トランペット奏者 日野皓正さん

#05

日野 皓正さん

トランペット奏者

長年の夢がようやくかないました。
 
現在のマンションを購入したのをきっかけに、自宅にアビテックスを設置したのは一昨年のことです。
十代でプロとしての活動を始めて以来、こんな防音室をずっと欲しかったのですが、当時は経済的余裕がありませんでした。そのため、一時間何千円という料金を払ってスタジオを借りるなど、練習場所の確保には本当に苦労してきました。それも、昼間のスケジュールを終えてから、「自分はプロなのだから」と疲れた体にむち打って練習に出かけなくてはいけないのです。でも、そんな苦労をしたとき、天は必ず何か一つ僕にご褒美をくれました。「良い音を出すには舌の位置はこうした方がいい」「立ち方はこんなふうに」と、不思議にインスピレーションがひらめくことがあるんですね。
 
 
でも、スタジオで短時間吹くだけでは、到底十分とはいえません。一時間吹き続けたとしても、練習の中身はステージで飛び入り演奏する一曲分にも足りないでしょう。それに、練習では力を入れているようでも、すぐに休んでしまいます。本当に練習しようとしたら、一日五時間くらいは必要ですが、とてもそんな時間はとれません。だから自宅やツアー先のホテルで時間を見つけては、ミュートをつけて吹くことになりますが、それではなかなか本当の意味での練習にならないのです。  
 
それが一昨年、このマンションをリノヴェーション(改修)して購入する際、かみさんに「練習場が欲しい」と言ったら、「いいわよ」と言ってくれたんです (笑)。それで、すぐにヤマハに電話して、ボックスタイプのアビテックスを特注で設置してもらいました。これなら夜中に帰ってきても、吹きたいときに吹くことができます。いま僕は六三歳ですから、六一歳にして初めて、長年の夢がようやくかなったんです。最高です。大ハッピー!(笑)
でも、やっているとだんだん欲が出てきます。木製のドアに吸音材を張って、もっと吸音率を高め、しかもデザイン的にもっとかっこよくできないか…など、 “こうしたらもっと良くなるのでは?”というアイデアを出しては、ヤマハに投げかけ、一緒にもっとごきげんなものにしていけたらいいなと、思っているんですよ。
 
 

アーティスト情報

 
ひのてるまさ
9歳でトランペットを学び始め、13歳の頃より米軍キャンプで演奏を始める。1964年、白木秀雄クインテットに参加。69年『ハイノロジー』リリース後、“ヒノテル・ブーム”を巻き起こす。75年、ニューヨークに居を構え、89年にはジャズの名門レーベル“ブルー・ノート”日本人初の契約アーティストになるなど、国際的に活躍を続ける。現在は後進の指導やチャリティー活動も精力的に行っている。2004年、紫綬褒章を受章。06年6月ニュー・アルバム 『クリムゾン』リリース。

Terumasa Hino 日野皓正 Official Web Site
http://www.terumasahino.com/