
取材時はちょうど3年生が受験のために仮引退したばかりだったが、3年生にも加わってもらい集合写真を撮影。人数は多くないが、中村先生の熱心な指導のもと、全員が一致団結して全国大会金賞を勝ち取った
今回おじゃましたのは、全日本吹奏楽コンクールで2年連続5回目の金賞受賞し、注目を集めている東京都の小平第三中学校吹奏楽部。初心者ばかりで人数が多くない同部は、どのようにして偉業を達成したのだろうか。
※この記事は、月刊誌「バンドジャーナル」2007年12月号~2009年4月号に掲載された内容を一部改定して転載しており、取材当時の内容になります。制作:音楽之友社

指揮者
中村 睦郎先生
小平三中吹奏楽部の取材に伺って驚いたのは、全員で43名という人数。ちょうど3年生が引退した直後だったこともあるが、全国大会の常連バンドは人数が多いという先入観を覆す、予想外の展開だ。しかも、この地区の小学校にはバンドがないので、全員が初心者で入部するにもかかわらず、すぐに全国大会に出場するというからすごい。
いったいどうしたら、このような状況で毎年全国大会で金賞がとれるのだろうか?
同校を指揮する中村睦郎先生に、その疑問に応えていただいた。
「初心者のメンバーは、何も情報のないところで個人で練習しても上手くならないので、早い段階から合奏に入れて見学させます。少しでも出る音は吹かせて。それでも、予選の段階では、1年生はほとんど吹いていないのが実情です。吹き真似をしていることが多い(笑)。吹き真似で合奏に出ても意味がないじゃないかと思うかもしれませんが、吹いている人も吹いていない人も同じ気持ちでステージに上がった経験が、次のステージにすごく活きてくるんです」
最初は吹き真似でも、合奏の中で、先輩たちと一緒に音楽の流れにのって、呼吸し、身体を動かすことが上達の近道になるらしい。
「アンブシュアも姿勢も、良い音を出している先輩の真似をすることで身に付きます。スポーツでも一流選手はみな姿勢がいいですからね」
さらに、中村先生は次のように語る。
「大編成のバンドも、小編成のバンドも、生徒1人1人をしっかり見ていてあげることが大事。そういう意味では人数が少ないほうが逆に言うと簡単なんです。100人見るより30人見るほうが楽ですからね。小編成バンドは、そういう発想に頭の中を切り替えればいいと思う。アンサンブルコンテストでも、わずか3~8人ですばらしい音楽を作ることができるのですから」
クラリネットセクションが調和することが重要

現在、高橋東子先生(右)たち顧問陣と外部講師の二人三脚で活動を充実させている。中村先生と共に合奏指導するのは、クラリネット奏者の平井哲夫先生(左)とユーフォニアム奏者の納見淳子先生
それにしても、初心者を含めたぎりぎりの人数で全国大会に行くためには、尋常でない努力と工夫があったはず。
「特別なことはしていません。このバンドの武器は調和。音を1つにすることです。初心者が入ったメンバーでは、難しいテクニックで勝負できませんからね。そういう意味では、やはりクラリネットセクションが調和することが重要。クラリネットセクションが調和すると全体がそこにすっと入っていくんです」
そのため、中村さんは、クラリネットに時間もお金もかけるべきだと言う。
「クラリネットは、リード、リガチャー、楽器の調整などですぐに音が良くなる。道具でなんとかなる部分がかなりあるんです。逆に、楽器やリードが悪いと、どんなに頑張ってもダメですね。その意味では、楽器を1つのメーカーでそろえることが調和した響きを得るために大きなメリットになる。小平三中は、クラリネットは全員ヤマハを使っています。ヤマハの楽器は、遠くまで音が抜けてくるし、セクションで組んだときに非常に良い音がするんです」
まさに、人数が多くない中学校の希望の星である同校吹奏楽部であるが、演奏以外でも苦労はたくさんあったそうだ。
「実は、最初に全国大会に出たころ、顧問の斉藤先生が体調を崩されて休職されていたことがあるんです。私は外部講師ですから、演奏以前のところは外からだと把握できない。顧問がいない2年間は、演奏以外のトラブルがしょっちゅう発生していたんです。そのあと、顧問が戻ってきて二人三脚の体勢ができてからはうまくいくようになりました。
やっぱり、学校の先生、部員たち、指導者、保護者、地域の人々が、いかに密に協力できるかが大事ですね。最後は、子供たちがステージで輝いてくれるという目的に、みんなが同じ方向で合致すると力を発揮する。そういった運営の努力も絶対に必要です」

終始明るい雰囲気のクラリネットパート。まさに「調和」を実践するように、とても仲良く和気あいあいとしている。楽器は全員ヤマハで「音に清潔感があってコントロールしやすい」(中村先生)CSが多い

トランペットパートも、クラリネットパートに負けず、明るく団結力がある。楽器は全員ヤマハのゼノを選んでおり、音色もセクションで統一されている
中村先生に質問
Q クラリネットで良い音を出すためには?
A もちろん、音色のイメージや感じかたが大事ですが、やはり、アンブシュア、リード&リガチャー、楽器という3つのセッティングに尽きると思います。これらが揃わないことには、クラリネットは良い音が出ません。
Q 良い音楽をするためには?
A 作曲家が書いた音符の真髄に向き合っていくしかないと思います。そういうふうにしていけば、何かを感じるだろうし、聴いているお客さんも感動してくれるはず。作為的な演奏は作為的にしか伝わりません。
東京都小平市立小平第三中学校
毎年コンクールの前に、四字熟語をもじったスローガンを部員が考えているそうで、2008年は「初志感鉄」。他にも「感全燃勝」など、ストーリーを感じる名作も
東京多摩地区のベッドタウン小平市の市立中学校。今年で創立47年目を迎える同校は、「音楽活動を通した落ち着いた環境づくり」をモットーにしており、音楽祭には全校生徒が合唱で参加するなど、生徒の音楽活動を推し進めている。吹奏楽部も、学校や父兄が積極的に協力して支えている。吹奏楽部は昭和62年に創部。平成9年に現在の顧問である斉藤義夫先生が赴任すると、指揮者の中村睦郎氏と共に全国大会出場を果たした。以来、全日本吹奏楽コンクール2年連続5回目の金賞受賞という成績を残している。平成元年に開始した定期演奏会は、毎年3年生最後の演奏会として3月に行われる。








