【導入事例】三重県総合文化センター様 / 総合施設 / 三重県
Japan / Mie, Oct 2016
三重県文化会館 大ホールに導入されたヤマハ「RIVAGE PM10」
RIVAGE PM10 導入レポート Vol.1 三重県総合文化センター
(隔月刊「PROSOUND」Vol.194 2016年8月号より転載。取材協力:公益財団法人三重県文化振興事業団 写真:河上良)
一昨年のInter BEEで初披露され、昨年末から出荷が開始されたヤマハのデジタル・ミキシング・システム、「RIVAGE PM10」。名機「PM1D」の後を受け継ぐ、ヤマハの新世代フラッグシップ・コンソールだ。名匠:Rupert Neveとのコラボレーションによって開発された“SILK プロセッシング”とヤマハのアナログ技術を融合した“ハイブリッドマイクプリアンプ”、あらゆるオペレーションに対応する柔軟なサーフェース・デザイン、大規模なシステムを実現する独自プロトコル“TWINLANe”の採用など、様々な特徴を備える「RIVAGE PM10」は、まさにヤマハ製業務用コンソールの現時点での集大成と言っていいだろう。
出荷開始以来、多くの会社/施設に導入されている「RIVAGE PM10」。本誌では今号から逐次、その導入例をレポートすることにした。
第1回目に紹介するのは、三重県立の複合文化施設、三重県総合文化センター(三重県津市)。三重県総合文化センターでは今年2月から3月にかけて、施設の中心となる三重県文化会館 大ホールの音響システムを更新し、新しいコンソールとして「RIVAGE PM10」を導入した。開館以来、20 年以上使われてきた国産アナログ・コンソールをリプレースする形で導入された「RIVAGE PM10」。その選定理由や使い心地について、関係者に話を訊いてみた。
開館以来初となる全面的な機材更新を実施しRIVAGE PM10 を導入
JR・近鉄・伊勢鉄道の津駅から徒歩25分。閑静な住宅街にある三重県総合文化センターは、三重県文化振興事業団が運営する県立の複合文化施設だ。
開館は1994年のことで、三重県文化会館、三重県生涯学習センター、三重県男女共同参画センター、三重県立図書館といった様々な文化施設で構成される。センターの中心となるのが、大・中・小の3つのホールを擁する三重県文化会館で、中でも客席数1,903席を誇る大ホールは県内最大規模のホールであり、著名なアーティストのライブ・コンサートから講演会に至るまで、連日様々なイベントが行なわれている。
そんな三重県総合文化センターでは先頃、三重県文化会館大ホールの音響システムを全面的に更新。
開館以来20年以上使われてきた国産アナログ・コンソールをリプレースする形で、ヤマハのデジタル・ミキシング・システム、「RIVAGE PM10」が導入された。新機材の導入に関わった三重県総合文化センター 施設利用サービスセンター 施設運営課長の谷口健氏は、「どうせ入れ替えるなら最新鋭の機材を導入したいと考えていたんですが、そんなときにタイミングよく発表されたのが「RIVAGE PM10」だったんです」と笑う。
「こういう機材には製品寿命というものがありますし、発売から5年経ったものを入れるのと発売されたばかりのものを入れるのとでは、稼働できる年数が違ってくると思うんです。
最初のコンソールを20 年以上使ったことからも分かるとおり、こういうホールでは一度入れた機材を10年以上使いますから、できるだけ最新鋭のコンソールを導入したいなと思っていたんですよ。実績のないデジタル機材に対する不安もあったんですが、ヤマハのサポートは信頼していますし、しっかりフォローしてもらえるだろうと。それにここからですと(ヤマハの本社がある)浜松も遠くないですしね(笑)」(谷口氏)
もちろん、最新鋭の機材ということだけが「RIVAGE PM10」の選定理由ではない。新機材の導入に関わり、実際にホールでオペレーションを手がける舞台管理スタッフの西口義幸氏は、「新しいコンソールには多くの要望がありました」と続ける。 「サウンドもそうですが、ぼくは操作性もかなり重視していたんです。まず、音響室に設置して、しっかり舞台が見渡せるか否か。最近のデジタル・コンソールはどれもタッチ・スクリーンを採用しているので、サーフェースの奥の部分が意外と高いものが多いんですよ。でもそういったデザインのものですと、舞台が見切れてしまったり、高い椅子が必要になったりする。普通に設置して、しっかり舞台が見渡せるかどうかという点は重視しました。
あとはブロックあたりのフェーダー数ですね。長年こういう仕事をしていて、ブロックあたりのフェーダー数は8本よりも12本の方が使いやすいだろうなと感じていたんですよ。同じ24フェーダーのサーフェースでも、3ブロックと2ブロックのものだったら、絶対に後者の方が使いやすいと思っていたんです。
それとこういうホールで使うコンソールですので、マトリクスも充実しているものでないとと考えていました。そして海外メーカーのものも含め、いろいろ検討した中で、我々の要望をすべて満たしていたコンソールが「RIVAGE PM10」だったんです」(西口氏)
両氏とも「RIVAGE PM10」のお披露目の場となった2014年のInter BEEで実機に触れ、その後もチェックを繰り返し、導入の参考にしたという。
「いろいろな催しものが行われるホールですので、なるべくクセのないナチュラル・サウンドのコンソールがよかったんですが、その点「RIVAGE PM10」はバッチリでした。同じデジタル・コンソールでも、マイク・プリアンプが優秀だとここまで違うのかと皆で驚きましたね。本当に自然でクリアなサウンドだったんです」(谷口氏)
そして三重県文化会館では昨年9月に「RIVAGE PM10」の導入を決定。今年2月から3月にかけて工事が実施され、音響システムの中核機材として「RIVAGE PM10」が導入された。
RPio622を計3台導入112ch入力/64ch出力の大規模なシステムを構築
三重県文化会館に導入された「RIVAGE PM10」は、コントロール・サーフェース「CS-R10」が1台、DSPエンジン「DSP-R10」が1台、I/O ラック「RPio622」が3台というシステム構成。
「CS-R10」と「DSP-R10」は調整室に、「RPio622」は1 台が調整室、残りの2台は舞台の上手と下手に設置。「DSP-R10」と「RPio622」には、256chTWINLANe ネットワークI/O カード「HY256-TL」が装着され、各コンポーネントは“TWINLANe” によってネットワーク接続されている。
入出力に関しては、調整室の「RPio622」には、16ch マイク/ライン入力カード「RY16-ML-SILK」が3枚、16ch アナログ出力カード「RY16-DA」が2枚、16ch AES/EBU 入出力カード「RY16-AE」が1 枚装着。計48chマイク/ライン入力、32ch アナログ出力、16ch AES/EBU 入出力という仕様になっている。
一方、舞台側の「RPio622」には、「RY16-ML-SILK」が2枚、「RY16-DA」が1 枚、「RY16-AE」が1枚装着。計32chマイク/ライン入力、16ch アナログ出力、16ch AES/EBU 入出力という仕様だ。また、調整室の「RPio622」には、144ch Dante ネットワークI/O カード「HY144-D」が装着され、Dante 接続にも対応できるようになっている。
「今回の更新では、音響調整用にヤマハのDSP エンジン「DME64N」と、NEXO のパワー・アンプ「NXAMP」、移動用のスピーカーとしてNEXO の「STM」シリーズも導入したんですが、それらは「DSP-R10」からすべてDanteで接続されています。また、Shureのワイヤレス・システム「ULXD」は普段、「RPio622」のアナログ入力に接続して“SILK プロセッシング” を通せるようにしているんですが、状況に応じてDanteで入力することも可能になっています」(西口氏)
多くの人が乗り込みで使用することを踏まえ、標準的なメーカーのフラッグシップ・コンソールを導入
既に多くのコンサート/イベントなどで使用してきたという三重県文化会館の「RIVAGE PM10」。谷口氏は、実際にホールで運用して、その音の良さは想像以上だったと語る。
「当然と言えば当然なんですが、サウンドはこれまでと比べてガラリと変わりました。音の明瞭度が格段に良くなった感じがします。これまで来場者の方から“ 人の喋り声が聞き取りにくい” という意見をいただくことがあったんですが、システム更新後は人の声がとても聞き取りやすくなりましたね。これはコンソールだけでなく、音響システム全体を入れ替えたおかげだと思いますが」(谷口氏)
また西口氏は、その操作性の良さを高く評価。「フラッグシップ機なのに、歴代のヤマハ製コンソールの中で最も簡単に操作できるかもしれない」と笑う。
「触り始めてすぐに使い慣れましたね。既に何人かの外部オペレーターさんにも使っていただいたんですが、皆さん説明しなくても勝手に操作しています(笑)
操作性で素晴らしいなと感じるのは、何かを行う上でいくつかの方法が用意されていること。例えばEQは、ぼくは“Selected Channel” で操作するのが好きなんですけど、オペレーターさんによってはタッチ&ターンで操作するのが好きな人もいますし、「M7CL」スタイルの“Centralogic”での操作を好む人もいる。その点「RIVAGE PM10」なら、どの方法でも操作することができるんです。
それと導入前に気になっていた舞台の見切りもまったく問題ないですね。奥のパネルの角度と高さが絶妙で、これまで使っていた椅子のままで快適に操作できています。タッチ・スクリーンの液晶は非常にクッキリした表示で、視認性も凄くいいですね」(西口氏)
豊富な機能を備える「RIVAGE PM10」だが、西口氏は特に気に入っている機能として標準のEQと“SILK プロセッシング” を挙げる。 「チャンネルEQは4種類のアルゴリズムを選択することができるんですが、中でも“Precise” というアルゴリズムが素晴らしいですね。とにかく感触が良いというか、EQの効き具合が自分のイメージとリンクしているんです。これは外部のオペレーターさんも同じことを言っていました。
それと“SILK プロセッシング” も大変良い感じです。ボーカルの抜けをもっと良くしたいなと思ったときは、最初にEQではなく(“SILK プロセッシング” の)“TEXTURE” つまみを触るようになりました。まだまだその音の変化を掴みきれていないんですが、非常に使いでのある機能だと感じています。
あとは標準のグラフィックEQもお気に入りの機能で、アウトプットで使っています。こういうデジタル・コンソールのプロセッサーって、最初にバーチャル・ラックにアサインしなければならない煩わしさがあったりしますが、「RIVAGE PM10」では任意のチャンネルに直接インサートできるのがいいですね」(西口氏)
非常に満足した表情で「RIVAGE PM10」について語る谷口氏と西口氏。発売後間もなく導入された「RIVAGEPM10」は、これから長い年月に渡って、三重県文化会館の音響を支えてくれることだろう。
「サポートの安心感もそうですが、業界標準という意味でもヤマハのコンソールを導入して良かったなと思っています。ここに持ち込まれるコンソールを見ていてもヤマハのものが一番多いですし、先ほど西口も言っていたとおり、オペレーターさんが問題なく使うことができるんですよ。いろいろな人がやって来るホールですから、ヤマハのコンソールを導入して良かったと思っています」(谷口氏)
データ
製品情報 | RIVAGE PM10 |
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