【導入事例】兵庫県立芸術文化センター 様 / 総合施設 / 兵庫県
Japan / Hyogo, Apr 2018
HALL REPORT
日本屈指の完成度がさらに進化 兵庫県立芸術文化センター
(隔月刊PROSOUND Vol.203 2018年2月号より転載。テキスト:半澤公一 撮影:土屋 宏)
昨年2017年、8月にわれわれ取材班が訪ねたのは「兵庫県立芸術文化センター」。この夏に音響システム関連の大がかりな修繕改修が行なわれたという情報を得たからだ。目先の新しさだけでなく、長く使える普遍性を持つこと、そして高い安全性を確保する高信頼の両立。この難しいリクエストに「ヤマハサウンドシステム」の精鋭チームが挑んだ。「Dante」オーディオネットワークをはじめ、複数の「RIVAGE PM10」デジタルミキサーなど、先進の技術とアイデアが注ぎ込まれ、万全な対応で昇華している。さることながら劇場の今後を最新技術とアイデアでさらなる高みへと引き揚げようと改修計画を練った舞台技術部所属、金子彰宏氏のプランニング力とこだわりは何より見逃せない。氏をはじめ、同会館をサポートする「ひょうご T2」そして「ヤマハサウンドシステム」の面々に話を聞き、高次元のコラボレーションが生まれた経緯を届ける。
特定の劇場に常勤し、その空間で專門的に音響担当として携わる、いわばホール付きの専任業務。この仕事は数ある音響職のなかでも高いスキルと幅広い知識、また行動力が求められる難易度の高いもののひとつ。またそこで日常的に扱われる機材群も同様に、高い機能性はむろん、常設が基本となることから品質や信頼性能への要求が厳しくなるのは当然のこととなる。今回のインタビューではプランニングの骨子やその実現にあたり、どういった背景がありそして実際だったのか。そして現在最も先進的なデジタルミキサー「RIVAGE PM10」(以下、『PM10』)について聞いていく。
阪神淡路大震災 復興シンボルのひとつ
プロサウンド(以下、PS):「兵庫県立芸術文化センター」は、以前から音が良いことで全国に聞こえています。初めて拝見したのですが、興味深いつくりとなっていました。まずは劇場プロファイルをうかがっていきます。
金子: 以前のことになるのですが、兵庫県にも良質な劇場を造りたい、と前県知事の時から懸案になっていた経緯がありました。その時はこの会館でかかった費用を大きく上回る予算が計上されていたと覚えています。ところがその後、震災がありそれで頓挫したのです。
PS: 1995年の阪神淡路大震災ですね。
金子: ええ、その通りです。ただそのようなことがあったけれどもやはり造りたいと。知事が新しく替わったところで復活し、震災後10年目にしてオープンに漕ぎつけました。僕が赴任したのはその3年前、まだこの会館は図面だけでしたが、復興シンボルのひとつとしての思いもありますね。
PS: では2002年から参加され、技術部に配属となられたとの認識でよろしいでしょうか。また同席くださった 3名のみなさん、名刺には「ひょうごT2」とありますが、こちらはどういった?
金子: 僕自身は当館職員なのですが、当方から業務の依頼をしている組織となります。ここへ委託で入ってくださるスタッフをまとめたくてみなさんに検討いただき、オープン当初からお手伝いを願っています。照明や機構、音響といった各セクションで構成されます。
芸術文化センターに携わる音響スタッフ
PS: ではそれぞれのスタッフの動きについて教えてください。まず金子さんは具体的にどういったお仕事をなさるのでしょうか。
金子: 技術部自体としてはすでにオープン前には実働しており、その後に施設管理や事業部といったセクションができてきた流れがあります。それは当館を立ち上げるにあたって設計から見ていくといった目的がありました。開館後の動きについても計画がなされ、軌道修正しながらここまで来ていると。基本的に現在は管理運営といった形になります。ただしこの劇場独自の特徴があり、「管理運営」といっても建物や設備の面倒を見るといった一般的なことよりも、演目のサポートといった意味合いが濃いところでしょうか。
PS: 具体的には催し全体の動きを見て助けが必要なところに入るようなことでしょうか。
金子: そうですね。例えば芸術監督である佐渡 裕さんが開館時から就任しましたが、彼が作る作品でオペラは毎夏行なわれ、今年で12本目となります。その上演においてはデザイン的なことも行ないますし、あるいは効果音が必要になった時には僕が作るなど、特に何をしなさいと言われるわけではないのですが、逆に自分でできることは何だろうとアプローチしていくようなスタイルですね。先の「ひょうごT2」さんとの棲み分けといったことでは、自主事業についてはわれわれ技術部を中心に事前準備から打ち合わせ、交通整理などを行ない、貸館にかかる業務はお任せしている、といった状況です。ただどちらも当日の実務に関してお願いしており僕自身はもちろん現場にいますが、引き気味で現場を見て雜務に徹しているようなところです。
PS:「 ひょうごT2」の讃岐さん、この劇場で音響をご担当なさる場合の特徴ということでは。
讃岐: この劇場には大、中、小とホールがあるのですが、それぞれ空間としてのキャラクターがとてもはっきりしています。加えて出演者と観客ともに求められる芸術性そして意識が高く、それは音響に関してもむろんです。
PS: いきおい責任が重くなりますね。
讃岐: そのとおりです。先ほども遠くまで当館の噂が聞こえているとの話でしたが稼動率も高いですし、それは毎日がプレッシャー(笑)です。
PS: 同じく「ひょうごT2」から参加の立津さん、そのあたりいかがですか?
立津: まったく同じです。先輩方の動きを参考に、もうドキドキしながらですね。
PS: では同じく、久保さんにも同じ質問を。
久保: 私は音響の仕事を始めて30年くらい経つのですがこれまで市民会館などに常駐してきました。以前は今で言う、上から目線といった傾向が確かにありましたが、このところはどの現場でも、特にこの会館ではみな前向きで協力的に仕事を進める印象が強いですし、それが稼動率の高さにもつながっているかと思います。毎日本番があるような緊張感と言えますね。
「つくる」という意識
PS: 金子さん、この「芸術文化センター」ですが、開館時あるいは溯って参加時以来から守ってこられたこと、といえば。
金子: 全体のスケジュールを通してみると、催しは「つくる」よりも受入れ機会が多いことは実際です。また「つくる」にしても演出家、あるいはプロデューサーがいてわれわれがサポートしていくことになります。立ち上げ当初からの照明、そして舞台のメンバーと僕の3名の考え方として何かオーダーを受けた時、「No」はあり得ないと。「できません」を無くすことでした。ただ、それを実行するためにはリスクがあるかもしれない、時間がかかるかもしれない、あるいは予算が必要になるかもしれない。オーダーにピタリとしたことができない時もあるかも知れないけれども、工夫をすれば何かはきっとできると。「No」と言ってしまえばそこで物事が止まってしまいますし、われわれのスキルも上がっていきません。劇場の善し悪しを決めるのは、建物の良否を超えてそこにいるメンバーの意識とどういった対応をしていくのか、そこに尽きると思っています。そこにはポイントが2つあり、まずお客様の立場で安全を最優先に考えること、そしてわれわれ自身が演出家の目でものを見て「つくって」いくことでしょうか。
PS: 久保さん、そのあたりはどうお感じになって現場に入られるのでしょうか。
久保: 最近特に感じるのですが、リピーターの方々が多いのです。毎年催しをしてくださる。そこで話をうかがうと、「芸文」以外ではやりたくない、ここで演るために頑張っているといったことを聞くと良かったなと。
PS: やりがいを感じる瞬間ですね。金子さん、育ちつつ完成しつつといったところでしょうか。
金子: 正直言ってまだ途中といえます。模索していますしこの答は出ない、と思うのですが、基本的な考え方は間違ってなかったと信じてやっています。そこを疑うと先へは進めません。軌道修正をしながらこれからも続くことになると思っています。
PS: 金子さん、このブロックの最後に、仕事をするにあたって大切になさっていることを教えてください。
金子: 小さな頃からものを作ることが好きだったのですが、ひとりでというより、例えば芝居のように人が集まって、そしてできた時の達成感がうれしかった。そうした時、自分ができているかと言われれば、そうとは言えないですが、どこかで常に物事を新鮮な目で見ることを心がけています。固定観念を持つと止まってしまいます。ピュアな目で見た方がおもしろいものができる感覚がありますし、それを大事にしていきたいです。
PS: ありがとうございます。とても興味深いです。
「芸文」プライドに見合う クオリティに合致した 「RIVAGE PM10」
PS: ではここからは機材関連について聞いていきます。中でも「PM10」は一度に3台導入という大がかりな規模でしたが、まずはこの機種を選ばれた背景を教えてください。
金子: 今回は修繕工事でしたので、元あった状態に戻すといった動きが基本的な流れとなります。それをふまえて話をしますと、大ホールのミキサーがオープンして7年目あたりでトラブルを起こしたことがありました。故障自体はさほど深刻ではなかったのですがその時、修理の対応でメーカーと行き違いが生じてしまいました。さすがにこれだけの公共ホールを預かっている身としていつまでも立ち止まっているわけにはいきませんので対策を検討し、バックアップの備品を一時的に使いながら「ヤマハサウンドシステム」(以下、YSS)さんに「PM5D」を代替え機として用意いただき代行していました。ただミキサー自体の問題ではなく、出力数など劇場が求めるスペックからは不足する部分があり、修繕案のなかで一番の優先順位に挙がっていたという経緯があります。それに追従して中ホールはどうするのかと。実はこちらはとても満足するミキサーではあったのですが、この機会でないと補修パーツがすでに入手困難との情報も相まって反対意見も出たものの、次回予算が立てられるのは10年から15年後でしょうか。それまで使えることを前提に考えると思い切ってと判断しました。そして3台目は移動用途およびバックアップとして導入しています。
PS: 今回は「PM10」というフラッグシップモデルを選ばれたわけですが、「芸文」クオリティと言いますか、そこは金子さんとイコールと言える部分で、信頼性能はむろん品質にも条件があったと認識してよろしいでしょうか。
金子: そうですね。ちなみに大ホールは入力および出力ともに数量が必要となることもあるのですが、兵庫県が作ろうとした劇場は車に例えると高級車だったと思うのです。そうなると器の中身もそれに見合ったものが必要です。普及車のエンジンやシートではバランスが取れませんね。その部分を考えるとやはりフラッグシップクラスが必要だろうといったことになります。さらに現実的な話では、必要となる機能面もさることながら、芸術監督の佐渡さんがいます。それをふまえ当然恥ずかしい音は出せないですし、機材の善し悪しは本来的に別問題かもしれませんが、われわれができることは何かを考えると選ぶべきは「PM10」になる、そうした気持ちでした。
PS: むろん今後もこのミキサーを使って作り出されていく作品は「ベンツ」クラスのものになると。
金子: 実際にできているかどうかは分からないですが、目指すところはそこです。ホールの稼動率も90%を超えています。また自主公演などでも世界から一流のアーティストもお見えになります。その時に、えっ!と思われてはいかんと。そして海外で常任指揮者を務めるほどの佐渡さんが愛してくれる劇場ともなれば、それなりのグレード感を保つことも決して無意味ではないと考えています。
PS: ここで「T2」のみなさんにも聞いてみたくなりました。讚岐さん、一流を目指して毎日を、と金子さんの言葉ですが、どのような部分に最高を求められているとお感じになっていますか。
讃岐: スタンダードの線引きかと思います。ローカルなのかグローバルなのか。このホールには本当にさまざまな方が出演して下さいます。その時に設備やスタッフの指向がローカルレベルだと当然対応ができません。その点はワールドスタンダードを常に意識しています。
PS: 立津さんはいかがですか?
立津: 話が溯るのですが、「No」と言わないところにもそうしたコンセプトが出ていると感じています。この劇場って限界というものを知らないのではと本当に思っています。創造することも沢山あり、何でもできてしまいますので。
PS: 久保さん、日本以外のキャストも機会が多いかと思うのですが。
久保: そうですね。一流というのは機材的なことも大事かとは思うのですが、やはり劇場に来られた方々に気持ち良く帰っていただく。その第一は人だと思っています。仕事が無事でも人の印象が良くないとそれで終わり。そこは最も気をつけているところです。
「Dante」ネットワークがもたらした数々の恩恵
PS: ではここからはハードウェアのことについて聞かせてください。「YSS」の菊地さんと安田さん、今回の修繕ではどういった役割をなさったのでしょうか。
菊地: 私は「PM10」にからむ周辺のシステム構築を行なっています。具体的には「Dante」ネットワーク、「LDM1」マトリクス(YSSが扱うフルデジタル・マトリクスコントローラー)の設定となります。ちなみに弊社のテクニカル・マーケティングチームで「AFC」、「SFG」(音場支援装置)などの設定をしています。
PS: 安田さんはいかがでしょうか?
安田: 私は現場の工事管理を行なっております。
PS: 今回のように上方へ向けての修繕といった場合、プランニングそのものがしっかりしていないと良いものができないと思うのですが、そのあたり今回の特徴はどういった部分が相当するでしょうか。
金子: 溯りますと僕が就任した時、その時代はちょうどミキサーがアナログからデジタルへの移行過渡期で「デジタルで大丈夫なの?」というのが周囲の一般的な認識でした。その時に、このミキサーだったら信用できるね、って思ったのが「PM1D」だったのです。ただ開館時に導入が実現せず、他社製を使ってきました。そして今回に至るところで、密かに続いていた「PM1D」への思いが実現することになったのです。ただ設計を始めた5年くらい前の段階ではまだ「PM10」は聞こえておらず、別のミキサーを据えてプランを開始しています。そうして2度、3度とブラッシュアップするうちに「出るかも」と。で、最終的にデモ機を見たのが2015年の夏でした。「本当に出た」(笑)と。
菊地: まだリリース前のプロトタイプでした。
金子: さすが「PM1D」の次に来たことを感じさせる満足感がありました。本格的にそこから「PM10」を採用する方向に設計移行しています。
PS: むろんデジタルネットワーク採用かと思うのですが、サンプリング周波数も気になるところですね。
金子: 当然96kHzです。この時代、今更48kHzに戻る必要を感じません。以前は「劇場なんだから」とさほど気にかけていなかったのですが、聴き進むうちやはり違う、96kHzでないと、そしてやるならフルデジタルだと。ミキサーだけデジタルではAD/DAの繰り返しで、とても品質向上からはほど遠いです。また「LDM1」が96kHzに対応したことも大きかった。120イン&120アウトと言う機能はこの劇場にとってとてもありがたいところです。
PS: 聞くところによると機器群は200V駆動になさっているとか。さらに音質が良さそうですね。
金子: ここまで来れば、といった勢いでもあるのですが、以前から考えていました。良い結果が出ているようで、こだわって良かったところかと思っています。
PS: 菊地さん、劇場設備で「Dante」ネットワークを使うことのメリットはどこにあるのでしょうか。
菊地: 伝送もすべてデジタルで行なえます。加えてネットワークが適切に設計さえされていれば、どこから他のどこへでもオーディオ信号ほか自由に送ることができます。あるいは仮設で組んだシステムを、例えば稽古場などで組んだシステムを本セットに持っていった時、そのままで前のルーティングが再現できるといったところでしょうか。これまでのデジタル接続よりもさらに柔軟性を持たせることが可能となり、それに尽きるかと考えています。
システムの巨大化に伴い複雑になる施工プラン
PS: 安田さん、実際に工事をなさる方々から見ると、この「Dante」ネットワーク、施工にむずかしい部分はあるのですか。
安田: 「PM10」がリリースされる前には「CL」や「QL」の両シリーズが「Dante」になっていました。われわれのもとで動いていただける協力会社の方々も「Dante」の何たるかを理解して下さっていました。おかげさまで現場は何ら支障なく進みますね。
PS: これまでもさまざまなデジタル伝送規格が登場してきましたが、振り返ったときに施工における作業性は良くなって来ているのでしょうか。
安田:この「芸文」のように大きなホールクラスになると伝送距離が長くなりますので、どうしても光に頼らざるを得なくなります。システムが巨大化してくると…金子さんの要望も大きくなっていくのですが(笑)大きくなってきますとさまざまなところへ配信をしたいといったことになり、線の数が増えてきます。光を一旦中継する成端箱など、そうしたことに付随するスペースも無視できない規模になり、他の物件とはまた違う経験をさせてもらえましたね。
PS: 菊地さんの目から見て「芸文」の「PM10+Dante」では何ができますでしょうか。
菊地: 劇場乗り込みの場合、持込みのミキサーはまだ48kHz使用が主流かと思うのですが、今回の「PM10」はフル96kHzで動作させるシステムを構築しています。そうしたなか、48kHzサンプリングとでもシームレスにやりとりできることが特徴です。「Dante」は同一ネットワーク内で2種類の異なるサンプリングレートが混在できるのですが、相互のやりとりはできなかったわけです。その部分を「ヤマハ」製の「RSio64-D」というインターフェースを使い、ある程度自由に往き来できるようになりました。48kHzで受けた「Dante」信号を「RSio64-D」を通し96kHzに載せ換えて「PM10」に渡しています。
PS: それはすばらしいです。使いやすくなりますね。
改修で得た「芸文」の新たな未来と可能性
PS: では「ひょうごT2」のみなさん、ミキサーが「PM10」に変わり、96kHzになり、システムがフルデジタルになって、その恩恵を日々感じ取られているかと思います。新しく修繕されたシステムについて、みなさんにとっては現在どういった存在でしょうか。
讃岐: 私にとっての「PM10」…この劇場がそうした機材面でも注目されていることは知っています。そうしたなかでは失敗できないプレッシャーもありますし、フラッグシップモデルを使わせてもらっているワクワク感というのか、うれしさもあるので…その狭間で揺れています。
一同: (笑)
讃岐: …プラグインや新しい機能なども魅力的ですし。
PS: マイク選びも音に出ると見学の時にお話しされていましたね。
讃岐: そうなのです。早く身体に馴染んでくれれば嬉しいですね。
PS: 久保さんはいかがですか。
久保: まだまだ使いこなせているとは思えませんが、言い方が適切かどうか、飽きの来ないゲーム機みたいで毎日いろんなところを探っています。今日の催しでは使わないけれども、これを動かしたらどうなるのかといった…讃岐も言いましたが、まだまだこれからの段階といえます。使い心地は良いですよ。初めてのアプローチでもすぐに使い出せるのではないかと思いますね。
PS: 立津さんにとってはどのような存在ですか?
立津: 先輩方も仰っていましたけれども、これからもっともっと仲良くなっていけたらなと。
PS: 先ほど、音が出てドキドキするくらい良いとのコメントでしたが、自分でフェーダーを上げてそうした音が毎回出てくるわけですよね。
立津: それはあの子(PM10)が優秀だからで、その中身をまだ私は探れておらず…もっともっと中に入って行けたらなと思います。
横の連携を最大に活かした情報共有の重要さを見直す
PS: それでは金子さん、最後にご意見をぜひ伺いたいのですがこれから先、近未来を含めて日本の劇場と音響はどこへ向いて、どこを目指すべきなのでしょうか。
金子: 劇場の規模であるとか県立、市立、また私立とそれぞれの役割があると思うので、それらを一緒にしていく必要はないかと思っています。むしろ棲み分けておいたほうが、使っていただく方も分かりやすいとは感じています。こと音響について言いますと、ある程度のスタンダードなラインは作っていかなければならないのかなと。簡単な例ではコネクターの統一、音響室の位置についても同様といったところです。それはそれぞれのホールに常駐していると分かりにくいのですが、ツアーで周る立場になると見えてきますね。別の切り口では200V化や96kHzをデフォルトにしていくなどでしょうか。共通言語を持つことで、ひとつの催しを同じ環境で全国劇場展開ができますよね。横の連携を強めていく、あるいは情報共有ができれば、同じ催しやカンパニーが訪ねたときに仕事が早くなりますし、アベレージがあがります。
PS: 一から作り直す必要も少なくなりますね。
金子: 今後は劇場間での情報連携を進めていかなければと感じています。
PS: 今日は劇場の裏側も見せていただき、機材の設置や物の整理のされ方を拝見していると、劇場は人そのものだなと感じる部分があり、気付くことがありました。貴重な話もたくさんいただきました。長い時間ありがとうございました。