1.製品コンセプト
ヤマハのHiFiスピーカーというと、最近では2006年の秋に出たHiFi系の「Soavo」(ソアヴォ)シリーズがまず思い浮かびますが、今回のNS- 700シリーズは見た目や技術的な特長でいうと、そこに通じる雰囲気がありますよね。いっぽう、商品ラインアップ上の立ち位置でいえば、当然シアタースピーカーとしての顔もあるでしょう。そこで、まずは新しい700シリーズがどういう方向性を目指して開発されたモデルなのか、といったあたりからお話を聞かせていただきたいと思います。
飛世: そうですね。私たちは「バーサタイル」と表現しているんですけど、今回の700シリーズは“スピーカーの万能選手”にしよう、というのが開発当初からの狙いでした。たとえばSoavoのときはヴォーカルを中心に、アコースティックな音楽の表現力というあたりを特長として打ち出していたんですが、700シリーズは、ロックやポップスからジャズまで幅広くカバーできて、さらに2chステレオでもマルチチャンネルでも、音楽でも映画でもしっかり鳴らし切るという、懐の深いスピーカーづくりを目指したつもりです。
ずいぶん盛りだくさんな目標ですね(笑)。でも、これだけスピーカーの性能が上がってくると、HiFiスピーカーとかシアタースピーカーとか、そういうジャンル分け自体がもう古いのかも知れません。
飛世: そのとおりだと思います。実際にSoavoを買っていただいたお客様に購入動機や使用感などを伺ってみると、HiFi用とかシアター用とか、そういうのはあまり気にしていないみたいですね。「HiFi用に買ったけど映画を観たら楽しかった」とか、「シアター用として買ったつもりが、気がついたら音楽CDを多く聴くようになった」とか、そういう嬉しいご感想も数多く届いているんですよ。
へえ、やっぱりそうなんですか。実は、先ほどちょっと聴かせていただいたんですけど、HiFiスピーカーとしてはずいぶん鳴りっぷりがいいというか、インパクトのある音という印象を受けました。たとえばSoavoの音は、ヴォーカリストが目の前にすっと立って、さりげなく歌い出すような感じがありますけど、こちらは前にぐいぐいと出てくる。この700シリーズはラインアップ上、現行の525シリーズの後を継ぐシアタースピーカーとしても販売されると思うんですが、525と比べてもくっきり明快というか、明るくわかりやすい音になっていますね。
飛世: 実は、前作の525シリーズはヨーロッパ市場を意識した音づくりを行って、自分たちなりに達成感のあるモデルだったんですが、反面、静かな環境で聴いてこそ本当の魅力がわかる、という性格でもあったので、特に国内市場からは、「一部の店内放送があるような騒がしい店頭で聴いたときに、せっかくの音の造り込みが伝わりにくいんじゃないか?」という声も上がったんです。
そうですか。525はある意味“シアタースピーカー離れ”した音で、個人的にも好きなシリーズだったんですけど、このクラスの製品は店先で聴いて選ぶことが多いから、それも無理のない話かも知れませんね。
飛世: Soavo はもともとオーディオファイル向けの商品ですから、じっくり聴いて良さがわかっていただければいいというのがあるんですが、700シリーズのような中級価格帯のスピーカーというのは、高音質であることはもちろん、店頭でわかりやすく楽しい音を聴いていただけなければ、お客様にとっては候補にすら残らないんじゃないかと。そこで今回は、そういう楽しい音にも挑戦してみたというわけです。
なるほど。でも、そのほうが700シリーズとしての立ち位置がはっきりして、Soavoや他社スピーカーとの住み分けもしやすくなるんじゃないですか?
飛世: それはありますね。興味深いことに、販売店のバイヤーさんにサンプル品をお聴かせしたとき、今までのヤマハスピーカーではあり得なかったぐらい議論百出というか、いろいろなご意見をいただいたんです。「ヤマハさんらしくないんじゃないの?」というご意見も確かにあったんですが、それ以上に「これはいい。売れますよ」と太鼓判を押してくださる方がたくさんいて驚きました。