マーチングの現状
最近、全国各地でいろいろな行事に、マーチング・バンドが参加する機会が増え、マーチング活動も盛んになりつつあります。
しかしながら、マーチングの将来の発展を考える上でなお障害となっている問題点も数多くあり、その幾つかをあげてみましょう。
マーチング発展のための問題点
指導者の不足
講習会等による養成の機会が少なく、マーチングに対する理解も欠けている。
資料の不足
マーチング用の曲や、動き方の参考になる物が足りない。
練習場所の問題
音の公害を気にせず、伸び伸びと練習できる広い場所が少ない。
予算不足
マーチング用のドラムやユニフォームが別途必要になるが、そこまで手が回らないのが現状でしょう。
指導者交代による問題
指導者の交代によりマーチングを急にやり始めたり、やらなくなったりしている。
他にも数多くの問題がまだまだ山積みされており、そうした困難な状況の中で、現在、我が国で活躍しているマーチング・バンドの演奏形態の主なものは次に分類出来ます。
マーチング・バンドの演奏形態による分類
吹奏楽(バンド)
金管バンド
サックスを加えているバンドもある。
鼓隊
スネアドラム、テナードラム、バスドラム、シンバル、マルチタムが基本編成ですが、最近は、マーチングシロフォン、マーチングベル、小物打楽器等を加えた、幅広い編成が見られます。
ドラム&ビューグル・コー(ビューグルバンド)
ドラムとビューグルで編成されます。ドラムはハイテンションで使われ、ピット楽器として鍵板楽器をはじめとする多くのコンサート打楽器が使われている、一方、ビューグルはソプラノ・ビューグルからバス・ビューグルまで使われています。
マーチングバンドの発表(マーチング・ショー)形態の種類
パレード(ストリート・マーチ)
演奏をしながら行進し、簡単なフォーメーションを組んだりもする。
グランド・ドリル(フィールド・ショー)
曲に合わせて色々なフォーメーションを展開する。編成がある程度大きくないと、効果は薄い。
ステージ・ドリル
限られた場所を有効に使ってドリル、フォーメーションを展開する。ステージでの演奏であるから、動きよりも演奏に重点を置いても良い。
フロアー・ドリル
広い体育館などのフロアーでドリル、フォーメーションを展開する。我が国のバンドの編成規模からすると、最もふさわしい形態と言えるかも知れない。
学校別マーチング活動の現状
小学校
マーチングが一番盛んに行われている。これは、
1. 学校行事との関連・・・発表の場が多い。
2. 父兄の協力体制・・・地域社会に密着した活動が行われている。
3. 練習場所が確保しやすい。
4. 指導体制・・・中心になる指導者の他に、指導関係者が複数の場合が多い。
など、学校差はあるものの、比較的条件に恵まれている場合が多いためであり、楽器の楽しさを理解し、基本奏法を身につけることが最も重視されるべきでしょう。
中学校
マーチング活動が一番行われていないのが現状です。様々な悪条件の中で、各バンドの指導者が苦労されていると思いますが、この時期こそしっかりと基本的なバンド活動を身につけることが望ましく、マーチングでも基本に重点を置き、パレードぐらいは出来るようにならないものでしょうか。
高校以上
まだ、マーチング活動は充分とは言えないものの、幅広いバンド活動が期待できるパレード、ドリル、フォーメーションなど、各バンドそれぞれの特色を持った、幅広い活動が展開されることを望みます。
以上のように、現在、マーチング活動はまだまだ我が国のバンドの中に、しっかりと定着しているとは言えません。
これからのマーチング活動を考える上で、最も重要なことは、演奏形態やマーチングの方法の違いといった問題に進む以前に、いかにマーチングをバンド活動の一つとして位置づけ、いかに無理のない活動をしていくかを、指導者達が各バンドにそれぞれふさわしい方向で、考えてみることではないでしょうか。
2007 JAPAN BAND CLINIC(日本吹奏楽指導者クリニック)テキスト
マーチング講座I・II 山崎昌平:著より