東京大学 先端科学技術研究センター大澤研究室 / 教育・研究機関 / 東京都

Japan / Tokyo Dec. 2018

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2018年10月、東京大学先端科学技術研究センターに、がん研究の未来を担う「大澤研究室」が新規開設されました。新しい栄養学の視点から新規がん治療法の開発を目指す研究室には、ヤマハのBGMシステムが導入されています。導入の経緯や選定理由について東京大学先端科学技術研究センター ニュートリオミクス・腫瘍学分野 大澤毅特任准教授と、音響デザインと設置を手掛けられたユニオン サウンドシステムデザイナーの町田智史氏にお話をうかがいました。

 

photo001 (右)東京大学先端科学技術研究センター ニュートリオミクス・腫瘍学分野 大澤毅特任准教授
(左)ユニオン サウンドシステムデザイナー 町田智史氏

 


リラックスしながら研究に打ち込める環境を実現するために、研究室に音響機器を導入


大澤研究室では、どのような研究が行われているのでしょうか。

大澤先生:
この研究室ではがんについての生物学的な基礎研究をしています。具体的には新しいがん代謝産物を同定すること、糖質・脂質・アミノ酸欠乏におけるがん適応機構を明らかにすること、そして新しい栄養学「ニュートリオミクス」の視点からがんの治療法を開発することを目的としています。そしてがんの治療につながる標的を見つけたり、製薬会社さんなどとタッグを組んで、製薬に結び付けたりすることを目的として研究を行っています。

photo002 東京大学先端科学技術研究センター ニュートリオミクス・腫瘍学分野 大澤毅特任准教授

 

今回、BGMシステムしたのは研究室のどのスペースでしょうか。

大澤先生:
研究室には2つのエリアがありまして、1つは手を動かして実験する実験室です。もう1つは実験データを基に時間をかけてデータ処理を行ったり、そのデータを解釈したり、関連したさまざまな論文を読んだりするための場所で、それを居室と言います。今回BGMシステムを入れたのは居室のスペースです。
今までの研究室は実験室を主としており、居室は実験室の隣に小さい机がある程度のものでした。結構暗い雰囲気で、狭くて圧迫感がある空間だったんです。そんなところでものを考えていても、どうしても煮詰まってしまいます。私もよく研究室から逃げ出してカフェに行っていました。そこで今回研究室を構えるにあたって、居室をカフェやオープンスペースのように、ゆっくりとリラックスしてものが考えられるような空間にしたいと思いました。

photo003 写真左側が実験室、右側が居室。研究室はガラス張りで開放感がある。

 

今までの研究室の居室は、リラックスして物事を考えられる環境ではなかったということでしょうか。

大澤先生:
残念ながらそうです。特に古い大学の研究施設には、このようなオープンな居室は少ないと思います。今回私が居室を重視したのは、今までの「実験優位」の考え方から、データの解析やそこから様々なことを考え出す「アイディアや発想」が重要な時代へと移行しつつあるからです。そして、クリエイティブなアイディアはリラックスできる空間にいないと、なかなか出てこないと感じています。

リラックスできる空間を作るために大学の研究室に音響システムを入れるというの例は珍しいのではないでしょうか。

大澤先生:
通常の研究室にも緊急放送用のスピーカーはありますが、音響システムはまず入れていないと思います。海外では、たまにラジオを流していたり、ラジカセ的なオーディオで音楽を流している研究室はありましたが、きちんとした音響システムで音楽が再生できる大学の研究室は、見たことがありません。でも私は「カフェ」のイメージを持っていたので、やはり質の高い音で音楽が聴けるようにしたいと思ったので音響の専門家に依頼しました。

 


均一な音量と高音質を実現するシステムを選定


音響システムのプランニングを設置をご担当されたユニオンの町田様におうかがいします。研究室に音響システムを導入するにあたり、注意した点はどんな点でしょうか。

町田氏:
最初は通常の天井に埋め込むタイプのシーリングスピーカーで、音質が良いものを考えていました。ただ実際に下見の時に居室を見せてもらったら、思ったよりかなり細長い空間で、天井高は一般的な2.5m程度でした。このような天井が高くない場所にシーリングスピーカーを設置すると、スピーカー直下に向かって音が出るので、どうしても真下はうるさく、ちょっと離れると音質が変わってしまうということになってしまいます。細長の空間に合わせてたくさん配置するという方法もありますが、今回予算的にもそれほどたくさんの数のスピーカーは入れられませんので、指向性が広く、カバーエリアも調整可能な露出型スピーカーを部屋の形に合わせて配置しようと考えました。

photo004 ユニオン サウンドシステムデザイナー 町田智史氏

ヤマハのVXS1MLとVXS3Sは、すでに別のところで導入した経験がありますが、広いエリアに対して均一でムラのない音量で再生できることがわかっていました。特にBGMのように小音量で音質的にも広い帯域できちんと再生できる機器としては、ヤマハのVXS1MLとVXS3Sの組み合わせがベストだと思っています。それで今回もこの組み合わせのシステムを導入しました。
具体的には、窓際にコンパクトなVXS1MLを4基、さらにサブウーファーVXS3Sを1基、また実験室側にもVXS1MLを4基、VXS3Sを1基、合計でVXS1ML×8基+VXS3S×2基、これらを全て天井から吊る形で設置しています。

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photo006 (左)窓際の天井に設置されているVXS1MLとVXS3S
(右)実験室寄りの天井に設置されているVXS1ML

 

アンプに関して、パワーアンプMA2030aを選定された理由を教えてください。

町田氏:
プランニング段階では細かい音質調整用には別のプロセッサーの導入を予定していたので、アンプについては特にこだわりがなくコンパクトで出力としても十分なMA2030aを選びました。ところが実際に設置してMA2030aに内蔵されていた専用のイコライザー機能を使ってみたところ、理想的な音色になりました。これならこのまま使えると判断し、結局スピーカープロセッサーを使わなかったという経緯があります。ですから音質的にもコスト的にもMA2030aを選んで良かったと思っています。
 人間の耳は音量によって聴こえ方が変わります。たとえば小さい音量の時には低音や高音を少し強めに出さないとフラットには聴こえません。そして音量が大きくなると徐々に低音や高音が出てきます。ですから、どれくらいの音量で再生するか、によってスピーカーの特性が変わってくるわけですが、BGMに特化したVXS1MLやVXS3Sは、そういうことが考えられたチューニングが施されているので、こちらであえて設定しなくても、きちんとした音色で再生されました。

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音楽は研究者の創造性を刺激する重要な要素


スピーカーが設置されて1ヶ月半あまりですが、実際に研究室でスピーカーを使ってみた感想をお聞かせください。

大澤先生:
やはりいい音で音楽を流すと、心地よい空間になります。今までであれば音楽を聴きたくてヘッドホンをする人もいたのですが、この研究室ではディスカッションしたりクリエイティブな話し合いをする時に、後ろで音楽を流すことができて理想的だと思います。音楽があるとディスカッションも弾みますね。好みなどがあるので音楽を常に鳴らしておくのは難しい面もありますが、たとえばみんなが集まったギャザリングパーティや懇親会の時には必ず使っています。

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他の研究室の方から羨ましがられませんか。

大澤先生:
ここに来ると、みんな「いいなぁ」と言います(笑)。やはり研究において空間のクオリティは大切で、いい空間作りという意味で、音楽は重要な役割を果たしていると実感しています。昨今は大学の研究所から企業の研究所へと移ってしまう研究人材も多いのですが、企業のオープンな研究環境に対して大学の研究所の雰囲気が暗い、という面が少なからずあると反省しています。今後は大学などの研究機関においても、研究者の創造性を刺激する環境の一つの要素として「音楽を大切にする」ことは重要なのではないでしょうか。

 

本日はご多忙の中、ありがとうございました。

東京大学 先端科学技術研究センター大澤研究室
https://www.onc.rcast.u-tokyo.ac.jp/ja/

ユニオン
http://uni-on.asia