尺八演奏家・藤原道山が チェロに挑む!

尺八演奏家・藤原道山が チェロに挑む!

さまざまなアーティストや楽器とのアンサンブルにも積極的に取り組み、邦楽というジャンルを超えて音楽を追究し続けている藤原道山。今回彼が選んだのは、尺八とはまったく共通点のなさそうなチェロ。いったいなぜチェロなのか? そしてレッスンの成果はいかに?

(音遊人みゅーじん 2011年3月号より)

約1時間のレッスンが終わった後も、覚えた『月の光』を弾き続けていた藤原道山さん。「重心をどこに持っていくかが難しい」と言いながらも、弦を押さえる左手をほとんど見ずに音程をとっていたのはさすが。

僕はソロのほかに、チェロの古川展生さん、ピアノの妹尾武さんと組んで「古武道」というユニットでも活動しているんです。古川さんのチェロをいつも隣りで見ていて、どうやって弾いてるのかな、弾いてみたいなと、ずっと思っていました。ピアノは身近にある楽器で触ったこともあるんですが、チェロは触る機会もなくて。

というわけで、今回はチェロの体験レッスンを受けに行ってきました。今回は、サイレントチェロを使ってのグループレッスン。どんなレッスンになるのか、自分がどんな音を出せるのか、始まる前からわくわくします。

まず最初に、講師の石黒豪先生から、チェロの基本の構え方を教えてもらいました。実際に持ってみると、思った以上に楽器の大きさを感じて、油断すると左右の体のバランスが崩れてしまいそう。なるべく肩がまっすぐになるように自然体で座って、ネックを左肩のほうに倒し、フレームを両ひざの内側ではさんで手を離しても楽器が倒れないポジションで安定させます。

初めは崩れがちなフォームを先生がひとりずつ回ってチェックしてくれるのですが、「いいですね。首の傾け方が古川展生さんみたいです」と言われてしまい、ちょっと照れくさい。

みんなのフォームが整ったら、さっそく音を出してみることに。チェロの四本の弦は、一番手前(持ち手から見て右側)が最も太く、低い音。向こうに行くにしたがって弦は細く、音は高くなる構造。今回は、細いほうから順に、1番線04番線と覚えます。

弓は、上から右手をかぶせるように、四本の指と親指ではさんで持ちます。中指はまっすぐ、人差し指は少しだけ弓に巻き付けるイメージ。親指は反ってしまうと腕が動かしにくくなるので、ちょっと曲げた状態で。うーん、けっこう複雑です。

その弓を指板と駒の真ん中あたりで弦に乗せ、右ひじをリラックスさせてそのまま右に移動。すると、意外にあっさり、きれいな音が出てびっくり。尺八で音を出すのとは違って、体の中が響いているみたいに全身に振動がくる。チェロは横で聴いているだけでも振動が伝わってくるけど、演奏する人はこうやって響きを体で感じながら弾いているんですね。

弓を動かすときのポイントは、いつも重さが弦と弓の接点にかかるようにすること。弓の先に行ったら、人差し指のほうにしっかり重さを傾けてあげます。また、基本的には弓の手元から先まで全部を使って、常に同じスピードで弓を動かしていきます。

さて、今度は左手。弦を押さえるレッスンです。今日はネックの真ん中あたりを四本の指で押さえていく、ファーストポジションの位置を覚えます。チェロでは、人差し指から小指まで1から4の指番号がついていて、何も押さえない状態(開放弦)は0。弦を押さえて音を出すと、左手に振動が伝わってきます。これは、けっこう力がいるなぁ。

そしてレッスンの最後には、覚えたファーストポジションを使って、フランスの民謡『月の光』を全員で合わせてみることに。使う弦は2番線だけだし、単純なフレーズの繰り返しではあるのですが、左手の位置、右手の弓の持ち方と動かし方……意識する要素がすごく多い!

僕はいつも楽器を演奏するとき、〝どこに力を入れて、どこを抜くか‑0ということを考えています。が、今日は考えているうちに弓の持ち方が崩れて先生に注意されてしまいました(笑)。でも普段はここまで意識して演奏することがないので、大変だけど面白い。自分の楽器を持ったときにも、この気持ちをまた思い起こしてみたいなと思いました。筋肉の使い方だったり、フォームだったり、今まで無意識になっていた部分を見直すきっかけになったし、尺八に対するアプローチの仕方も変わってくる気がします。

あと、力が抜けるまでが大変だっていうのを改めて実感したので、弟子たちに教えるときにも、もっと優しくなれそう(笑)。チェロと一緒に演奏する曲を作るときにも、今までとは違う視点で曲作りができるかもしれませんね。

 

2番線から3番線のように、2本の弦を交互に弾くときは、弓の角度がかなり変わります。急な移動にならないように、ひじの高さを隣の弦に徐々に寄せながら弾いていきます。石黒先生曰く、「くねくね泳ぐ魚類のイメージ」(笑)。

今回の挑戦者・藤原道山(ふじわら・どうざん)プロフィール

藤原道山(ふじわら・どうざん)

10歳より尺八を始め、人間国宝・山本邦山に師事。東京藝術大学音楽学部邦楽科卒業。同大学院音楽研究科修了。2001年に『UTA』でデビュー、2007年に古川展生(チェロ)、妹尾武(ピアノ)とユニット「古武道」を結成。ウィーンフィルメンバーなど世界のトップアーティストとの共演、映画『武士の一分』の音楽にゲストミュージシャンとして参加するなど幅広い活動を行う。

ウェブサイト  http://www.dozan.jp/

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