術者に調整してもらいます。演奏会はどれもその日その時限りの唯一無二のものですが、この作品は特に即興性が高いですね。
──演奏家としてそれは非常に魅力的で楽しいことでしょうね。
G氏 もちろん! 音楽というのは一過性のもの。その時、その瞬間に響くものですから、そういう意味でもインプロビゼーションの要素が含まれているということは私にとって常に大きな喜びを感じています。

──サイレントチェロには、これからどのような可能性があるとお考えでしょうか?
G氏 この楽器にはたくさんの可能性があると思います、この楽器を使うことで、新しい音楽を開発することができますし、新しい響きを自分で発明することもできます。トゥールは常々、生楽器のために書いたこの曲の中に、ライブ・エレクトロニクスを持ち込み、使いたいと考えていました。この楽器だからこそ、それが可能になりました。この楽器は実にたくさんの可能性を秘めていると思います。
──ゲリンガスさんご自身は、サイレントチェロの魅力をどのように感じておられますか?
G氏 この楽器は、もともとは音が出ない楽器として開発されたという最初の出発点を忘れてはいけません。練習をするための楽器として開発されたわけですが、さまざまな電子技術の可能性を盛り込むことによって、また別の次元を開くことになりました。たとえば、ポップミュージックなどの分野でもとても興味深いことを可能にしてくれましたし、それはいろいろな音楽を演奏できるという喜びに繋がりました。とりわけ、いろいろな歌を演奏するという楽しみも増えました。あるいは映画音楽などの演奏にも向いていると思います。この楽器は、とてもエキサイティングな可能性をもたらしてくれています。

──サイレントチェロを使って、今までどのようなことをやられましたか?
G氏 いくつかの作品を演奏していますが、特に共演する他の楽器もアンプで音を増幅している場合はサイレントチェロはとても共演に向いていると思います。舞台での演奏はもちろんですが、この楽器と向き合い、演奏することそのものが、とても大きな喜びをもたらしてくれます。私は、この楽器を使って演奏する喜びというものをとても大事にしているのです。
──最後に、日本のチェロ愛好家、音楽ファンの皆様に、メッセージをお願いします。
G氏 音楽は世界の人々の心をつないでくれます。日本の音楽ファン、チェロファンの方々にもこの楽器を演奏することで、たくさんの喜びを感じてほしいと思います。
──本日は、どうもありがとうございました。
協力:東京フィルハーモニー交響楽団 / 梶本音楽事務所