柏木 広樹

スペシャルインタビュー

ブラジル音楽のバンドBOSSA DO MAGOや葉加瀬太郎グループでライブやレコーディング・メンバーとして大活躍のチェリスト柏木広樹氏がこの夏2枚目のアルバム「CASA FELIZ カーザ・フェリース」をリリース。独自の世界をチェロという楽器を通して表現し続ける情熱とアルバム制作にかけた想いをお尋ねしました。

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―本日はお忙しい中ありがとうございます。今回リリースされた「カーザ・フェリース」は「幸せな家」という意味だそうですが...

柏木氏(以下K氏) / はい、このまんま。「家 !」「楽しい!」「しあわせ!」トータルコンセプトです。共同プロデューサーのタロマ(編集注:越田太郎丸氏)と2人で相談しながらどれだけ輪を広げるかというところから始まった。
参加ミュージシャンも最初はバンドだけで5人でやろうかなと考えていたんだけど「幸せな家」にするためにはもっと色んな人達に訪れて欲しい、参加して欲しいと思い出して...


―アルバムの最初のほうで楽しいコーラスが入っていますね。

K氏 / あぁ...へたくそなコーラス! あれは上手いと面白くないんですよ。(笑)


―仲間がたくさん集っている「家」の様子が伝わってきますね。

K氏 / 宴会系ね。(笑)

―いえいえ、もっとお洒落な感じ。(笑)

K氏 / あのね、この家はカギがかかってないんですよ。僕の家なんだけど...気持ちの上では色んなミュージシャンが訪れてくれて好きな楽器を演奏する。でもそこにはリスナーの人達にも来てほしいわけ。だから出入り自由、その場で寝ていてもいいし、庭で遊んでくれてもいい、疲れたら勝手に帰ってくれていい、オープンなの。そんな感じかな。
アレンジは2ヶ月くらいかけたんだけど、簡単な譜面と音資料だけ共演ミュージシャンに送って、録音当日はもう本当に好きに楽しく演ってもらった。うちに来てくれた、それが大事。だから自由、好きにやって。そこから生まれるアイディアがまたいいんだ。和気あいあい。今回一緒にやってもらった人達はみんな僕の好きな人達、好きな音を出す人達、尊敬する人達。もちろん、これだけは!という僕の想いとコンセプト、若干のルールは伝えるけどね。


―ゲスト・ヴォーカルにクレモンティーヌが参加されているのもすごく魅力ですね。

K氏/そうですね。レコード会社のスタッフが、「彼女参加してくれそうだけど、どうする?」と言われて「やる!やる!」(笑)
「曲どうしましょうか?」「書いて下さい」「えぇ! いいんですか?」「お願いします」そんな感じ...
クレモンティーヌとは何回かセッションしたことがあって、今回は僕が見たクレモンティーヌ像を曲にしてみようと思った。
出来た曲を彼女はとても気に入ってくれて、お互いなんにも言うことないなーといったカンジで進められた。彼女って都会的、華麗なパリの女性、お洒落...日本ではそんなイメージじゃないですか? でも僕から見ると、すっごく可愛い女性、少女なの、女の子。だから彼女の可愛らしさを追及して作ってみた。そんな考えを彼女に伝えて、成立!楽しかったね。海外とやりとりしているのに、家の中で会話しているみたいで。


―とってもイイカンジですね。
このアルバムはブラジル系のサウンドにジャズやフュージョン、フレンチポップスのテイストも入っていて、本当にお洒落だなと思いました。失礼ながら、最近チェロでボサノバをやられるアーティストが増えてきたように思うのですが、チェロってこのあたりのジャンルが似合う楽器なんでしょうか?

K氏 / 他の人はわからないけれど、もともと僕はずっとラテン・ボサノバ、ブラジル音楽をやってきたから、僕というフィルターを通した自己表現がブラジルなの。もし今、次のアルバムをつくれと言われたら、僕はまたブラジル音楽を選ぶと思うな。
それは、僕がなのか、チェロがなのか、わからないけれど、すごく入っていきやすいんだ。

―そもそも柏木さんがチェロをはじめられたのは何歳からですか?

K氏 / 7歳、最初のチェロは1/2サイズでしたよ。

―なぜチェロを?

K氏 / それまでずっとピアノを習ってたんだけど、もう嫌で嫌で...もうやめたいとずっと親に言ってて、代わりに何か他の楽器をはじめるんだったらやめてもいいよって。それでチェロ。初めてさわったとき、ファースト・コンタクトとしてはよかったんですね。「おっいいぞ!」って。なんか感じるものがあったんだね。

―東京芸術大学に進まれていますよね。ずっとクラシックを勉強されたんですか?

K氏 / えぇ、楽器の演奏に関してはチェロで他の音楽にアプローチするなんて全然考えてなかったもんで。(そうそう、僕は向山佳絵子と同級なんです。)
でも聴くのは別だね、僕らはYMO世代だから。

―では、バッハを弾きつつ、YMOを聴いていらしたんですか?

K氏 / それはない! バッハはバッハで練習。だって僕はYMOの方が絶対面白いもん! (笑)

―ポップスをチェロで弾かれ、G-CLEFの結成に至ったのは?

K氏 / G-CLEFでデビューしたのは大学2-3年くらいのときかな。まわりの影響は大きいね。クラシック・アーティストがポップスを弾くとかいうのじゃなくて、ちゃんとバンドとしてやりたくなった。みんな本当によく勉強してたし、よく研究してた。そうしてバンド時代を経てタロマ(編集注:越田太郎丸氏)と出会ったんですよ。そこからブラジル音楽がスタート。
チェロってバイオリン以上に真面目な人が多いよね。僕は不真面目なの。色んなことに興味がありすぎて、色んなことに手を出しすぎる。僕はギターの連中がうらやましい。「この楽器はこうでさ、アンプはこうして、ああして...etc」とか熱く語り合っているのがね。同じ業界、同じチェロで色んな話ができたらいいな。佳絵子ですら(編集注:クラシックチェリスト向山佳絵子氏)、常によりよい音を、高い芸術性を求めてトレーニングを積んでいるんだ。すごいよね。
溝口肇さんなんてポップスのフィールドだけど僕とは違う。


―それはどういう意味で?

K氏 / 彼はアーティスト、かっこいいよ。僕は芸人だから...。根本的な部分、心意気は「芸人」なの。結局のところ、僕がいつも目指しているのは「お客さんの笑顔」なんです。それをどうやったら創れるのか、出会えるのか、ずっと考えてる。人が楽しいってどういうことなのかなって。そのために仲間はすごく大切だし、共演する彼らのイイところを舞台で見せられるとお客さんも盛り上がるし、僕も楽しい。それがぐるぐる廻ってんだな。
だから芸術を追及してこのアルバムをつくりました!ってCDは僕には一生できない。でも、どうやったら聴いている人たちがハッピーな気分になれるかなってことは、いつも考えてる。
僕は実を言うとすごいアガリ性なんです。


―えぇー! 信じられません!! ステージの柏木さんは完ぺきにエンターティナーでいらっしゃいますよ。

K氏 / ほんと、ほんと! 毎回 アガってます。でもそれより見たいんですよ、お客さんの笑顔を。そちらの想いの方が強いからライブをたくさんやるんです。
そしてセッションだとまた新しい出逢いがあるからそれがまたいい...「おっ? これは...Nice To Meet You だねー!」なんて。
今回のアルバムに参加してもらったアコーディオンの佐藤芳明さんもそう。彼とは某ジャニーズ系のレコーディングで初めて会ったの。で、即! 「ねねっ、電話番号教えて!」(笑)「絶対、次のアルバム作るときはあなたのために曲書くから参加してほしい!」って。「一緒にやりたい! 」ってね。
こんな出逢いってレコーディングとかライブであるんだよね。そうすると「ライブやりたい欲」がおさえられなくなる。アガリ性なのに。(笑)そしてステージに立つと「お客さんの笑顔! 」たまんない。エクスタシーだよ
100人いれば100様、色んな感じ方・受け止め方はあるけれど、1人でも多くの人に笑って欲しい、ハッピーになって欲しい。ライブハウスが一つの家になる。それが僕の「幸せな家」。

―お話をうかがっているだけで幸せな気分になりました。ありがとうございます。
柏木さんの使われているチェロはどちらのものなんですか?

K氏 / これは大学時代から使っていて、鑑定書がないからよくわかんないな。でもイタリア・クレモナ製です。かなり古いです。パワーはないけれど音色がすごく気に入ってます。包み込むような暖かさがあって。
楽器には満足してるの。弓はずっと不満だったけれど、最近オールド・フレンチのものを手に入れたから今は大満足! だから金欠状態!!(笑)

ヤマハカーボン弓を試奏する礒さん「フロッグがカッコイイ!吸い付きがよくて、パワーもあって弾きやすい弓ですね。」

―柏木さんは色んな場面でもサイレントチェロを使用されていますよね?

K氏 / 僕は2番目に発売されたSVC-200が気に入ってます。音色が好き、持ち運びも便利で使いやすいし。
僕にとってサイレントチェロはいわゆるエレキチェロだから、よりハードな音楽をやる時にいいんです。ドラムなんかとやる時にも負けない音量が出せるし、色んな音も作れるからね。
かと言って、他社から出てるエレクトリック・チェロと違って、もともとのチェロ特有の音質・やわらかさ・まろやかさ、そんな部分をサイレントチェロは残してあるから、アコースティックに近いところも感じられる。それがいいんだなぁ。エフェクターのノリも僕のアコースティック・チェロにのっけるよりはるかにやりやすいし。毎年夏の葉加瀬太郎との「情熱大陸」野外公演とかで大活躍してます。ライブハウスでもよく使うし。

―ちなみに本来の目的である「サイレント」としては使われないのですか?

K氏 / それはありません!(きっぱり)だって僕の家は防音されてますもん!


―失礼しました。(笑)

K氏 / 初心者とか住宅事情の問題を抱えている人達にはいいですよね。
あぁ、それからホテルの部屋!!コンサート・ツアーなんかでまわっていて、サイレントチェロが横にいると「助かったー!」
それから、あまり大きな声で言えないんだけれど、病院に入っていた時に病室で練習するのに助かったなぁ。(笑)

―(笑)今日は楽しいお話を色々ありがとうございました。今後のますますのご活躍をお祈りしています。


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