マーチングの変遷

What'sマーチング?マーチングってなに?

マーチングの初期においては世界各国とも、概ね軍楽隊等を中心としてマーチング活動が行われ広められてきました。そして、その活動の中心は主として式典等の行事におけるパレードでした。
我が国に現在のマーチング・スタイルの基礎となる要素が導入され始めたのは戦後のことで、アメリカの強い影響を受けてのことでした。

伝統を伝えるマーチング ― ヨーロッパ

ヨーロッパにおけるマーチングのスタイルは、古くからパレードが中心で、フィールド内でのマーチングも、行進では隊形変換(Uターン、簡単な方向変換等)が主体であり、スタンダード・マーチが主として演奏されています。演奏効果やフォーメーション等のショー的要素はあまり取り入れられていませんが、行進と演奏とに秀でた数多くの優れたバンドが存在し、簡単に真似をすることの出来ない風格と、長い伝統を感じさせます。
最近では、徐々にショー的要素を取り入れるバンドも増えていますが、やはりユニフォーム、楽器編成、フォーメーション等、昔からの伝統にのっとったマーチングが主体であると言うことが出来るでしょう。

幅広いスタイルへ発展 ― アメリカ

アメリカでは、約90年くらい前からマーチングがフィールド内で行われるようになりましたが、当初は、行進を中心とした単純な形態でした。演奏曲目も、各学校の応援歌やマーチ等が主体だったようです。
そうした活動の中から、多くの優秀なバンド指導者が生み出され、それにつれてマーチングも急速に発展し、現在見られるようなマーチング・スタイルの基礎が築き上げられてきました。
現在では、演奏曲目も幅広く、ジャズからクラシックまで様々な名曲がたくみにアレンジされて、マーチングに取り入れられています。楽器編成もマーチングにふさわしいものが考えられ、マーチング用の楽器の開発も進められてきました。ショー的効果をより盛り上げるために、バトントワラー、カラーガーズ(シルクス)、ライフルチーム、ダンシングチーム等を含めた幅広いマーチングの編成が行われ、ユニフォーム、フォーメーション、ステップ等についても新しいものが続々考案されてきました。こうした中から、幅広いマーチング・スタイルが生み出され活発な活動が続けられています。

模索される独自性への途 ― 日本

我が国においても、マーチング活動が広まって既に40数年に及ぼうとしています。この間、数多くの指導者のご努力とご苦労が、我が国マーチング界の急速なレベルアップをもたらしたと言えるでしょう。
当初はやはり、パレード中心でしたが次第に現在のマーチング・スタイルが確立されてきました。我が国のマーチングは、主としてアメリカ的色彩が強いものであり、ショー的要素もそのスタイルの中に数多く取り入れられています。これには、アメリカから著名な指導者が多数来日し、大きな足跡を残した事情もあずかって力あったものと考えられます。
しかし、我が国におけるこれからのマーチングを考える上での問題点と言えるものも数多く、その一つはオリジナリティの問題です。
我が国のバンドがおかれている環境、条件等に合わせて、物真似でない、自分たち独自のマーチングが生み出されるようにならなければ、我が国におけるマーチングの真の発展は望めないでしょう。
そうした努力の上に出来上がったマーチングが、ヨーロッパやアメリカ等に似たものになったとしてもそれは一向にかまいません。問題は、各指導者が個人の枠、利害を超えて日本のマーチング界全体の立場で考え、努力することであると言えないでしょうか。
そうした努力の積み重ねの上に立ってこそ初めて、我が国におけるマーチングの真の歴史が確立され、将来に向かっての大きな前進が約束されるに違いありません。

2007 JAPAN BAND CLINIC(日本吹奏楽指導者クリニック)テキスト
マーチング講座I・II 山崎昌平:著より