マーチングスネアドラム・テナードラムについて
マーチングスネアドラム
マーチングスネアドラムとは?
マーチングスネアドラムは、バッテリーパーカッション(体に装着して動く楽器)の要となる楽器で、通常1つのバンドで1~5台使用します。パワーを出す為に、コンサートスネアより深い胴を持ち、その迫力あるサウンドはリズムのリード役です。
サイズは主に直径14”×深さ12”か直径13”×深さ11”が使用されています。一般的には直径14”が使われていますが、メンバーの身体、機動性などを考え、直径13”を使うバンドも多くあります。
演奏面では、リズムの最も細かなフレーズを演奏する役目が多く、また複数での演奏が多いため、チューニングはかなりハイピッチにし、残響音をカットします。ただし、コンサート打楽器の延長として取り扱う場合には、ロ-ピッチで演奏すると良いでしょう。
ヘッドはケブラー系を使用する事により、よりハイピッチでスタッカートな演奏が可能です。スティックは太めのものを使用します。マーチングスネアドラムの響き線はガットを使用しており、1本1本調整が出来るので、同じ音に調弦をします。
バッテリー楽器はキャリングホルダーを使用して身体に装着します。セクションのラインを美しく魅せるため、楽器の高さを揃えることも大切です。
マレットの選び方
オーク材、又はヒッコリー材のスティックが標準です。
サイズは18~19mm(径)を使う方がよいでしょう。むやみに太いスティックを使うと手首や腕を痛めることもありますので、上達するにつれて徐々に太いスティックに変えていきます。スティックの肩の部分やチップが太いものはパワーが出しやすく、振った時に重く感じます。肩が細いタイプはその逆になります。
叩き方の基本
ここで紹介するスネアドラムの奏法は、マルチタムやバスドラム、マレットパーカッション等のあらゆる打楽器の基本となるものですからシンバル等、実際にスティックを持たないプレーヤーも必ずマスター出来るように心掛けてください。
スティックの持ち方
グリップには「トラディショナルグリップ」と「マッチドグリップ」の二通りの持ち方があります。
※ 「マッチドグリップ」はスネアドラム、マルチタムやバスドラム、マレットパーカッション等のあらゆる打楽器の基本となるグリップです。左右同じ持ち方である為、初心者への導入として良いでしょう。
※ 「トラディショナルグリップ」はスネアドラムのためのとても美しい奏法で、特にバックスティックやクロススティック等の視覚的な特殊奏法に絶大な効果を発揮します。
(a)右手は図のように、スティックの1/3あたりを親指の腹と、人差し指の第1~第2関節の間でしっかり挟みます。残り3本の指はスティックに添えるように握ります。
バランスポイントは、スティックの形状によって若干異なるので、右図のようにバウンドさせて弾みの良いポイントを探します。マッチドグリップでは左手も同じく握ります。
(b)「トラディショナルグリップ」の左手も、右手同様1/3あたりを親指の付け根でしっかりと挟み、薬指で受け止めます。人差し指と中指はスティックに掛けるようにします。
叩く位置
基本的にはどこを叩いても良いのですが、図A.B.C.の位置がオーソドックスなポジションとなります。
A→音のまとまりが良く、パワ-を出せるポジション。(mf,ffを主にカバーします)
B→Aに較べるとソフト。若干の余韻が音に影響します。
C→Cでの音は繊細で強く叩いても音量に限りがあるため、PやPPの演奏に適しています。
(pp,p,mpを主にカバーします)
pからfへのクレッシェンドはCからAに向かって演奏するとより効果的です。
叩き方
マーチングの奏法では歩行をすることや、同じ楽器を複数で演奏することが特徴になります。そのため、上半身が歩行時に安定しやすいダウンストロークを基本として演奏することが大切です。又、ダウンストロークはスティックの高さを調節しやすいので、同じ楽器を複数で演奏してもタイミングを揃えやすいことが利点となります。
ここでのダウンストロークとは、常にセットアップの状態を基本とし、アクセントであっても、タップであっても、必ず決められたセットアップのポジションに打ち終える事を言います。
強弱の考え方
強弱はスティックやマレットの高さを図のように角度を決め、変化を付ける事によって行います。メンバー全員がスティックやマレットの高さを統一することによって音の変化は勿論、視覚的にも大きな効果が得られます。又、A,B,Cの強弱ポジションを併用すると、より変化に富んだサウンドになるでしょう。
ストロークの種類
ストロークは大きく分けて4種類の叩き方があります。演奏ではこれらを使い分けて、曲想やダイナミックスをつけます。
フルストローク
この奏法はリバウンド(弾み)を使って叩く奏法で、主に早いテンポでの連打等に使われます。
タップ
タップはアクセント等の間を埋める強弱のことを言います。
ダウンストローク
この奏法がマーチングでは基本となります。図のようにスティックを打ち下ろしたら必ずセットアップのポジションに止めることがポイントです。ただ、振り下ろしたときには決して手首や腕が動かなくなるほど指を握りすぎないようにしてください。
アップストローク
コンサートバンドでの演奏によく使われるこの奏法は、軽快なタッチを表現しやすい奏法ですが、叩き方の項で説明したように早いテンポでの歩行は適しません。マーチングでは、タップからストロークに振り上げる時、使われます。
実際両手で叩く場合、例えば次のようになります。
ルーディメント
打楽器の奏法には手順の違う様々なパターンがあり、それらを総称してルーディメントと呼びます。同じフレーズでも手順が違うと音のニュアンスが変わったり、マルチタムや鍵盤楽器等の手のクロスを回避してくれます。殆どのルーディメントはシングルストロークとダブルストロークの組み合わせによって出来ているので、打楽器の基本であるこの二つの奏法をまずはマスターしてください。
シングルストローク
これが、あらゆる奏法の中で最も基本となる叩き方です。左右一つずつ交互に叩き、左右均等(テンポ、音量、音色)がポイントです。(R=右手、L=左手)
ダブルストローク
左右2つずつ交互に叩きます。
2番目の音がどうしても弱くなりがちなので注意してください。要領としては、ミディアムテンポまでは2つとも手首を使って叩き、アップテンポでは、2つ目を叩く時、中指でスティックをはじくようにします。
5ストローク
シングルパラディドル
ダブルパラディドル
パラディドルディドル
フラム
ドラッグ
ロール
ザー!というロングトーン、の叩き方で、以下3つの奏法があります。
シングルストロークロール
前述ルーディメントのシングルストロークを速く叩くと、このロールになります。スネアドラムよりもティンパニやバスドラムのロールの場合に、この奏法が多く用いられます。
ダブルストロークロール(オープンロール)
ルーディメントのダブルストロークを速く叩くと、このロールになります。メリハリの効いたタイトなロールなので、この奏法はマーチングには必須です。複数の人数でも一つ一つの音を全員が正確に揃えます。
クローズドロール(プレスロール)
スティックのはね返り(バウンド)を利用する方法。スティックを握り締めずに、親指と人差し指だけで軽く抑えながら弾ませると、4~5回バウンドさせることができます。これを左右交互に繰り返す事でロールを作ります。この奏法は、コンサートバンドで多く使われ、マーチングではあまり使いません。
リムショット
ヘッドとリムを同時に叩く(又はリムだけを叩く)事で効果的なサウンドを作ることができます。以下の奏法があります。
最も代表的なリムショット
スネアの中心部~やや手前あたりを叩きます。パンチの効いた音になります。
浅く叩くリムショット
歯切れの良いカン高い音になります。初期のジャズでよく使われました。
スティックショット
左のスティックはヘッドに当てて固定します。右のスティックの叩く位置で音が変わります。
コースタイル スティック ショット
左のスティックをリムとヘッドに当てておきます。鋭い音になります。
リムクリック
ボサノバに代表される奏法で、拳を広げてヘッドを抑えながら叩きます。
オンリム
リムだけを叩く奏法。リムの歯切れの良い音が出せます。音量は小さいが効果は大きい。
マーチング独特の奏法
バックスティック奏法
スティックのチップとグリップエンドの双方を使って叩きます。グリップエンドで叩く音は音色が異なり、ショー的効果が大きい。
演奏の仕方は、下記にようにバックスティックの直前の音(反対側の手)をダブルストロークで叩くことが多い。
クロススティック
スティック同士を打ち鳴らす奏法で、やはりショー的効果が大きい。以下のような叩き方が良く使われます。
マーチングテナードラム
マーチングテナードラムとは?
スネアドラムの響き線が無いドラムで、マレットを主に使って叩く中音域用ドラムです。現在ではマルチタムがそれにとって代わりつつありますが、パレード等での音作りでは大きな役割を果たします。
マレットの選び方
マレットはプラスティックヘッド、フェルト、ボアヘッドをハード、ミディアム、ソフトとして曲に応じて使い分けます。それぞれ音色が全く異なるので、なるべく3種類を揃えてください。