【導入事例】岸和田市立浪切ホール 様 / 総合施設 / 大阪府

Japan/Osaka, Mar 2017

banner 大ホールの舞台から客席を望む。座席数は1,552。日本の伝統芸能をはじめ、コンサートやバレエなど幅広く使用されている

南大阪地域を代表するホールがフラッグシップ・コンソールを導入

(音響映像設備マニュアル 2017年改訂版より転載。取材協力:岸和田市立浪切ホール 写真:中西俊介)

「岸和田だんじり祭」で有名な大阪府岸和田市。この街のベイ・エリアに、2002年にオープンしたのが浪切ホールだ。大小2つのホールのほか、多目的ホールや会議室、スタジオなどを併設する大規模な施設である。
南大阪地域を代表する存在とも言える同館の大ホールに、2016年夏、Yamahaのフラッグシップ・コンソールRIVAGE PM10が導入された。


音響システムのプランニングを手がけたテクニカル・アートの日下部雅則氏によるとRIVAGE PM10の導入までには数年越しの計画があったそうだ。

「館全体の音響を更新する計画が立ち上がり、手始めに小ホールのコンソールをQL5に入れ替えるところからスタートしました。その時点で、将来的にはDanteファミリーでシステムを構築しようと考えていたのですが、まだRIVAGE PM10は発表されていなかったため、大ホールのコンソールに関しては仮の状態で進んでいました。ただ、数年のうちにDanteに対応した新しいフラッグシップ・モデルが発表されるであろうという見込みはあったので、それを待っていたのです。地域を代表するホールですから、それにふさわしい機材を導入したいと考えていました」

この言葉に浪切ホールの施設管理業務責任者である森谷秀一氏も同意する。

「そうですね。ホールの音響の顔とも言えるものですから。また、このような大きな改修はたびたび行われるものではないので、数年後にも十分に通用するレベルのものを入れておく必要があるのです」

photo01_left RIVAGE PM10 が設置された大ホールの音響室。右がコントロール・サーフェスCS-R10、左のラックにDSPエンジンDSP-R10やI/OラックRPio622が格納されている

photo01_right 288席が用意された小ホール。全16列の昇降式床でステージ構成をアレンジ可能


RIVAGE PM10の導入に併せて館内のネットワークも刷新された。この点については施工を手がけたジャトーの森山裕士氏が語ってくれた。

「Danteのほか、Yamahaのネットワーク・プロトコルであるTWINLANe、BSSのDSP用ネットワークであるBlu Link、これらに加えて貸し出し用の光回線を上手、下手、客席、音響室、アンプ室に引き回しています。それぞれが独立しているので、この回線を使っていたらこの回線は使えないということがない状態で、どのようなパターンにも対応できるようにしてあります」

これにより、外部業者が乗り込む場合にも、光回線の出口近辺に機材を設置することでケーブルの引き回しがシンプルになり利便性が向上する。ケーブルの引き回しで観客の導線を圧迫することもなくなるためホールを管理する側にもメリットが大きい。

photo02_left 大ホールの舞台袖に設置されたI/OラックRPio622

photo02_right 小ホールの音響室に設置されたQL5。コンパクトだが多機能で、Danteにも標準対応している


RIVAGE PM10の導入とネットワークの敷設は2016年9月「岸和田だんじり祭」の開催に合わせて行われた。この期間は浪切ホールも休館となるため、そのタイミングを利用したのだ。そして、導入間もなくRIVAGE PM10の運用が開始された。その印象を、オペレーションを担当するハートスの川田晃司氏が語ってくれた。

「一番はやはりヘッド・アンプ。とにかく音がいい。本当にナチュラルで、その上りんかくもしっかりしていてミキシングしやすいです。初めて使ったのがピアノとボーカルによる演目だったのですが、ピアノの音も声もすごく良くて。元となる素材が良いのでリバーブの乗り方も変わってきたり、すべてに良い影響がある感じでした」

RIVAGE PM10の入力段は“ハイブリッドマイクプリアンプ”と呼ばれている。第1のポイントはアナログ段。Yamahaが長年培ってきたアナログ回路のクオリティが音の素性の良さを決定付ける。そして第2のポイントとなるデジタル段に、Yamahaのモデリング技術VCMテクノロジーによってRUPERT NEVE DESIGNSのトランスフォーマー回路と同社ハイエンド機に搭載されるSILKプロセッシングがモデリングされているのだ。

「SILKのツマミを回すと、イコライジングなどではできないような音の立たせ方ができるんです。BLUEとRED、2つのキャラクターがあって僕はREDをよく使います。ミックスの中でスポットライトを当てたい部分があるときに使うと効果的です。そういう場合、これまではレベルやパンニング、イコライジングを調整することで立たせてきましたが、新しい選択肢が1つ加わったような感じがしますね」

また、タッチ・スクリーンとフェーダー・ストリップが一体化したシンプルな操作性もRIVAGE PM10の特徴だが、この点に関しても好印象を抱いているようだ。

「すごく使いやすいですね。フェーダーの質も良いので触りやすいです。また、例えばゲインを調整する場合、タッチ・スクリーンでゲインを選択して調整することもできるし、“チャンネルストリップエンコーダー”と言って自分の使いたいパラメーターをツマミに割り当てる機能でゲインを割り当てておくことでも調整できる。このホールはコンサートから講演会までさまざまな催し物があって、僕の場合そのつど卓のよく触る部分も変わってくるので、操作の選択肢が複数あるのは使い勝手がいいですね」

あらゆる面でフラッグシップと呼ぶにふさわしいRIVAGE PM10。地域を代表するこのホールで、今後何年にもわたって活躍するだろう。

photo03_left 移動機材としてQL1やRio1608-Dをスタンバイ。大小ホール問わず、フレキシブルに使用できる

photo03_right 取材に応じてくださった皆さん。後列左から、施工を担当したジャトーの川本晃氏、同じくジャトーの森山裕士氏、浪切ホールの音響オペレートを担当するハートスの川田晃司氏。前列左から、音響システムのプランニングを手がけたテクニカル・アートの日下部雅則氏、浪切ホールの施設管理業務責任者である森谷秀一氏


岸和田市立浪切ホール
住所:〒596-0014 大阪府岸和田市港緑町1-1
TEL:072-439-4173
WEBサイト:https://namikiri.jp


主な使用機材

大ホール
コンソール Yamaha RIVAGE PM10(CS-R10×1、DSP-R10×1、RPio622×2)
DSP BSS Blu-160×5、Blu-806×1
プロセニアム・スピーカー EAW ASR660×1、ASR690×1、AS300e×7
サイド&カラム・スピーカー EAW KF300e×6、SB250×2
サイド・モニター・スピーカー EAW JF560e×2
パワー・アンプ RAMSA WP-9300×17、WP-9600×1
ワイアレス・システム SHURE AXT400×3、AXT200×6、AXT100×4
小ホール
コンソール Yamaha QL5(Rio1608-D×1)
DSP BSS Blu-806×1
メイン&フォロー・スピーカー EAW KF300e×2、JF60×2
サイド・モニター・スピーカー EAW JF100e×2
パワー・アンプ RAMSA WP-9300×4
ワイアレス・システム SHURE AXT400×2、AXT200×4、AXT100×2
大小ホール共用移動機材
コンソール Yamaha QL1、DM1000
I/Oラック Yamaha Rio1608-D×2
スピーカー EAW KF650×6、SB600×4、JF260z×8、SM122e×8、Yamaha MS400×2、BOSE 101×4
パワー・アンプ RAMSA WP-9300×8、WP-9600×4
マイク/DI SHURE SM58×15、SM58S×2、SM57×24、Beta57A×6、SENNHEISER MD 421×6、AKG C414B×3、C480×10、AUDIO-TECHNICA AT871R×5、AT898×5、AT899×4、AMCRON PCC160×5、SANKEN CMS-2×2、BOSS DI-1×10、COUNTRYMAN Type 85×5、WHIRLWIND PCDI×2

データ

製品情報 RIVAGE PM10
QL Series
R Series (AD/DA)