ELEMENT-A-RHYTHM
“建築は凍てれる音楽である。”
詩人ゲーテのこの言葉(「建築は凍れる音楽」)は、オーディオ製品のデザインにも当てはまると信じています。音楽とデザインの構成要素には、強い類似点があります。製品の最終的なデザインは決して静的なものではなく、私たちの視線は、音楽を聴くときにメロディ、ハーモニー、リズムの輪郭をたどるのと非常によく似ていて、集められたデザイン要素の順を追っていきます。
Element-A-Rhythmは、ヤマハホームオーディオ独自のデザインフィロソフィーです。この言葉は『Element(要素)』と『Rhythm(リズム)』を組み合わせて作られた造語であり、ヤマハのオーディオデザインが追求するシンプルさの根幹をなす考え方でもあります。私たちのオーディオ製品では、形状や質感が生み出すリズムに着目し、それをデザインプロセスの核に据えています。五線譜の上に音符が一つひとつ丁寧に配置されるように、物理的な各要素がそれぞれの役割を全うしながらリズムを奏でることで、細部まで一貫したオーディオデザインが完成するのです。
「Element-A-Rhythm」のコンセプトは楽器のデザインに由来しています。楽器とは、一つひとつ完成された『Element(要素)』の集合体です。一方で、オーディオ機器は本来、無機質で幾何学的な「箱」に過ぎませんが、人間が操作する道具として機能し、人と製品の接点となるインターフェースを備えています。それらはシンプルに構成されていながら、無数のパーツから成る複雑な存在でもあります。
3つの原則
Element-A-Rhythmには、音楽と共通するヤマハのオーディオ製品にとって不可欠とされる3つの基本原則、「拍(Haku)」「間(Ma)」「時間(Jikan)」があります。ヤマハのオーディオ製品は、シンプルで精緻、かつ整然と並んだインターフェースを特徴としています。しかし、一見すると機械的なレイアウトに見えるその配置からも、心地よい音楽的な『Rhythm(リズム)』を感じ取ることができるのです。
質感、色彩、形状、サイズの違いによって生み出される強弱の二分法(二極性)を重視するとともに、特定の『Element(要素)』への配慮も行います。これには、同一要素の連続的な繰り返しも含まれます。
『Element(要素)』同士の距離やプロポーション(比率)に加え、要素と余白の比率、そして全体的な位置関係を考慮することです。これには、全体の密度や構成によって生み出される『余白』や、要素間に漂う『余韻』への配慮も含まれます。
連続性、強弱、秩序などに敏感であることで、一定の秩序を創出することです。これには、左右、上下、前後、そして円運動といった、レイアウトの中に暗示された方向性のある動きも含まれます。
デザイン事例
C-5000 HiFiプリアンプ
「Element-A-Rhythm」の代表的な例の一つが、オーディオ機器のフロントパネルのレイアウトです。堅牢なアルミニウムプレートの上にスイッチ類を適切に配置することで、3つの原則(拍・間・時間)が調和したデザインが生まれ、要素の集合体から『Rhythm(リズム)』を感じ取れるようになります。また、製品に施された印字(グラフィックス)も、オーディオ機器のデザインを構成する重要な『Element(要素)』の一つです。
ヤマハ ホームオーディオでは、『AV-STEREO』と呼ばれる独自のシグネチャーフォントを使用しています。文字の間隔(カーニング)に微細な変化を持たせることで、独特の流れを生み出し、デザインに付加価値を与えています。
YH-5000SE ヘッドホン
シルバーのアルミニウムはHi-Fi(ハイファイ)としての品質を象徴し、ブラックはプロユースとしての信頼性を高めます。私たちはこの2色を基本パレットとしながら、塗装かアルマイト処理かによって生じる色彩のわずかな差異まで精査し、色と質感の最適な組み合わせを追求しました。さらに、特定のパーツに応じた独自のトーンやアクセントによって全体を統一することで、配色の中にも『Rhythm(リズム)』を生み出しています。
WXA-50 ワイヤレスストリーミングアンプ
多くのオーディオ製品は、アルミニウムやスチールといった金属を主に使用しています。しかし私たちは、それぞれの機能に合った素材を選定することも重視しています。さらに、素材ごとに適切な仕上げを施すことで、製品全体に心地よい『Rhythm(リズム)』と調和を生み出しているのです。
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