【導入事例】新国立劇場 様 オペラ劇場 / 劇場 / 東京都
Japan / Tokyo, Apr 2011
NEXOのサウンドクオリティが実現した建築音響と電気音響の理想的なコンビネーション
オペラ、バレエ、コンテンポラリーダンス、演劇といった現代舞台芸術のための劇場として、1997年の竣工以来、常に高水準の作品を発信し続けている新国立劇場。年間約300回の公演を約20万人の観客が楽しむ、日本が誇る文化拠点のひとつである。 新国立劇場にはオペラ劇場、中劇場、小劇場の3つの劇場がある。中でもオペラ劇場は、四面舞台、120人が演奏できるオーケストラピット、1,814の客席を備えた、新国立劇場の顔とも言える劇場だ。
2010年、そのオペラ劇場でスピーカーシステムの改修が実施された。最高水準の舞台を、最高の状態で贅沢に演出するために、スピーカーシステムに寄せられる要望も高い。そのような中で、プロセニアムスピーカー、サイドスピーカーおよびシーリングスピーカーに採用されたのが、NEXOのラインナップである。
改修にあたりスピーカーシステムに求められたポイント、選定のプロセス、そしてNEXOを採用した決め手などについて、財団法人新国立劇場運営財団・技術部の音響課長であり、日本舞台音響家協会理事長としても活躍される渡邉邦男氏にうかがった。
渡邉邦男 氏 プロフィール
舞台音響家。大学卒業後、帝国劇場を中心に商業演劇やミュージカルの音響デザインを手がける。現在、新国立劇場の音響部門を統括し、幅広いジャンルで活躍。日本舞台音響家協会理事長、特定ラジオ・マイク利用者連盟理事なども務める。 主な作品:「エリザベート」、「太平洋序曲」、「軍人たち」、「わが町」他、ミュージカルやオペラ、演劇などの音響デザイン多数。
インタビュー動画
竣工時から13年間使用してきたスピーカーシステムを改修
最初にオペラ劇場における電気音響の用途とはどのようなものか、渡邉氏にご説明いただいた。 「オペラでは建築音響がメインですが、オーケストラにチェンバロやギターなどの弱音系の楽器が入る時、オーケストラピットの外で小編成のオーケストラが演奏する時、舞台奥や袖で合唱団が歌う時などに、生音だけでは響きが足りなかったり、イメージと違ったりすることがあります。そういう時に音像の定位を考慮しながらプロセニアムスピーカーで響きを足すことがあります。また効果音を鳴らすことも役割のひとつです」 旧スピーカーシステムは、1997年の竣工時から使用されていたもの。2000年代中頃より、定点測定でパワー不足や音の崩れが指摘されるようになっていたという。そこで2007年頃からスピーカーシステムの改修を検討。2010年秋にNEXOのシステムが導入された。
ナチュラルな音
スピーカーシステムの選定で渡邉氏が重視したポイントは「ナチュラルな音」だったという。
「メインの建築音響に電気音響の音を付加する訳ですから、存在感がないという意味ではありませんが、建築音響に自然に溶け込む音が求められます」と渡邉氏は語る。
広いダイナミックレンジにも高いクオリティを発揮できること
うひとつ渡邉氏が重視したポイントがある。
「オーケストラはダイナミックレンジが広く、例えばフォルテシモで演奏しているオーケストラに雷の音などの効果音を乗せる場合、瞬間的に120dB SPLくらいになる時もあります。かたやコーラスを、遠くで静かに歌っているような温かみのある音でそっと出さなくてはいけないシーンもあります」このような広いダイナミックレンジにも高いクオリティを発揮できること。「欲張りな要望」とは渡邉氏自身の言葉だが、スピーカー選定における重要なポイントとなった。
大きく2回の絞り込み作業をおこなう
スピーカーシステムの選定では、オーケストラやコーラス、効果音などのさまざまな音源で試聴が繰り返された。その上で5社のスピーカーシステムが候補として残り、そこから大きく2回の絞り込みを経て採用機種が確定された。「1回目はオペラ劇場の舞台にスピーカーシステムを置いて試聴し、5社の候補を3社に絞り込みました。そして2回目は、スピーカーシステムをプロセニアムに入れて、どのように音が広がるかを確認しました」 こうして選ばれたのがNEXOのラインナップである。プロセニアムスピーカー、サイドスピーカーに2-wayスピーカーGEO S1230およびサブウーファーRS15、シーリングスピーカーに同じくGEO S1230とサブウーファーLS600が採用された。スピーカーシステムが決定後、アンプについても各社の機器で試聴が繰り返され、NEXOのNXAMP 4 x 4の採用が決定した。
"クセ"がないことがNEXO採用の決め手
NEXOのスピーカーシステムを選んだ決め手は、「音に“クセ”がないことでした」と渡邉氏は振り返る。「他社のスピーカーシステムには良い意味での色というか“クセ”がありました。その特性自体が悪いということではありませんが、流す音源によってはそのクセが嫌味に感じることがありました」そのような中でNEXOのシステムは、「一番自然で深みのある音を実現している」と渡邉氏は判断したのだ。
どのスピーカー群からでも単独で全客席に音を届けられる設計配置
3台のGEO S1230と1台のRS15を一式とし、プロセニアムスピーカーは中央に2式と上手および下手にそれぞれ1式ずつ、サイドスピーカーは上手・下手それぞれの上段・中段・下段に計6式設置されている。合わせて9つのゾーンに設置されたスピーカーシステムが1階席から4階席まで、それぞれのエリアをカバーしている。その上で渡邉氏が求めたのは、どのスピーカー群からでも単独で全客席に音が届けられるようにすることである。舞台芸術においては、例えば演者の動きに合わせて下手側から音を聞かせるなど、音像定位が大切な要素だからである。
予想外の設計変更を余儀なくされるも、満足いく音の分布を実現
図面上の検討やシミュレーションの段階では、渡邉氏も「これなら理想の音が実現できる!」と、かなりの手ごたえを感じていたという。しかし実際にプロセニアムの枠を外してみると、オーケストラピットの真上にある反射板の吊り下げ部分が施工図面よりもプロセニアム側に食い込んでいたり、施工図面上にはなかったスプリングクーラーの配管があったり、予想外の展開に。結局、設計の変更を余儀なくされてしまった。「そこからが大変で、スピーカーシステムを仮吊りにして実際に音を出しながら何度も調整を繰り返し、満足いく音の分布を追求しました。」予想外の苦労ではあったが、理想の音を追求するプロセスとしては「かえって良かったかも知れません」と渡邉氏は振り返る。
より綺麗で温かい音の広がりを実現
こうしてオペラ劇場のスピーカーシステムは完成した。導入後、スピーカーチューニングは基本的におこなわず、日常の運用でも複雑なイン・アウトのパラメーター等はコンソールで行い、このスピーカーシステムでコントロールするのはレベルだけ、という想定だという。先述の、建築音響に溶け込む「ナチュラルな音」、そして「“クセ”のない音」を実現できた形だ。本格的な運用はこれからであるが、コーラスのSRに用いた際は、「旧システムよりも音の広がりが綺麗で、また温かみを感じました」と渡邉氏。改修の手応えを感じていただけているようだ。
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NEXO Japanオフィシャルサイト